第52章 愚かなナギは勝鬨をあげる
ナギはクロウ達と別れた後、3姉妹のサヨ、ハナ、エリと共に大妖精の場所を探していたが途中、やむを得ない事情からナギと離れることになった。
ナギは1日掛けて大妖精の場所を突き止めた。
大妖精は鋳薔薇で動けず妖精達も鋳薔薇の妖気に当てられて元気がなくなっていた。
だが、ナギが鋳薔薇をすべて燃やし尽くしたことで大妖精は力を取り戻した。
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2日目、ナギはホワブラ国に戻ると武器を持った住人と冒険者たちで賑やかっていた。
ナギはリリネッドの王様殺しのことだと思い、クロウに密かに渡された鼻眼鏡を掛けて街の状況を探る事にした。
勇者を抹殺させるためにホワブラ国は他国の傭兵も連れ、また冒険者たちにも協力を煽り、かなり強い戦力を強めていた。
ナギはホワブラ国の城に向かいもっと有益な情報を得るために探りに向かった。
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城の中はかなりの警備へとなっていて、鼻眼鏡がなければ中に入る事はできなかった。
屈強な兵士たちの会話を盗み聞きをするナギ。
「聞いたか」
「何を」
「ゼラム王を殺した勇者はいま、深海底国にいるらしいぜ」
「本当かよそれ?」
「ああ、レゼシラ王子が言っていたから本当だ」
「でもあそこは誰も入れないんじゃ~ないか?」
「それがアイさん話では、深海底国に行ける道があってそこからは入ったんじゃないかって話だ」
「なんでアイさんはそんなことを?」
「さぁーな。あの子、長所を見つける上手いし、いい作戦を考える天才だけど、俺りゃはあの子苦手なんだよね」
「そうか?ただのガキだろう」
「そうなんだけど、なんかこ~、あの子の手の上で転がられているようで」
「考えすぎだよ、さぁー、話はここまでだ、仕事に戻ろう」
「ああ、そうだな」
兵士たちは持ち場にそれぞれ分かれて戻っていった。ナギはさらに城の置くへと向かう。
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ナギがさらに奥へと向かおうとした時、だった。城が少しつづ、伸び始め、大きくなっていった。
「な、なんじゃ!!」
全体が揺れて立っていることが出来ずナギは地面に手を置く、近くにいた兵士が叫ぶ。
「みんな、気を付けろ!! オーロさんが城を拡張し始めたぞ!!」
城は全体的に横に伸びたり上に伸びたりと手探りの様な感じで動く。
ナギは耐えられず、その場を離れるために動き出す。
外に出て城を見ると粘土の様に伸びたり縮んだりと変わっていくが少しつづ形となっていた。
一番上にそびえ立つ城にその下を五重塔の横に伸ばしたかのような出来となった。
「なんじゃ、この胸を騒ぐ感覚は…」
とそこに岩場の上に座りながらこちらを笑顔で見ている魔帝王の幹部・リヴァナラが見ていた。
「やあ!」
笑顔から感じ取れない殺気が体中を駆け巡ったナギは刀を構える。
「待って待って! 今は争う気はないよ」
リヴァナラは少し焦ったような感じを出すがずっと殺気を放つ。
「話を聞いてよ」
「話じゃと?」
「そうだよ」
ナギは刀を構えながら話を聞くことにした。
「俺らは別に勇者と争う気はないんだ、でもこの国の兵士達は国の王の敵を取るために躍起になっているんだ」
「ユースから聞いているぞ、お主が王をやったんじゃろうが」
「あれ、知ってたんだ~ユースくん。それはいけないなぁ~」
リヴァナラは後味の悪い雰囲気を纏わた。
ナギは物凄い汗を流し始め息を切らし始める。
リヴァナラは少し考えてから話を続ける。
「やっぱ、これが一番だね」
「なんじゃ!!」
「俺の仲間の計画だと勇者は深海底国の王を殺害して国を滅ぼしたことになって、そのままこの国に戻ってくることになってるんだ」
「ん?」
「じゃ~勇者は二つの国に追われることになるだろう。そこで俺達が勇者を捕らえれば、一時的には勇者を守れるだろう?」
「ちょっと待てなんじゃ、その話わ!!」
「何って、計画だよ、作戦。俺が同じ幹部のアウロを騙して深海底国に向かわせたから、そうなるんだよ。どこまで話したっけ?」
「だから先から何を」
「ああ、そうそう、で俺は深海底国の奴らが嫌いなんだよ。邪魔だし、海を自由にできないしで、だから勇者を使って戦争でも起こそうかなって考えているんだよね」
「そんな都合のいいことが」
「起きるよ。今の所、計画通りだ」
リヴァナラはまっすぐナギを見る。
ナギはリヴァナラに集中しすぎて周りに兵士がいる事に気が付かず後ろから攻撃され気絶する。
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4日目の昼ぐらい。目を覚ますと城の地下に監禁されていた。
両手は縛られ、刀はどこかに持ってかれていた。
「ワシの刀はどこじゃ! ここはどこだ!」
ナギは動けず天井を見つめていると、3.4人の兵士がナギの前に立つ。
「なんじゃ、ワイに手を出す気か?このロリコンどもよ。そんなにこの真っ平らな体に興味があるのかこの変態どもめぇ! だがやる気ならこちらも本気de」
とナギがペチャクチャ喋ていると兵士たちが顔を合わせたあと、ナギのン縄を解き、刀を渡す。
ナギは自分の勘違いに気が付き、顔を赤くして恥ずかしくなり、土下座をする。
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兵士達とナギは気が付かないように城から逃げる。
城から離れ街からも少し離れた場所にある灯台の中に入って行った。
中に入ると地下へとつながる扉があった。ナギは怪しんだが彼らを信じて進んでいく。
螺旋階段を降りていき、最後の扉の前に立つ。
「この奥でみんなが待っています」
「だれが?」
そうナギが言ううと兵士が扉を開けた。
扉の隙間から明るい光が差し目がすくみナギが目を一瞬、閉じて開けた先には、兵士や傭兵そして数百人の冒険者がそこにいた。
「これは?」
「時間がなかったのでこれしか集まらなかったですが」
「ん?」
「貴方は勇者様のパーティですよね」
「そうだ」
「なら、お力を貸してください」
「え?」
「我が国を取り戻したいのです。今の王が偽物だとしています」
「どういうことだ?」
と困惑しているナギに近寄る一人の女の魚人。
「初めまして私は、ジャダルクと申します」
「ナギじゃ」
「私は外交官を差せてもらっている者で先ほどまで深海底国にいたんです」
「本当か? ではリリネッドは?他のみんなは無事なのか?」
「貴方の仲間が誰かはわかりませんが…勇者は無事です。我々は同志と言ってくれた方なので」
ジャダルクは一粒の涙を流した。
「今一つ、貴方様に伝えなければいけないのが深海底国は浮上してこちらに向かっています」
「な、んあ…はあ!!?」
とそこに兵士が口を開く。
「つまりは兵力が増えるかもしれません」
「まさか、お前らホワブラ国と!!」
また一人の男がナギに近づく。その声と雰囲気は感じたことのある感じだった。
落ち着き、みんなが安心な顔をにさせる者。
「先手はもう打たれた、なら次は俺たちが動かなければ後手に回ってします。やるなら攻めだ」
ナギが声のある方を見るとそこにはユースが立っていた。
「お前、なんで!?」
「ジャダルクに頼んで先に着くようにしたんだ」
ナギはなんとなく状況を読んで笑みを浮かべる。
「今のところの勝率はどれぐらいじゃ?」
「いま、行けば確実に負けるが、勇者とその仲間そして、深海底国の兵力を考えれば確実に勝てる」
「そうか…なら”戦"じゃな」
そして5日目で深海底国が浮上し、少しつづ、ホワブラ国の港近くまで近づく。
何人かの冒険者の魔法使いが深海底国とホワブラ国の海の間に足場を作りその上に陣形を立てる。
いつでも動けるように準備をする。
いろいろあり、7日目の朝。
ナギは陣形の前に立ちその後ろには同じ鎧を来た魚人やホワブラの元兵士、そして協力してくれる冒険者達が立つ。
ナギは右手に持った刀を掲げて叫ぶ。
「さて、皆の衆、戦争じゃーーーああぁああ!!!!!!」
その声は遠く離れた場所からでも響くであろう声量だったという。




