第66章 その男は死神を名乗る傍観者
鎌はリリネッドの顔をギリギリで止まる。
「なぜ、避けない?」
「多分、止めるかなって思ったから」
「止めなくても死なないからか?」
「え!!?」
「やはりか」
男は鎌を消して、キッチンに向かい飲み物を取り出してリリネッドの前に出す。
「俺が作ったリンゴジュースだ。口に合えばいいが」
「お」
男は椅子に座りコーヒーを飲む。終始、静けさが続いた。
男は無口だった。
●●●
黙りが約1時間ぐらい続く中でシンノスケが起き上がった。
「ここは?」
シンノスケはベッドから起き上がりリリネッドと男が五目並べをしていた。
「あ、気が付いた」
「遅かったな、それでも勇者のパーティの仲間かぁ?」
シンノスケは何も言えなかった。
「お前らが強ければ被害も、もっと少なかったはずだ。戦い舐めてるのか!」
男は碁盤の上に白い石の駒を置く。
「あ、買った」
男は碁盤の上を見る。リリネッドが置いた黒い石が5つ並んでいた。
「まあ~、いい。今はその話はどうでもいい。話を聞け、勇者・リリネッド」
「あ、はい。ごめんなさい」
男は突っ立っているシンノスケに椅子を差し出して、黒い石の駒が入った碁笥をシンノスケに渡し、碁盤の上の石をスッキリさせる。
「さて、ここからが本題だ」
男が五目並べを始めたのでシンノスケも仕方がなく話をしながらやる。
「俺はジミニ―・クマケット。旧勇者の仲間の一人だ」
「え!!」
シンノスケが驚き手に持っていた黒い石の駒を手から落とす。
「あ、そろった」
「「え!!」」
シンノスケとジミニ―が見たら、黒石の駒が5つ揃っていた。
「ジミニ―さん…。」
「まあ~、とりあえず、俺が力を付けてやる。ありがたく思え」
リリネッドはシンノスケを見て拍手して、シンノスケは茫然とする。
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ジミニ―の家の裏に3人は移動してリリネッドの実力を見る。
「ほた、来てみな?」
リリネッドは素手で殴りかかるが、腕を払いのけて腹に強い拳を打たれる。
「うっ!!」
リリネッドは腹に手を抑えながら前のめりになる。
シンノスケが近寄ろうとするもジミニ―は止める。
「もしかして本気でやってないのか? 俺は本気で来てほしい」
リリネッドはお腹をさすりながら立ち向かう。
ジミニ―は遅いく長い体でリリネッドの顔面に容赦ない攻撃で殴りつける。
衝撃で後ろに飛ぶもすぐに掴んで腕を折る。
リリネッドは歯を食いしばりながら掴まれた腕を逆に掴み、そのまま弱弱しい拳でジミニーの胸あたりを殴る。
「痛みは強く、死ぬのも怖くないと見た」
「うっ」
リリネッドの傷を見てジミニ―はシンノスケに指示する。
シンノスケはジミニ―を睨みながら傷を治す。
「やはり本気でやらせるためには…こうしないとダメかな?」
ジミニ―は大きな鎌を取り出してシンノスケの体を向かって振り貫通させた。
シンノスケは死んだと思いったが生きているのを確認する為に体を触る。
「な、何も起きてない?」
「いや、起きてる」
ジミニ―の右手には青く光るサッカーボールぐらいの球を持つ。
「これはお前の命だ」
「何!!」
「俺が管理している間ならこれはいつでも返せるが俺がこの管理を捨てれば…」
ジミニ―の右手には青く光る球から一瞬だけ手を離した時、シンノスケの意識がなくなった。
すぐに掴ん見返すと、シンノスケは意識を取り戻す。
「わかった、勇者・リリネッド。本気で俺を倒す気でこい」
リリネッドは後ろに背をっている剣を掴んで取り出す。
「そうだよ、それでこい」
いきなり始まった訓練は夜まで続いた。何も発展しないままジミニ―はいったん終わらせ、「飯にしよう」と言い出した。
そして風呂を沸かし、布団も用意して一緒に食事の用意して食べ、リリネッドとシンノスケは寝た。
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真夜中。ジミニ―は街の外のある一定の場所に歩いていた。
目の前には結界の様な壁がある。その結界の一部が鏡の様に割れていた。
すり抜けながら出るジミニ―の前にユーリが膝を付いて頭を下げていた。
「お久しぶりです、ジミニ―さん」
「ユース?いや、ユーリだっけ?」
「どちらでも構いませんが」
「お前の名前間違いやすいから気を付けろ」
ユーリは黙る。
「で、何の用だ? こんな真夜中に」
「貴方の結界に俺は入れないので、このような方法しか貴方を呼ぶ事しかなかったので」
「そうだな」
「勇者・リリネッドがこの街に来ていますよね」
「ああいる」
「どうする気ですか?」
「お前には関係ない。お前の様な裏切り者にはなぁ」
ユーリは手をぐっと強く握る。
「俺には俺のやり方が」
「なら、俺も俺のやり方をするだけだ。そもそも、勇者はお前がなる予定じゃ~なかったのか。神がお前に託した計画はどうなった?」
「そ、それは…」
「ダメでもパーティに入ればいいのにそれもしなかった」
「何も知らないくせに」
「ああ。俺は何も知らない。俺は今も昔も傍観者だ」
「傍観者ですか…」
「なんだよ」
ユーリは頭を上げてジミニ―を見る。
「神の領域までいった人が傍観者ですか」
「神は神でも…」
ジミニは、ボソッとため息の様な感じで言った。
「死神だ」
ユーリは頭を下げる。ジミニ―は続けて喋る。
「神、女神。そして俺を入れた者達の計画に飛び入り参加したリリネッド。アイツがどんな奴か話していて分かった。アイツは、善人ではない」
「わかります」
「だが、悪人でもない」
「はい」
ジミニ―は腕を組み笑みをこぼす。
「面白い奴だ。リュウマと少し似ているが全く違う。予想もしない活躍に予想もしない要素を持つ。転生者でもない奴が世界を救うカギを持つ」
「彼女は最後のカギとなりますか?」
「さぁ~なぁ。今は無理だ。だから俺が10日間でアイツをユーリ。お前ぐらいまでレベルを上げる」
「出来るんですか?」
「俺はゲームは得意なんだぜ」




