第19章 閉ざしたのは扉か心か
足で扉を勢いよく開けたクロウは部屋の中にズカズカと入っていった。
中は横長の大きなテーブルが真ん中にあった。壁には本棚があるぐらいだった。
「客室か?」
「さっきの奴の姿がないのぉ~」
「どこいった?」
本棚に目線がいったリリネッドは近づき一冊の本に触れた瞬間、横長のテーブルが勝手に動き地下へといく扉が開いた。
「「ナイス!」」
「イエイエ」
一行は下へと降りて行った。
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下へ降りて一本道の廊下の様な道を少し歩くと一つの扉に突き当たった。ドアには小窓があってそこから様子を見てみると先程の黒いコートを着た人物は何やら実験の途中だったようだ。
フラスコをや小瓶などを使って何かを確認動作をしている。
「何してんだろうね」
「科学者か?」
「そうは見えんが本当に教会の人物じゃか?」
黒いコートを着た人物の部屋の竹がぶつかる音を鳴った。
それに気が付いた人物は一行がいる扉に向かって歩いてきたので一行はいそいで上に戻ろうとしたがクロウがワザともたついて足止めした。その結果、黒いコートの人物にバレてしまった。
「「あ!!」」
「君たち!!?」
クロウはニヤリと笑みを浮かばせる。
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一行と黒いコートを着た人物は、身廊の部屋に戻った。
黒いコートを着た人物は教会に入って来たお客さんの対応をしていた。
「どうやら、あの竹はベルの変わりだったんだな」
「観ればわかるし説明なんていらないよ」
「知らない人がいると思ったから説明しました」
「ナギ知ってた?」
「そんな事より勇者様よ、あ奴あの態度ワシらと違くないか?」
「冒険者が嫌いなんじゃない?」
「そうか、ぶっ放すか?」
「いや斬るか?」
「いや、話で、すまそう」
黒いコートを着た人物は対応を終えて一行の前に立つ。
「で、君たちはなんだ? 勝手に地下まで入ってきて…というかどうやって」
「内の勇者をナメるなよ!この勇者はいろんな力を手に入れたがそれをうまく使った事がないが強いんだぞ!!」
「強いんじゃぞ!!」
「ごめんね」
リリネッドはクロウの方を見て言った。
「勇者…ああ、新聞で見ました。それは知らずに無礼な態度を取ってしまい申し訳ございません。僕はシンノスケと申します。この教会の主に変わって神父をやらせてもらっています」
ナギとクロウはコソコソと聞こえないように話す。
「意外と下手に出たのう」
「ああ、意外で驚いてる」
シンノスケはリリネッドの右手を取って膝まづく。
「申し訳ございませんでした。どうかこの哀れな罪びとをお許しください」
「え、あ、うん」
見つめ会う二人だったが、シンノスケの手を狙ってナギが剣を振りかざす。
リリネッドが手を放してシンノスケを後ろに押す。
「何してるのナギ?」
「何って勇者様。ゴミが付いたので斬り取ってやろうかと」
「ゴミ?」リリネッドが言うとクロウが笑顔で話しながらシンノスケに少し通つづ近寄る。
「駄目じゃないか、ナギ。神父にそんな殺意のある顔をしたら、やるときは気が付かないようにやらないと」
クロウは背中で隠した魔力のエネルギ球をシンノスケをめがけ撃ち込んだ。
「(よし、くたばれ)」
そう思ったクロウだったがシンノスケはスッと立ち上が表情を変えずに撃ち込まれたエネルギ弾をすべて弾き飛ばし、すべて同じ天井にある窓に飛ばし飛んだエネルギ弾は爆破して消えた。
「な、んだと」
「勇者様の仲間だからここは一度だけお許します。次からは許しませんよ。呪いを抱えているお二人さん」
クロウとナギは唾を飲み込む。
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教会から追い出された一行はいったん宿へ向かうことにした。
「もう二人のせいだからねぇ、ど~すんの教えてもらう予定だったのに…」
「覚える気もないのに…そんな事より…ナギ、アイツの手見たか?」
「ああ、奴の手がエネルギをはじき返す時じゃな」
「人の手の形ではなかったよな」
「そうなの?」
二人で話しているとリリネッドが横から入って来た。
「そんな事より、リリネッドさん」
「え、なにその呼び方はじめて」
「最近、おモテにおなりになってよ~ござんでしたね」
「私が?」
リリネッドは困惑した顔を見せた。
「駄目だ、マジで自覚ねぇ~んだコイツ」
「気を付けないとダメじゃな」
ヤレヤレと感じを出すクロウとナギの後ろを歩くリリネッドは振り返り教会の方を見る。
「ねえ」
二人は振り返ってリリネッドを見る。
「あの人なんであんなに苦しそうだったんだそうね」
「そうだったか?」
「うん、気のせいかもしれないけど」
「気になるのか?」
「いや、いいよ。早く宿に行こう」
リリネッドが歩き出して先に移行した手をクロウが掴んで止める。
一ため息をしたあと頭を掻きしたあとクロウが言う。
「気になるなら戻るぞ、ナギもそのつもりだし」
「勇者様のそれはもう確信じゃぞ」
「そんな事ないよ、さぁ宿に戻って寝よう」
リリネッドは歩くもクロウが止めている為、その場をただ足踏みしている状態でいた。
「『面倒なこと言ったな』って思っているのもわかってるから」
「さぁ、行くぞよ勇者・リリネッドよ。新たな冒険の始まりじゃ!!」
「絶対面倒なことが起きるってわかる」
「「勇者の直感はあたるからなぁ~」」
「だったらやめようよ~」
一行は教会に戻る事にした。
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戻った頃には少し暗くなっていて山で日差しが当たらないようで教会にはもう明かりが灯っていた。
一行が中に入ろうとした瞬間、裏の方で大きな音がした。
「なんだろう?」
「見に行くに決まってんだろう」
「だよね~」
一行が隠れながら見に行くと、シンノスケが倒れていた。その近くに4人の人物がいた。
「で、わかったのかい?」
「まだです…」
シンノスケは息を切らしながらそう言った。
「何十年たってると思っている」
「それはこちらが言いたい。何十年、何百年たって無理ですよ」
「シンノスケ、君の体は俺達とは違う特別制だ」
「こ、これは…」
「ボスはもう待てないとよ。もう動くとおっしゃった」
「ま、待てください!!」
「50年は長すぎだな」
シンノスケは悔しながらその場で蹲る。
4人のうちの一人がシンノスケに近寄る。
「さて、お優しいボスから最後の伝言だ『3日やるからあの魔術を完成させろ』だってよ」
それを伝え終えたあと4人は山の上へ体を向けてスッと消えた。
その場から動けずにいるシンノスケに手を差し伸べるリリネッド。
「大丈夫?」
「何しにs…見てました…よね」
「うん」
「気にしないでください。私の問題です」
そう言ってシンノスケは立ち上がり教会の裏口に方へ向かう。
クロウや、ナギが問いかける。
「アイツら魔物か? 人ではなさそうだったが」
「強そうじゃったの~」
「ほっといてください、関係ないです」
教会の裏口のドアノブに手を置いた時、リリネッドは言う。
「でも、シンノスケは苦しそうだけど、大丈夫なら行っちゃうよ?」
「行ってください、あなた達には何もできないですから」
そう言ってシンノスケは扉を開けて中に入って扉を閉めかけた時、リリネッドの声が耳に入った。
「じゃ~なんでそんな苦しそうな顔してるの」
扉は閉まり一行はその場を立ち尽くした。




