第60章 大うつけ
アイは二本の刀をもらった時に女神から言われた。
「お前が嗾けた奴もいるからもし出会えたら好きにしていいぞ」
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アイは上の階から飛び降りて氷の上からナギを刀で突き刺した。
ナギは口から血を噴き出し、また下の階へと落下した。
10階に大きな魔物とシンノスケが戦闘を繰り広げていた。
「なんだ!?」
ナギは氷からもアイの刀からも抜け出しながら、アイと共に落下する。
ナギは真下の魔物を見て態勢を整えてから魔物に向かって巨大な斬撃を繰り出す。
魔物は斜め真横に真っ二つに分かれて灰の様に消えた。
シンノスケは落下するナギをキャッチする。
アイのも落下する、そこにフっと突然現れた、アイの仲間のケイトが助けに入る。
「アイさん、大丈夫ですか?」
「おう、回復たのむぞ」
「はい」
ナギはシンノスケの手から降りる。
「シンノスケ、頼む」
「解ってます」
ナギが早く回復して、すぐにアイに向かって行った。
「あっちの僧侶は優秀だな。あれ程の傷もう回復をできるとは」
「すみません」
「ケイト、下がれ!!」
「はい」
「安心しろ、お前はアタイが認めた家臣だ」
ケイトは嬉しそうな表情を顔に出して下がる。
二人は再び鍔迫り合いながら火花を散らす。
アイは剣士の魔術を使って両手の刀の真横に二本の刀を作り、持っている刀を真上に投げた後、魔力で作った義刀を4つナギに向かって投げ込む。
ナギは怪しんだがすべて掃ってアイに近づく、アイは手で輪を作り魔術を使う。
「”切羽”」
投げ込んだ2つの刀が輪っかのエネルギー体となって、ナギの体と足に巻き付く。
動けなくなったナギに攻撃を仕掛けようと動くアイは残った投げ込んだ刀を引き寄せ、上に投げた刀を掴んで4つの刀がナギに向かってくる。
「仕方がない」
●●●
ナギは『魔烈刀』を女神から受け取った時に言われた。
「そいつは常に魔力を吸われるけどその間はお前さんがどんな魔力も聞かない体になっている。それに斬った相手の魔力も奪うことができる。そしてもう一つその刀にはなぁ~」
「この刀には?」
女神は怪しげな笑顔で言った。
「3つの段階があって。一つは形状記憶上昇をもつ。体の一部がなくなっても魔烈刀の力でそれを補完してくれるし、五感も鋭くなり、動きも通常より倍となる。その代わりかなり魔力を使うけど。2つは、威力と攻撃力の爆上げねぇ、これは貴方の精神力が奪われるからあまりお勧めしない。そして3つ目は…。」
ナギは自身が持つ刀にエネルギーの鎖が3つ付いているのが見えた。
「3つ目は…刀に己自身を捧げる事で刀となる。そうすればだれにも負けないけど…周りの生命力を奪い続ける者になるけど」
「解除できないのか?」
「止められる奴が居ればなって話。まあ~そうならないように鍛えることだな」
●●●
ナギが一つの鎖を破り、鬼の様なオーラを身に纏い刀を魔力を紐の様に作り刀を振り回して輪っかを切裂く。
先程より早くなった動きに驚くことなく対応するアイは近づくナギに行動に集中する。
ナギは魔力の紐で結ばれた刀を振り回して他の疑似刀の魔力を吸収してそのまま、アイに向かって投げる。
向かってくる刀を氷で固めて炎の斬撃を投げつけたが、紐の反動でナギはすでに向かって来ていて氷を砕き、刀を掴みそのまま突きでアイの胸を狙って突き刺す。
アイはギリギリ心臓を避けて刺されるもナギは刀を刃を心臓の方に向けて動かすもアイも同様に動きながら氷雪を作りナギの足を固めながら後ろに下がる。
ナギは自身の足を斬り込んで動けるようにする。
「シンノスケ!!」
「ケイト!!」
ケイトは呼ばれたと同時に、アイに近寄り回復させる。シンノスケを方を見ると、シンノスケは近寄ることなく自分の血を弓矢のの様に飛ばしてナギに血の中に混ぜた僧侶の魔術を打ち込んで一瞬にして回復を終えて足が治る。
「(早い!!)」
ケイトはアイの傷を治しを終えるとすぐに後ろに下がった。
ケイトもシンノスケもこの二人の喧嘩を邪魔しないように見届ける。
もし手助けでもしたら殺されると思いながら。
ナギもアイも疲れが来ても相手が倒れない限り、向かってくる限り決してやめることはない。そう言った空気が広がり続けている。
「(全く、強いのう。猿よ、お前がなんで…)」
「(信長、俺が死ぬことを計画に入れた瞬間に)」
鍔迫り合う二人。
「(いつ、どこで、なんで。そんなもんわかる訳がない)」
「(俺はアンタが天下になればそれでいいと思っていた)」
「(当人しかわからないことがある。嫌いになる理由なんてなあ)」
「(だが、アンタの考えの中にあの男の背中が見えた)」
「(だがら、殺されても仕方がない。勝つためなら利用されてもしかたがない)」
「(どうして、俺じゃない。アンタに仕えて来たのは俺だ。俺なんだ!!)」
「(猿よ、お前が死んだあとの事は何となくわかる)」
「(あの男に渡すぐらいなら俺はアンタを殺す計画を考えた)」
「(あの弱虫が生きているのなら、アイツが天下を取ったのだろう)」
「(そして、俺が天下となり俺が動かす。あの男には無理だ)」
「(なら、ここで俺が負けるわけにはいかないなぁ)」
「(なぁ、なんで負けたのだ、俺は…)」
「(あの弱虫の耳に入って観ろ、バカにされてしまう)」
「(いや今は目の前の奴をこの手で殺して)」
「(返り咲く!!)」
「(認めさせてやる!!)」
「天下はワシじゃああぁぁぁああああ!!!!」
「天下は俺だああぁぁぁああああ!!!!」
アイは両手の刀の全魔力を注ぎ『焔琰刀』は全体を火炎の地獄へと化し『雹凍刀』はアイの全身を氷の鎧へと身に纏う。体の芯は『焔琰刀』のエネルギー温めることで『雹凍刀』のデメリットを防ぎながら全魔力のオーラが光出る。
ナギは二つ目の鎖を引きちぎる。ナギは意識が飛びそうになるも自我を保ち確りと足を強く踏みしめて刀を構える。
ナギは一振りで今まで出した斬撃を超える威力を出す。と同時に意識が飛びそうになる。
アイは斬撃を受け止めるもその威力は強く激しく爆発を起こした。爆発は炎で打ち消してアイは立ち向かう。
「俺はアンタを殺して上へと向かう!!」
「ワシが永遠の天下人じゃ!! お前がワシを超える事はできぬ!!」
「信長あああぁぁぁぁああああ!!!!」
アイは両手の刀を同時に振りなげ二つの斬撃が飛び、そして一つになり大きな光の斬撃は竜の様になりナギに向かって飛んできた。
「(先を見る事ができるのになんでお主は過去ばかり見ているのだ…生き返って名を…)」
ナギはしっかりと自我を保ち、アイに向かって言う。
「なぁ~アイ!! この先の未来はワシに任せろ!!」
「あ゙!!」
「お前は最高の!!」
「ん!!」
「ワイの相棒だったぜ!! じゃが、天下はワシじゃ!!!」
ナギは全魔力を刀に纏わせアイの斬撃を受け止めた後、回転を加えながら斬撃を飛ばした。
ナギが飛ばした斬撃は押し負けそうになるも無数の斬撃を振り続ける。
アイも負けず斬撃の魔力を注ぎ込み押す。
喉がつぶれるぐらい叫び上げる二人。それぞれの思いをぶつけた。
だが、勝敗は決まる。最初に魔力が付いたのはアイだった。
アイの斬撃はナギの斬撃を食らい巨大な斬撃を生み出してそれをアイは魔力を尽きた両刀で受け止める。威力によって体や顔に傷を負う。
ナギはしっかりとアイが倒れるまで決して警戒を辞めない。
アイは全身に切り傷を負いながら大きな斬撃を受け止めた。
フラフラしながら、息を切らしながら、今にも倒れてしまうような状態でもアイは足を踏みしめ、叫びながらナギに向かって『焔琰刀』の剣先を動くことができないナギの心臓を向かって突き刺す。
ナギは口から血を吐く。
「俺の勝ちだ!! また炎の中で死ねぇええ!!!!」
アイが持つ刀からナギの心臓の鼓動を感じた。
「(まさか、届いてない…もう動けない…のに。いや、動くんだ! 動かなければ俺は先に行けない!)」
ナギは刺さっている刃を歯を食いしばりながら叩き割り、刀を突き刺そうと動こうとするも右手は動かすことができなかった。
胸からは血が垂れ始めた。
「俺の…勝…ち…だあ」
ナギは左手を胸のところまで上げた。
その瞬間、アイは自分の心臓の鼓動が止まったのを感じた。足元に欠片が落ちる音がした。
「刀の…破片かあ」
「ああ~、へし折った時、破片を掴んで刀から魔力をもらって飛ばした」
「そうか…」
アイは倒れる前に口に出した。
「やっぱすげぇ~よ」
アイは倒れる。ナギは膝から崩れ倒れる。
「もっと褒めるべきだったな、秀吉」
ナギは近くにシンノスケの気配を感じなかった。
そっとケントが近づく。
「アイさん、俺にとっての王です。ありがとうございました」
ナギは笑みを見せる。
ケントはアイを運び出そうと抱き上げる。
「行きますよ、アイさん」
ケントの後ろにオーロが現た。
「俺がせっかく作った城をここまでぶっ壊し燃やしやがって」
「はっ!」
オーロはアイとケントを壁と壁に挟んで潰れてしんだ。
血しぶきがナギの顔を掛かり目の下に流れ落ちた。
「さて、次はお前だ、子供」
オーロがナギの方を見る、『雹凍刀』をいつの間にか拾い上げてナギはオーロに向けて斬りつけた。
オーロの体は全身が凍り始めて声を上げる前に体の芯まで固まった。
ナギも同様、凍り始め芯まで固くなっていた。目の前でオーロがひびが割れて砕けて死んだのをみたナギは笑みを浮かべる。
ナギは一度は死にかけ、2度目は魔物との戦いで死のうとした時、リリネッドに助けられた。
「(ああ、リリネッド。君が本物の勇者になった姿を見たかった…)」
ナギは全身が凍り付いた。




