第65章 その男は傍観者
リリネッドはネルラから猛獣使いの力をちゃんと教わったことで使い方、何となく覚えたことで大きな鳥の様な影を作りと飛んで双方山を目指すことにした。
二人は東南にあるという漠然とした話だけでそちらの方を目指す。
だが、二人の前に立ちはだかったのは森である。
森は森でも死聖の森。
必ず迷う森と呼ばれているが心を強く持っていれば迷うことはない。
のだが、リリネッド、シンノスケは森の上空の霧にハマり、現在、迷いに迷っている。
「どうしたものか」
「クロウから渡されたこの不思議な袋の中に何かありませんかねぇ~」
シンノスケと離れる前にクロウは自身が持つ袋を渡した。
その袋は『どんなものでもしまえ、入れることができる不思議な袋』。所謂、四次元ポケットである。
そんな袋からシンノスケは手をツッコみごそごそと弄る。
それっぽい奴を握り取り出した。
「それは?」
「これは…テッテレ~…って言わないといけないような気がしたので言いましたが…これはなんですかね?」
「あ、わからないんだ」
シンノスケが取りだしたのは先端が光る棒状のものだった。
「何に使うんですかねぇ?」
「道を教えてくれるとか?」
シンノスケは左右に棒を向けるも同じ光が光るだけで何も起きなかった。
「違うようですね。でもこれは暗い時に使えそうだ」
「ああ~そうね」
二人はそんな危機感がない状態を続けていると森から抜け霧も晴れた。
「意外と早く抜けましたねぇ」
「前はユースが森の抜け方を教えてくれたんだよね」
「そうなんですか?」
「うん、それが初めましてだったよぉ」
霧から抜け出した二人は近くに見えた国に降りることにした。
●●●
ジスチーブ国、街の名は『エメット』。
その街の奥には機械工場があり上からも見えるぐらい大きな倉庫が4つ並んでいた。
リリネッドはフードを被り、色付きの眼鏡をかけて街の中に入る。
街はどこにでも普通の街。にぎやかでさわやかで騒がしいどこにでもある普通の街。
シンノスケの提案で二人は酒場に向かう事にした。
「ありきたりだよね」
●●●
酒場は昼頃だというのに盛んでいた。
カンターに座りシンノスケは怖そうな顔のオーナーの様な人に話しかけた。
「すみません。僕達、はじめてこの街へ来たんですが何やら騒がしいですね」
「そりゃ~そうだぜぇ。約一週間後には内の名物が動くんだからなぁ~」
「お祭りとかですか?」
「違う違う、機関車っていう乗り物が動くんだ。ここ10年以上も制作していたんだ」
「機関車?なんですかねぇ~それ」
シンノスケの服を2回ほど引っ張り、壁に掛かっている写真に指を差すリリネッド。
写真にはまだ未完成の機関車が飾られていた。
「アレかな~?」
「アレが機関車ですか?」
「ああ、そうだよ。ハーヴェイって男が制作者だ。元々は父親のトーマスと二人でが作っていたけど倒れておっちんだ。だが、才能ってやつかねぇ~誰もが無理だと言っていたがハーヴェイの奴は一人で完成させやがった。すげぇ~ぜ」
リリネッドは出されたオレンジジュースを飲みながらオーナーの男に聞く。
「このきかんしゃってやつはなんなんですか?」
「ああ~説明してないからわからねぇ~よな」
怖そうな顔に似合わず可愛い笑顔をするオーナーは機関車について話す。
「機関車ってのはまあ~わかりやすく言えば人を乗せえる乗り物だ」
「馬車ではないの」
「馬車より早ぇ~ぞ。俺は点検の最中の時にたまたま、観たんだが早く動いていたよ」
「へえ~」
珍しくリリネッドが興味があるのか前のめりになり足をバタバタさせていた。
「見に行ってみますか?」
「うん、行こうよ」
「それはどこn…」
とシンノスケが聞こうとした時、酒場に入ってくるどこかの偉そうな人物。
その人物が入った瞬間、騒いでいた声がお通夜の様に静まる。
酒場のオーナーは嫌そうな顔をそながらリリネッド達に聴こえるぐらいの小さな声で「奥の方で座ってなぁ」と首で方向を差した。
二人は移動して奥の方へ座り、高みの見物をする。
白いスーツに身を包んでいる男がオーナーに話しかける。
「いやあ~、儲かってるか?」
「おととい来やがれ、クズ野郎」
「おいおい、その言い草はないだろう。とりあえずワインを」
「そんな洒落たのみもんはねぇ~よ。それにてめぇに出す酒もないね」
「全く、どこの場所もこんな扱い。なんなんだあ~この扱いは!!」
白いスーツの男が誰なのか気になり、リリネッドは近くで座っていたつるっぱげの強面の男の服を2回ほど引っ張り聞いた。
「あの男はハソウルト国の王子のヴァンゲンハイムだよ。みんなが乗りたい、機関車の抽選に割り込んで席を奪った男で、制作の邪魔をしていたやつさぁ」
「つまり嫌われ者って事?」
「悪く言えばそうだ」
その話が聞こえたのかヴァンゲンハイムはリリネッドの方へと向かって来た。
つるっぱげの強面の男はその場を逃げる。
「聞こえたぞ、話し声」
「あ、ごめんなさい」
「この俺様に喧嘩売るってのはどーいうことか教えてやろうかガキんちょ」
「あ、大丈夫です」
「そうか…って断るなよ」
ヴァンゲンハイムがリリネッドに手を伸ばそうとした時、シンノスケが腕を掴む。
「この方に触るなぁ!」
シンノスケが怖い顔で睨む。ヴァンゲンハイムも睨み返す。
ヴァンゲンハイムがと一緒に居た兵士たちが武器を構える。
「シンノスケ、やめて。大丈夫だよ」
「わかりました」
シンノスケ、すぐに腕を離すもヴァンゲンハイムは腹の虫が沈まなかったのかリリネッドは被るフード外して顔を見た。
シンノスケはヤバいと思う。
が、ヴァンゲンハイムは動きが止まる。上目遣いになったリリネッドを見るヴァンゲンハイム。
「女…。」
ジト目だが瞳が大きい目、綺麗は顔つき、サラサラの髪。
ヴァンゲンハイムの胸の鼓動がこの酒場にいる人達に聴こえるんじゃないかと思うぐらい大きくなり叫ぶ。今にも爆破するぐらい胸の鼓動を止めるように胸に手を抑える。
「これが運命か」
「うっえぇ?」
「君、名前は?」
「り、リr」
と名前を言おうとした所を手で口を押さ前ながら止めるシンノスケ。
「ダメです」
ヴァンゲンハイムはシンノスケを見て、腕で後ろに吹き飛ばされる。
「邪魔するなゴミ。さて名前を…」
両肩に手を置かれて動けなくなり、顔を近づかせてくるヴァンゲンハイム。
リリネッドは暴れようと服の袖から獣の影を作ろうと動き出そうとしたその瞬間、フード付きマントを着た顔を隠した男らしき人物が兵士を次々と倒したのちにヴァンゲンハイムを飛び蹴りで店の外へと吹き飛ばした。
「え!? あ、え。な、何!??」
突然なことで戸惑うリリネッドを抱え上げてから、倒れこんでいるシンノスケをボールの様に足で上げて脇で掴みしっかりと掴んでその場をサッとフード付きマントを着た男は消える。
ヴァンゲンハイムはすぐに店に戻るも3人の姿が見えず、怒りが湧く。
●●●
街から少し離れた山の上に家を建てている男は自足自給で生きているのか牛や鶏などを駆っていたり野菜などを育てている。
「とりあえず、中に入れ」
男はシンノスケをベッドに寝かせて、リリネッドは椅子に座る。
「あ、ありがとうございます」
男はフードを取って顔を見せる。片眼鏡をかけた大きな男。シンノスケが180あるのなら男は190以上あるだろう。と思うリリネッド。
男はリリネッドの御礼を聞いて首で返す。
男は窯に薪を入れながら話をする。
「アンタ、勇者だろう」
リリネッドはドキッとする。
「世界中がアンタの首を狙っている。どこかの国に渡せば、何億かの金も手に入る。らしいじゃ~ないか…」
男はどこからか取り出した同じサイズの大きさの鎌を取り出して、リリネッドをみる。
「勇者はこの地で眠る」
そう言うと、男は大きな鎌をリリネッドの横に振る。




