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勇者を利用する者たちの冒険  作者: とり飼ジン
冒険の始めり篇 ~勇者始めました~
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第14章 キミとの旅

リリネッドは飲み物代を返すのを忘れていた為、ソロアクを追うも姿がなくあっちこっち見渡していると物陰から出てきたのを見て近寄った。

「ソロアクさん」


名前を呼ばれたソロアクはその方を見た。リリネッドがいることに気が付いて顔を隠した。

目や鼻が赤くなっていたからだ。

リリネッドは気が付いて気を使ってお金をさし出した

「ああ、お金ですか…大丈夫ですよ」

「でも…」

「本当に大丈夫ですよ。(まさかあんなことを言っておいて追ってくるとわ、面白い子だ)」

「本当に大丈夫、二つの意味で」

「ええ、そこにはあまり触れないでください」

「ああ、うん」


少し沈黙して後からソロアクが動き出す。

「じゃ~行きますね」

「あ、あのさぁー」

「はい?」

「私はまだ勇者っていうのがよくわからないし、自覚もないし、みんなが思う勇者に慣れてないけど、絶対に一緒に旅をしたいって体動くほどの人になるから待ってるか」


ソロアクはリリネッドの頭に手を置いた。

「まったく困りましたね…大丈夫ですよ、貴方は立派な勇者ですよ。子供にやさしくできる人ですから。それにみんなが思う勇者像なんてあなたが追う必要ないのですよ」

「そうなの?」

「みんなが何を言おうとこれが新しい勇者で勇者リリネッドだって世界に届ければいい。もし地の果てまで届いたら、その時は私からお願いしますので」


リリネッドは笑みを浮かべ頷いた。そして今度こそ分かれた。



とその時、村人が声かけてきた。

「勇者様、よろしいですか?」

「?」



 ●●●



リリネッド一行は村の外れにある見張り塔にいた。

「本当だ、いるね」

「ゆっくりだけどこっちに来てるなぁ」

「ど~すんじゃ」

「いやはや、困ったもんだな」

といつの間にかサイガも横にいた。


「クロウ、あれ止められる?」

「無理に決まってんだろう、ぶっ叩くぞ」

「うへぇ~!?」

「俺が止めてやる、こう見えても俺はドラゴンハンターだからな」

「初めて聞いたぞ」


クロウが少し考えた後、口を開く。

「俺たちだけでは無理だろう、ソロアクたちも呼ぼう」

「まだ、居ればじゃけど…もしかしアイツらこの事を知ってか」

「何が?」

「それが…ああ!!!」


クロウがある方を見た。その方向にはサイガがドラゴンに向かって突っ走っていた。

「あのバカ!!」

「呼んだ?」

「てめぇーじゃーねぇ~よバカ!!」


リリネッドはムスッとした。

「まあ~時間ぐらいは稼いでくれるだろう」

「そうじゃな、あ奴頑丈なからだなら」

「じゃ~、呼びに行こうよ。ソロアク達を」


とリリネッドが言ったあとドラゴンの鳴き声が聞こえた。

「まだ遠くの方いるのに鳴き声がここまで聞こえるのかよ」

「おい、村人Aよ、村の者たちに緊急報告を入れるのじゃ、早く」


と話している間、リリネッドはドラゴンの方をずっと見ていた。

「どうした、リリネッド?」

「いま、ドラゴンが…」

「ドラゴンがどうした?」

「『私の子供を返せって』」



 ●●●



少し時間は戻りソロアクが宿の近くに着くとクモグサとブリノが急いで出てきた。


「お、おうソロアクか」

「どうしましたか?」

「いや、そうだ、俺たちこの村からもう出るけどお前はどーすんだ」

「当然、私もついて行きますけど、どうしたんですか? そんなに急いで」

「急いでなんk」


とその時、遅れて出てきたカタハヤがクモグサにぶつかったことで鞄から宝石がこぼれ落ちた。

「こ、これは!!」

「っくう!!」

「な、なんてことしたんですか!!」


ソロアクはクモグサにつかみかかった。

「これはドラゴンの卵じゃないですか!」


カタハヤとブリノが動揺する。

「そうだよ、エレメラルドラゴンの卵は産まれる前は宝石で出来てるのは知ってるか? それを闇市場に売れば高値で売れるそうだ」

「だからって!!、ドラゴンが自分の卵がないことに気が付いたら、この村に襲ってきますよ」

「知らねぇーよ。知ったこっちゃーねんだよ。お前だって大金が欲しいだろうが、こんな村奴らなんてほっておけよ」


ソロアクは宝石を奪ったてクモグサたちと距離をとる。

「これは今すぐ元の場所に戻すべきだ」

「本気で言ってんのか?」

「はい」

「昔のよしみだ、それをすんなり渡すなら何もしないで置いてやる」


ソロアクは杖を取り出す。

「おいおい、お前には攻撃魔法ないはずだろう?」

「そうさせたのは俺たちだけど」

「お前は真面目なやつだからいつかこうなる事読めないとでも?」


ソロアクは杖を3人に向ける。

「回復魔法も仲間のみで自分を回復する魔術も覚えさせてくれませんでしたね。でもないわけでもないですよ。あなた達と出会う前に覚えた技ぐらいありますよ」

「俺たちと出会う前までは()()()だったろうが、たかが知れてる」


ソロアクが警戒しているとカタハヤが手を伸ばして魔術を使った。

宝石がカタハヤの手に移動した。

「は!?」

「おいおい、俺はシーフだぜ。これぐらい朝飯前だろう」

とそこに村全体に設置されているスピーカーから『ドラゴンがこの村を向かっています、安全な場所へと逃げてください』という報告が鳴り響いて村人たちは逃げていく。


「やばいなぁ、早くしないと、カタハヤこいつを魔力感知に触れない袋に入れろ」

「わ、わかった」


ソロアクが動き出す。

「返しなさい」


クモグサはソロアク体で止めたあと胸に剣を突き刺した。

「っう!!!」

「お前はいい僧侶だったよ。ああそうそう、お前の金は俺たちが預かっていたよなぁ~最後だから教えておいてやるよ」


ソロアクはゆっくりとクモグサを見る。

「全部使っちまったよ。お前の夢なんてど~でもいい。お前は使える仲間だったよ」


クモグサは刺した剣を足を使って思いっきり引き抜いた。

それに続けてブルノは自信の武器の拳銃でソロアクに向かって発砲した。

ソロアクは壁に背を付けて倒れこむ。

「行くぞ」

「「おう」」


3人はその場を去っていった。

ソロアクは空を見た。一匹の鳥が飛んでいた。

「(早く、どうにかしなければ…声も出なくなってきている)」

立ち上がろうとするも力が出ず倒れこんでしまった。

「(誰か、誰か…だ……あ……。)」


ソロアクが完全に目を閉じる前にリリネッドが近寄って声をかけた。

「ソロアク!!、ねぇ起きてソロアク!!!」

「っ…」

「な、なんで…誰が!!」


ナギが宿から出てきた。

「こ奴の仲間はいなかったぞ」

「え?」

「やったのはこ奴の仲間じゃろうな」

「ああ」


クロウとナギが周りを見渡す。

「もうこの辺にはいないだろうな。だが、村からはまだ出てないはずだ」

「クロウ!!」

「なんだよ、俺には治せない傷を塞ぐぐらいの魔法があるがもうこれは俺には治せない。助けられないんだよ」

「薬草でもダメかな?」

「無理だ。コイツは助からない」

ソロアクは薄ら目でリリネッドの頬に触れ魔術で心の声を聴かせる。

『そんな顔をしないでください勇者リリネッド』

「……」

『それより、私の仲間がドラゴンの卵を持っています』

「仲間が卵を?」


クロウとナギがソロアクに近寄る。

「リリネッド、ソロアクとしゃべっているのか?」

「うん!」


ソロアクはクロウとナギにも聞こえるようにした。

『彼らは西の方へ入っていきました』

「西だな」

『彼らを許してあげてください』

「なんじゃと!!」

「こんな事までされてなんで」

『利用されていたとは言え、私を僧侶までしてくれた者たちです』

「約束するよ」

ソロアクは声が聞こえなくなった。


「ソロアク」「ソロアク」「ソロアク」と3人は名前を呼び続けた。


思い出す過去の記憶。走馬灯が脳内で走る。

「(私は毎回、自分からパーティに入りに行ったからパーティの方から誘われたことなんかなかった。よかった…最後にパーティに入りたいと思ったのが勇者のパーティで…よかった…ほん…と…)」



 ●●●



ソロアクは思い出す。

ギョク城の地下、剣を引き抜く者たち列でクモグサ達と並んでいた時に聞いた話を。

「知っているか、勇者になればサブ職業が覚えられるって話」

「なんだよそれ?」

「俺の祖母ちゃんから聞いた話なんだけどね」

「マジなのか、その話」

「マジだよ、マジ、俺の祖母ちゃんの先祖さまが昔勇者に職業を教えてあげたことがあるんだってよ」

「それど~やるんだ」

「それが…」



 ●●●



クロウとナギにはもうソロアクの声は聞こえなくなっていた。

魔力が弱くなるのを感じたクロウは悔しがる。ナギは無力な自分を悔しがり剣を握る。

リリネッドソロアクの胸に手を置いて目をつぶる。

『…ネッド…リ…ッド』

「ソロアク?聞こえてるよ」


ソロアクはリリネッドの額に左手の人差し指を当てる。

『僧侶の力です』

リリネッドはサブ職業に僧侶が追加された。

『やはりうまくいきましたね。やってみるものですね』

「な」

『最後に不躾なお願いがあります』

「うんいいよ」

『世界を救った後でもいいので私の村に教会を作ってください』

「うんいいけど、救えるかわからないよ?」


ソロアクは笑みを浮かべた。

『大丈夫ですよ。あなたは私が思う勇者どうr…』


ソロアクはいろいろ伝えたいことがあったが限界だった。

最後にソロアクは口を開く。3人に聞こえるような声で感謝を込めた気持ちを伝えるために。


「ありがとう、君たちと旅がしたかった」


ソロアクは目をつぶる最後にみた顔は引き締まった3人の顔だった。

『あとは任せて』という安心させる顔だった。

それを見たソロアクはよっくりと息を引き取った。



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