第17章 死聖の森(しせいのもり)と剣聖の男
「死聖の森?」
「この辺の区を抜けるためにはここを通らないと先に行けないからな。わかりやすく言えば始まりの街の試練だな」
「始まりの街ってレベルの旅を超えてるんじゃないかのうぉ~」
死聖の森を前に立つ一行。
「ここに入ると必ず迷うらしいよ」
「迷う奴は心が弱い奴だけだよ、強ければまっすぐ歩くだけで出れる」
一行は森に入った。そして数分で森を出ることができたがリリネッドがいなくなった。
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「ありゃりゃ」
歩き続けても森から出ることができずに困っていた。
それでも、まっすぐ歩き続けていると地面がぬかるみ始めたと思った瞬間にリリネッドは底なしの沼にはまっていた。
「あっこれはヤバいかも」
リリネッドは少し沈んでいってるとスバっとリリネッドは沼から抜け出された。
リリネッドは両腕で抱え上げられていた。
「大丈夫かい?」
リリネッドを助けた男が言う。
「あ、うん、ありがとうございます」
リリネッドは抱えられながら二人は見つ目合う。
「っあ、下ろしてください」
「ああ、ごめんね」
男はゆっくりとリリネッドを下ろした。
「紹介が遅れたね、僕はユース、剣聖だ。 君を知っている、有名人だ…勇者リリネッド」
「そうだね」
ユースはリリネッドを見つめる。
「何か迷ってるようだね、なるほど…。リリネッド、お願いがある」
「なに?」
「一度だけでいい、剣を構えてほしい」
リリネッドは頷いてから背中の剣を抜いて構える。それを観てユースは確信した。
「君はまだその剣と心を交わしてないだろう」
「交わす?」
「初対面の相手に言われも信用できないと思うけど…。僕を信じてほしい」
ユースの真っすぐな目にリリネッドは信じる事にした。
リリネッドは剣を地面に刺したその前に座る。
「さぁ、目を閉じて剣の声を聴いて」
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クロウは騒ぐナギを止めていた。
「なんで、助けに行ってはいけないのじゃ!!」
「この森に連続で入るのはやめておけ、精神がおかしくなるぞ」
「なら、この森を伐採する」
「やってみろ、多分無理だと思うぜ」
そう言ってクロウは森を見つめた。
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リリネッドは目を開けると空間がぼやけている場所にいた。
「ここどこ?」
すると目の前に黒い影のシルエットが現れた。
黒い影はリリネッドに近寄って来て頭を叩いた。
「イッターい」
『お前はバカなん?』
黒い影はエコーが掛ったような声でそう言った。
『なんで素直に聞いてんだ。敵だったどうすんだ?、ユースがイケメンだからか? それとも男性ならだれでもいいのか? 危機感があまりないよなお前、マジで気を付けろ』
「(すごい、世話好きの人みたいに注意された)」
『さて、こうやって話せるようになったのもいい機会だ。お前はまだこの剣の力をまだ使いこなせていない』
「へぇ~」
『あまり興味がなさそうだな。それでも説明するけどまあ~聞けよ』
黒い影は剣を取り出した。
『この剣に名前があるのは知らないだろう』
「知らないというか知る機会がない」
『そりゃ~そうだ。この剣の名前は世界最強万能型強烈甲賀剣、という』
リリネッドが何か言う前に黒い影が先にしゃべった。
『これに名前を付けたのは俺じゃないから』
「う、うん」
『名前を知ったことだしでは教えてやるよ』
剣を振り回しながら黒い影は遠くの方に剣を投げた。
『剣を遠くに投げてもこうやって』
黒い影は投げた剣の方に手を伸ばすと遠くに投げられた剣が引き寄せられるように戻って来た。
『ムニョムニョっぽいだろう?』
「ムニョムニョ?」
『まあ~いいや、つまり置き忘れたり、敵との戦闘時に剣から離れても手を伸ばして来いと思うだけで戻ってくる。楽だろう?』
「まぁ~うん」
『続きまして剣にシールドを出す方法を教えてやる…思うだけだ…」
「終わり?」
『ああ、以上だ。あとは勇者なら剣士の技を覚えられるからそれをつい分けて戦っていけばいい』
「…。」
『なんだ? もう終わりだよ、帰った帰った』
「もう本当になにもないの?」
『そうだなぁ~あるとしたらもっと経験を積めと何を迷っているか知らないがこの剣の前の持ち主とは違う生き方を選んだんだろうがだったら胸張ってお前の生き方を世界に見せていけ、あの魔法使いなんて無視しとけ』
そう言われて背中を押された瞬間、周りが暗くなりいつの間にかリリネッドは目を瞑っていた。
「相棒との対話は終わったかな? どうかな迷いは消えたかい?」
「元々そんなに迷ってはいなかったけど、あの黒い影は剣が人になった姿なの?」
「黒い影の人? そんなの聞いたことがないけど…まあいい剣を構えなくてもわかるよ。君からは自信を感じる」
「(この人…まあ~いいか)」
「勇者・リリネッド、またどこかで会おう」
そう言ってユースは森を出て行った。
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リリネッドはとりあえず、前に進んでみると森から抜けだせた。
「あれ、簡単に」
横を見るとクロウが地面に這いつくばるナギの上に乗っていた。
「ほれ、出てきたぞ」
「おお、リリネッド」
「ごめん、遅れた」
リリネッドは周りを見渡す。
「どうした?」
「誰か出てこなかった?」
「いや誰も…。誰かと一緒だったのか?」
「う、うん。ユースっていう剣聖の人と」
クロウは言う。
「剣聖と出会ったのか?」
「う、うん」
「剣聖ってのは死んで初めて伝説としてあげられる人物に向ける者だ。生きてい奴が剣聖を名乗るなんて…」
「ワシも死んだら剣聖になれるのかのう」
「お前ならなんにでもなれるよきっと」
リリネッド一行はとにかく歩き始めた。
それを遠くで見ているユース。
「君と出会えたのは運命だ、君が勇者へともっと有名になれば…。彼が…いずれ」
ユースはリリネッド達とは別方へと歩き始めた。




