第59章 アイは鬼を退治し、ナギは邪気を払う
少し時を戻し、7階でイェーリをユーリに任してヘラクレス、ジャダルクは次の階へと向かっていた。
10階ではリリネッド、シンノスケ、ヴォワゴレレが寝ていて異常な状態だった。
ヴォワゴレレはするっと起き上がり。
「邪魔するなよ。殺す気はない」
と言ってまた眠った。
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12階にたどり着いた。
そこは他の階より広く和風の雰囲気が広がる。
二人の近くにある鹿威しの音が鳴り響いた瞬間、音もなくそして気配もなく、アイがヘラクレスとジャダルクの間に落ちて腰の刀を抜いてジャダルクに向かって斬りつけた。
ヘラクレス、ジャダルクが倒れこむのが目の端で見え、そちらに目を向ける前に斬られた。
「(な、なにが…。)」
倒れこむさなか、立っている少女は自身の降りかかった血を舐めて笑みをこぼした。
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そして今ー。
ナギとアイは刀を交わす。
アクロバティックに動き回るアイの動きを華麗に対応するナギ。
一振りで重く威力のある太刀でナギにぶつけていく。
「(なんじゃ、刀一本でこれほどの力!! こんな細い体にどこからでるのじゃ)」
ナギは人の事は言えないこと思いながら刀を交わし続ける。
鍔迫り合う二人は話す。
「やっとだ、アタイの計画通り。お前が来た」
「なんじゃ、ワシの会いたかったのか? 喜べ会いに来てやったぞ小僧!!」
「アタイの方が背は高いぞ」
「年齢の話じゃ、ボケナス!!」
鍔迫り合う二人は一度、離れ態勢を整えつづ動きを見張る。
最初に動くのはナギ。
刀に魔力を斬撃を放出させて飛ばして攻撃を繰り出す、アイは刀で受けるがそのまま後ろに飛ばされて壁に叩きつけられた。
「やる、さすがだ」
ナギは手を止める事なく、同じ技を何度も飛ばした。
アイはすぐに体を起こし部屋の回りを走りながらナギに向かって行く、ナギは体を回転させながら魔力の斬撃を飛ばした。
アイはそれを待っていたかのように持っていた刀から魔力を捧げてナギと同じ技をくりだした。
二人の斬撃はぶつかり爆風と共に煙の様に消えた。
後に、ナギはすぐに手を止めることなく、アイに向かって行く。
「全く変わっていない、むしろあの頃よりも…おそぎゃぁ人だ」
ナギはアイの刀から火炎が巻き付くように纏っているのを確認しながらも刀を振り降ろす。
アイはすぐに刀で受けてまた、鍔迫り合う二人。
「アンタ、いや、ナギだっけ? アタイと手を組んでここのボスを倒さない。アタイの下に置いてくれよ」
ナギは刀を押して勝ち、距離を取り刀の刃をアイに向ける。
「お主は親しみやすく、よく周りを見ていて、明るいひょうきんな奴だと思った。そして、人たらしの…」
ナギは見下す態度で言った。
「猿みたいな顔の奴だなってなぁ。いや待てよ…はげねずみかぁ~」
アイはナギに向かって突撃していく。
ナギは刀を両手で強く握り、剣道の基本的な素振りの構えで斬撃を放つ。
アイも同時に炎の斬撃を放つ、斬撃同士がぶつかり僅かにアイの放った斬撃が強く、ナギの斬撃を食らい強く巨大になりナギに向かって行く。
「やはりなぁ、思っていた通りじゃ」
ナギは斬撃に向かって行き自身の刀で受けてその魔力のエネルギーを吸収後に先ほどよりも大きい斬撃を放つ。
「何!!」
アイはもう一つの刀を鞘から抜いてガードをするも衝撃で飛ばされてしまう。
飛ばされながら体制を整え着地する。
アイは両手の刀に魔力を捧げて息を整える。
「負けるわけにはいかないのだ…天下はオレが取ったんだ!!お前じゃないんだ!!」
アイはナギに向かって真実の名を言う。
「信長!!」
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昔の昔のはるかかなり昔の話。
豊臣秀吉は天下を手に入れた。
「俺に敵はない。信長を超えた俺にはない」
その1年後、豊臣秀吉は死んだ。
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豊臣秀吉が目を覚ますと、自然と花だらけの上に寝ていた。
蝶々は飛び、綺麗な川の水は音、小さな風で花びらは飛ぶ。
そこに一人の女が立つ。
「そこの女!!ここはどこだ! 答えろ!!」
女は一瞬、秀吉を見るも無視した。
「俺を誰だと思っている。俺は天下人だぞ!!」
秀吉は怒りキレるもすぐに思い出す。
自分がしたことを
「お、俺は死んだのか…。そうか確か…。まさかここは死後か。そんなまだ、俺にはやる事があるんだ。まだ、まだ!!」
秀吉は後悔が湧き出てきて女の首を掴む。
「俺を生き返させろ!!俺はまだやる事があるんだ」
女は笑みを浮かべ秀吉に言う。
「そんなに死ぬのが怖いのか?死んでいるのに?」
鼻息を荒くさせる秀吉は女の首を強く握りしめながら叫ぶ。
だが、どれだけ強くしても女は死ななかった。
「どうした、子供の様に猿の様に言う事を聞かない奴は殺せよ…殺さないのか?」
秀吉は女の首から手を離す。
「な、何者だ!!」
「やっと名乗れるよ。私は女神だ」
「女神!!」
「そうだ、頭を下げろよ。下人」
秀吉は口角がビクビクさせながらも頭を下げた。
「そうだ、それがお前に相応しいポーズだよ。信長のしてにいればお前は最高の2番手だったのに」
秀吉は血管が切れるぐらい怒り狂っていたが何もできないとわかっているので何もしなかった。
「そうだ、それだよ。よく聞け下人よ」
秀吉は頭を上げて女神を見る。
「お前にチャンスをやる」
「なんでしょうか?」
女神が話した話は秀吉にとっては断る理由がない話だった。
「というわけで、その時が来たらお前を転生させてやる」
「はい」
「生まれ変わったら昔の記憶は消えていくけど強く自分を持っていれば消える事はない。新しい人生が満足している奴ほど記憶は消えていきやすいがな」
「俺は大丈夫ですよ」
「なら、安心だな」
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転生した秀吉が自我をもって気が付いた時には、目の前で親が魔物によって殺されていた。
自分が女の子の体という事と同時にこれまでのこの世界の記憶が頭に流れ込んできて、親の近寄り泣き叫ぶ。
そこに魔物を撃ち倒して近寄って来たのはオーロ、イェーリ、エッツ。
「子供?」
「どうする?」
「ここの村の者達は見なしんでしまった。ワシらが見なければならないの~」
イェーリが近寄り名を聞いた。
「あ…アイ」
「アイちゃんね。私はイェーリ。あそこのツルツル頭のがオーロで、あそこの白髪のおじさんがエッツ。私と一緒に冒険しない?」
秀吉いや、アイは相当して頷く。
そして自分の目的の為にそして計画の為に強くなることを決めた。そして女神から授かった二つの剣を握りしめて冒険に出た。
それは9年前の出来事の話だ。
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ナギは自身の名を思い出した。『信長』、、、『織田信長』。
死んで蘇ったのは900年前、女神と出会った。
「天下を取りたいのならこの世界で取ればいい、怪物の王を倒せば、君が天下の王となる」
女神からそう言われて気が付いた時には女の子として生きていた。
優しく温かい両親によって育ててもらった。
豊かで自然な村で暮らしていた。そこに通りすがりの冒険者が現れ、村で当分の間住み込みがしたいというので村の手伝いしていた。
冒険者の一人の剣士が用心として剣の降り方を教えている中にナギはいた。
「君、すごいねぇ太刀筋がいいよ」
その冒険者は赤色の髪の若い女性だった。
それから1年後、ナギは剣の腕を誰よりも磨き上げて村の大人ですら勝てないぐらいに成長した。
「ナギ、そこまで強くなればワシ達がこの村を去って君一人で守れるんじゃないかな?」
「前々から思っていたが、その『ワシ』とか『じゃ』とかなんだ?」
「これ? なんじゃろうな。口癖みたいなもんじゃな。治しようがなんじゃよ」
「女子ならもう少し、女子らしき言葉を使うべきだ」
「ナギもたまに男っぽくなるのなに?」
ナギは口を閉じる。
赤色の髪の女性はナギの頭を優しく触る。
「いい、いつも言っているけど力は人を傷付けるから」
「『気を付ける』だろう? 解っている」
「おお、言うねぇ~」
翌日、いつもの様にナギは赤色の髪の女性に剣を習っていた時、運命の歯車は動き出す。
村に大きなモンスターが現れた。
冒険者たちはモンスターと戦うがかなり手ごわくそして、強かった。
モンスターは村の家などを破壊していった。その後、近くに立っている城に向かってビームの様なものを口から出して放った場所に向かって行った。
冒険者達は後を追うも次々と倒れていく。
赤色の髪の女性はたった一人でもモンスターに立ち向かう。
ナギは何か手伝いたくなりモンスターに隙を作らせるためこちらに誘導させるために石を投げた。
「こっちだ!!」
モンスターはまた口からビームをナギにぶつけた。ナギは全身が凍り付きそのまま意識が消えていった。
そして、ナギが気が付いた時には時は900年もたっていた。
城や村から離れた場所にいて、すぐに村の方へ行くと、記憶にある感じとは違っていた。
城の方へ行くとボロボロで荒れ果てていて魔物が住み着いていた。
そして、ナギは村を守るために城にいる魔物を見張る事にした。
戦い方を教えてくれた人の口真似をして。
そのモンスターとの闘いの時、死に掛けた時に再び女神と出会い『呪いの刀:魔烈刀』をもらう。
魔烈刀は持つだけで魔力を吸われるがどんな魔法、魔術を持ち主に無効化する力がある。
そして吸われ続ける魔力は刀の中に永久になくなることなく保管し続けられる。
ただし、刀の中の魔力を使うと記憶が消えていくというものだった。
そして月日は経ち、5年後、ナギは勇者・リリネッドと出会うのであった。
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そして、現在、ナギとアイは激しいバトルを繰り返す。
両手の刀で攻撃を繰り出すアイに刀一つですべの攻撃を対応するナギ。
アイの刀は『焔琰刀』と『雹凍刀』を使う。
『焔琰刀』は炎の生み出し操る力を持つ。『雹凍刀』は持つ者を芯まで氷付かせるほどの冷を作り操る。
アイはアクロバティックで動きの読めない型でナギに迫る。時には足技を使ったり、バク転しながら斬りつけるたり、空中回転しながら斬撃を放つなどをする。
ナギは動き回り、攻撃の隙を見つけては斬撃を飛ばしたり、突きを使ったりと手を止めなかった。
と二人の激しい戦闘によって地面が抜けて二人は落ちてそこにいた敵を次々と斬りつけるナギ。
仲間の背後に立ちナギに向かって攻撃を繰り出すアイ。
それをギリギリでかわしながらどんどん倒していきまた、激しいバトルによって床が抜けて下に落ちる。
落ちる間も、二人は鍔迫り合ったりとぶつかり合う。
その一瞬にリリネッドとすれ違うも、ナギはアイとの戦闘を優先して先に行かせた。
アイは『雹凍刀』の力で氷のクナイを作り飛ばもナギは刀の一振りで飛ばし返す。
それを読んでいたアイは『焔琰刀』の炎で斬撃を飛ばしながら『雹凍刀』に魔力を注ぎ込んで大きなサメの様な物を作りナギに向かって放つ。
ナギは炎の斬撃を自身の刀に纏わせながらサメにぶつけ治すもサメには効果がなくそのままナギは口に加えながら下の階に落ちる。
ナギが地面に叩きつけられ倒れた瞬間、サメは氷像になり周りを凍らせた。ナギは体が氷で動けなくなっていた。上を見るとアイが見下ろしていた。
「ここまでか? 信長」
「お主…いやここは秀吉というべきか?」
「俺の目的はただ一つだよ、信長」
アイは気が付いていないが一人称が『アタイ』から『俺』になっていた。
「俺はずっと後悔していたんだ」
「ん?」
「この手で殺してやりたいとねぇ」
「!!?」
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数分後、リリネッドは最上階のリヴァナラがいる階にへとたどり着いた。。。が?
「誰もいないじゃん」




