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第50章 手と手を繋いで


 薄暗いく少し霧にかかった場所で小さな体の黒い物体は一輪の花を見つめる。

周りはそれとは違う同じ花が沢山、足で潰され枯れていた。

そこに一人に人物か現れ、その物体に聞く。

「何をしているの?」

「花を育ててる」

「他の花はどうするんだい?」

「いらない」

「なんでかな?」

「みんな見た目も形も同じなのにこの子だけ違くって可哀そうだから」

「でも、それは必要な事なんだよ」

「必要?」


その人物はその物体に手を差し出す。

「おいで、教えてあげるよ。この世界を知ればいい」


物体はその手を掴んで歩き出した。



 ●●●



リリネッド達は身動きが取れない時、アウロは操っていた人間に戻ったのを感じ取っりもう一度、操る為の針を投げ込むために、その方向の触手を伸ばす。


「さて」


シュッんと移動魔法でクロウがリリネッドを掴んで移動した。

リリネッドはクロウの手を離し、アウロに向かって話す。

「もうやめよう」

「やめるだと?」

「うん、貴方からは、なにかこ~…う~~~ん…説明できないけど、何となく破壊衝動?みたいなのは感じ取れないんだよね」

「それは私が普通じゃないからだろう」

「また、貴方も生きてるんでしょ?」

「生きている…私は生きている…生きをしている様に見えるのかお前に…私が」

「違うの?」


アウロは自分の手を見る。手なのか物質なのかもわからない手を見る。

「そうか…私は生きているのか…そうか…なら」


地面から触手を大量に生み出してクロウが触手に手を焼いている間にアウロはリリネッドをさらってその場を離れる。


「全く、いつもの展開過ぎてなえるぜぇ」


クロウは触手に一瞬にして瞬殺して移動した方向に向かう。




 ●●●




ポウラは元の子供の姿に戻ってしまい。キュルアのひざ元で眠る

ルーベルはポウラとキュルアを守るために周囲に防御魔法の結界を張る。

「また、操れてしまったぞ!!」

「操っている志望者を倒さない限り、終わらないってこと?」


とそこにアウロと捕まっているリリネッドが現れ、リリネッドを地面に飛ばして転がる。

シンノスケや、ユースが近づこうとした時、地面から触手生えて二人を捕まえる。

離れた場所にいたヘラレスやリチャード・フィングス、サイガ、エクエス、そして数人の人間を捕まった。


「妙な動きをするなよ冒険者、こいつ等の首をもぐぞ」


触手をから出ようとしたシンノスケ達はその手を止める。


「ヴォンズの姿が見えない…いや、感じない…倒されたのか」

アウロは少し俯く。


リリネッドは立ち上がり魚人と人間が争っているのを見る。

アウロに捕まっている状況になっても争い続ける。

魚人や人魚そして人間はそれぞれ罵倒をする。

「醜い見た目!!」

「気持ちが悪い!!」

「お前達など」

「バケモノが!!」

「お前達なんて・・・」「お前らなんて・・・」




「「滅びればいい」」





リリネッドが黙って観ていると数人の魚人が近くに来ていてリリネッドを襲い掛かろうとしていた。

それに気が付いていてもリリネッドは抵抗せずに攻撃を受けようとしたのを見たアウロはその者達を捕まえる。


「こうしようか、勇者。いや、リリネッド」

「え?」

「私は人間も魚人達も好きではない。こいつ等は見た目など価値観などで見下し争う。醜い生き物だ。そこでだ、リリネッド」


アウロは右側にシンノスケ達と人間を、左側に魚人や人魚を配置する。

「どっちを助ける。同族か、異族か」


首に触手が巻き付き、毒の様な物が垂れ始めていた。

「お前が決めるのだ!」


リリネッドは右側を見る。

「リリネッド」

「勇者さん」

「た、たすけてくれ!!」

「死にたくない!!」

「魚なんて選ぶな!!」

「勇者は人間だろうが!!」


次にリリネッドは左側を見る。

「勇者」

「すまない、こんなことに巻き込んで」

「いや、死にたくない!!」

「だから人間は信用できないんだ!」

「もう終わった…」

「助けてくれ、俺には家族が!!」


とそこに争いから手を止めてそれぞれの知人や家族、恋人などがリリネッドに近づく。

「俺の仲間を助けてくれ」

「私の旦那も捕まっているの」

「魚は無視して助けろ!!」

「人間なんて死んでもまた勝手に増えるでしょ?」

「何悩んでんだ!!」

「やめて、死なせないで!!」


リリネッドの回りで騒ぐ中、息を切らしながらクロウがたどり着いて、大きな声を出す。

「勇者・リリネッドに選ばせる時間を与えろ!! 愚かな者たち!!」


クロウは苦しみながらリリネッドの周囲にいる人間を下がらせた。

「リリネッド、時間はない。でも決断しろ。俺はどっちを選んでもその決断に従う」


リリネッドは周囲の顔を見る。悩んでいると時に一人の魚人の子供が木の棒を持って前に出て来た。

魚人の子供は木の棒をリリネッドに向けて泣きながら言う。

「俺の父ちゃんを助けて!! 助けないならお、俺は!!」


リリネッドはその子供に合わせるようにしゃがむ。

「君はあの時の子だね」

「助けてよ、俺のたった一人の父ちゃん何だよ」


リリネッドは困惑して背をっている剣に手を置いたのを見てビビった魚人の子供が木の棒でリリネッドの頭を叩いてしまう。

魚人の子供も大泣きしながら自分がしてしまった事にびっくりする。

周りの魚人や人魚は「なんてことを!」「もう終わりだ」などと口に出す。


額から血が流れ倒れかけたが左手で地面に手を付ける。

「ち、ちが、違うんだ…お、おれは…」


リリネッドは魚人の子供が怯えているのを見て、そっと抱きしめた。

「え、え??」

「大丈夫だよ。大丈夫」


リリネッドは耳元でささやき震えていた子供を慰める。

体を離して頭に手を置いて撫でる。


「君の名前は?」

「お、おれは…チーネ」

「チーネくんは人間嫌い?」

「わからない」

「そうだよね、私も知らないんだ。君たちを」


チーネはリリネッドの顔を見る。

リリネッドは立ち上がりチーネを下げさせた。


チーネは大人たちの所に戻る、いろんな大人に怒られていた。

それを横目で見るリリネッドだったけどすぐにアウロの方を見る。


「決めたかな?」


捕まった者達の触手からは毒の液体がみんなの皮膚にまで流れ落ちかけていた。


「うん、決めたよ」

「では、決断をしろ勇者!!」


アウロは自身の魔術で作り出した天秤の悪魔を作りだす。

悪魔の様な物は左右の人質を吊り上げる。足がぎりぎりまで届くぐらいまで上げる。

「これはお前が心から決断した様に動く悪魔の技だ。お前がどちらかを選んだ時、選ばれなかった方が吊るされ悪魔が殺す。さあ、言え!! 同族か、異族か!!」


リリネッドは大きく息を吸ってから発言する。


「同族を助ける!!」


魚人や人魚達はその発言に絶望する者、泣き始める者、勇者を罵倒する者たち。

ヘラレスや、リチャード・フィングスもそれを受け入れた。

「じゃー処刑を始める」


が悪魔は吊るそうとはしなかった。そればかりかアウロの触手が自然と消えてしまった。

「どうした?なぜ?」


悪魔はそのまま消えていった。

「なんで、なんでよ!! 技はちゃんと発現させていたはず!!」


悪魔のいた方をからリリネッドの方へと視線を変える。


「私は言ったよね、同族を」

「だから、魚たちは死ぬはず!!」

「違うよ」

「何が!!」


リリネッドは真っ直ぐな目でアウロに言う。




「魚人も人魚も私にとって同族だもん。同じ生き物、同じ血が流れている、()()()()()()()




人間や魚人そして人魚はその言葉で喜びと感激の声を上げる。

捕まっていた者達もアウロから離れ、リリネッドの後ろにいる者たちの近寄る。

家族や知人、恋人との再会を喜びそばにいた異族と手をつなぎ始める。


離れていたクロウが高笑いをしてリリネッドに近寄る。

「こいつはバカだ…マジで最高だよ。マジでお前が勇者でよかった」


シンノスケやヘラレスも目を合わせて手を握る。


アウロは怒り叫ぶ。

「そんなことが…お前らそいつらは敵だ。見た目も生まれてきた環境も違う異族だぞ!!」


リチャード・フィングスがリリネッドの横に立つその問いに答える。

「それでもいつかは受け入れなければならない。それがいまだ」


いつの間にか起き上がっていポウラが続けて答える。

「いいところは褒め合い、苦しい時は助け合い、嫌なところは保留で」


リチャード・フィングスとポウラは顔を合わせる。

「「それが国と国を繋ぐためにコツだ!!」」



アウロの前に団結した深海底国と人間を見る。

そこにリリネッドは手を差し出す。


「貴方も生きているなら、私と友達からやりなおそう?」

「またそれか…」




アウロは思い出す、何者でもなかったあの頃、差し出された手を。魔帝王から差し出された手を。



その手を信じて手を握り、歩き出したことを。



「(そうか…これが違いを認めう事なのか? 人種の違いなんて気にしなけれないいのか? 違う、この勇者は最初からそんな事すら考えていなかった。一人の人として平等に接しているんだ。それが悪人だろうがどんな奴でも受け入れるんだ。たとえ殺されても…。やっと見つけた。異族同士を繋ぐ人物をこれでこの国と人間は仲良くできる…計画は少し思った通りとは違ったけど…。ヴォンズやヴォワゴレレには悪いことしたな…。)」



アウロは流れない涙を流す。



「(魔帝王様、貴方のおかげで世界を知りました。こうして人間の様に生きれるようになりました。そしてこんなバカな人間とも友達になれるようになれました。あなたの考えを否定することになりますが…こんなバケモノを友達になろうと言ってくれる人を私は…私は)」





アウロがリリネッドのあたたかなその手を取ろうと腕を伸ばす。



「勇者…リリネッド、私と友達に」
























































































「それはダメだよ、アウロ」







魔帝国の幹部のリヴァナラがアウロの体に腕を突っ込んで核を握りつぶした。


アウロはく灰の砂となって消え始める。

倒れ込んだ体をリリネッドが抱きしめる。

「リリネッド、私はアウロだ」

「アウロ」


アウロはすぐに消えかかっている部分を消えかかっている触手で立ち上がりリヴァナラと向き合う。

「(犠牲無くして成功はない。結果、勇者は犠牲無くして成功した。だけどもし犠牲が必要なら)」

「俺を観察する気でいたらしけど、ごめんね。電話でも言ったけど俺は縛られるの嫌いだから」


リヴァナラは笑顔で言う。

「だから、アウロが計画に入れていたこれもやっちゃうね」


アウロは「まさか」と思った。


深海底国は大きく揺れ始めた。

「な、なに!!」



リリネッドが揺れで倒れこむとアウロがその上に立つ。

完全に消滅してもおかしくないアウロは気持ちでそれを止める。

「リリネッド!!」

「アウロ」


アウロは思い出す、あの時の花を。


あの時、同じ種類の花の中に一つだけ形や色が異なる花が咲く、突然変異の花を。

それをリリネッドだと思ったアウロは思う。

「(ここからだ、ここから時代が始まるのなら)」


アウロはリヴァナラを触手を使って巻き付かせて掴めそのまま一緒に深海底国から出て行った。

国を出る前にアウロは黒いクラゲの様な物を作り出して周りにいる人たち包み込んだ。


リリネッドたちがいる深海底国の2段目が浮上し始めた。

勢いが強くズズッと上がっていく。



地面にひばり付くほどの重力だったがみなアウロの術によってそれほどの苦しくなくいた。

魔物やモンスターはそれに耐えれなくなり消滅していく


そしてそのまま海の上へと向かって行った。



 ●●●




海の中、アウロはそれを見届けてから消滅した。

顔も表情もなかったが、安心した顔で。


リヴァナラは海の中でも普通に生きていた。

「(まったく、仲間にこんなことして…まあ~ここまで多少は違うけどとりあえずは()()()()()()()だね)」


リヴァナラは平然と泳いで上へと向かった。





海は広く、何があるかまだ分からないことが沢山ある。

深海底国がすべてではない。


ほかの場所にだって魚人や人魚の別個体も存在する。


1段目だけが残った深海底国に忍び寄る悪の手。

そのお話はまたいずれ。



これにて深海底国篇は終わりです。


次からは第4部?となります。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

次の話からはアクション?とある人物の正体が判明する予定です。


お楽しみに!!


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