第13章 その名はサイガ
勇者一行、危険な崖道を歩いていると崖の下から声がしたので3人は崖の下を覗き込む。
そこには木の枝を掴んでぶら下がる、金色の鎧を身に纏った男がいた。名はサイガ。
「いやはや、やっと人に出会えたよ。悪いが助けては、もらえないか?」
崖の下を見下ろした3人は顔を合わせてから引っ込めた。
「ハハハ、面白い冗談だ! もうわかったよ。わかったから助けてくれないか?」
サイガに返答は帰ってこなかった。
「よし、わかった。冗談はわかったから。見てくれないか? ここから落ちたらさすがにヤバいぞ。それでも、無視するとしたら君たちは人の心を失うほど急いでいるのだな? 逆に心配だ!!」
ベラベラ喋るサイガに、とりあえず足止める勇者一行。リリネッドが先に向かおうとするもそれをクロウが止める。
「どうするんじゃあ?」
「いやだよ、面倒ごとになりそう。それにあの人なら大丈夫な気がする。落ちても」
「それは、わかるけど。とりあえず、俺達は勇者一行なもんで。見捨てるのはどうかなって」
「そうじゃな」
「逆に一度村に戻ってからもう一度ここ戻ってくるのはどうかな?」
「人助けの癖を付けろ! バカ。勇者バカ!」
クロウは魔法でサイガを浮かせ、自分たちの近くまで降ろし助けた。
「いやいや、助かった。なんと御礼を言えば」
3人は全力で逃げるが鎧の男が先回りして止める。
「俺はサイガだ。いずれ有名になる名だ、覚えてくといい」
「クロウ。 魔法使いだ」
「ナギ。 一様、戦士じゃあ」
「リリネッド。 勇者やってます」
「ハハハ、勇者か~、面白い子だ。本物の勇者に怒られるぞ」
対応に戸惑うリリネッドはクロウを見る。
「こっち見んな、めんどくさい。 ほら、これで自由になったな。俺達は急ぐから、それでは、ご機嫌よう」
「ご、ごきけんよう」
「ご機嫌ようじゃあ」
3人はサイガから去っていくが・・・。
「ハハハ、御礼を貰う事は恥ではなないぞ」
と言ってもクロウの肩を強く掴みあげて止める。
「なんで俺達が断った風になってんだ? うわ、なにをするやめ......離せ! HA NA SE」
クロウが手を引き離そうとしたがサイガは離れなかった。
「すごい前向きなおとこじゃな」
「少しだけ尊敬」
「3人とも照れ屋とは愉快なパーティーじゃないか。安心しなさい、俺は気にしない。俺は魔帝王を倒し、いずれ英雄になる男だ!! 心を広く持つ男だ!!」
「話ができないバカは二人もいらないんだよ」
「ワシのことじゃなかろうなあー!」
「お前以外だよ!!」
「え? 私!?」
「ハハハ」
「クロウ、バカはね、バカなりに傷つくんだよ」
「そうか、バカなのにそこに気が付いたか。よかったなあ、少しは賢くなったじゃーないか」
「勇者殿、そこの阿呆は置いてワシらは先に向かおう」
「うん」
ナギはリリネッドの手を掴み引っ張って歩き出した。
「ちょっ! 待テイ!! てか、いつまで掴んでるんだよ。 マジで離せ! 顔が近いんだよ気持ちが悪い!!」
「大丈夫か!! よし、街は近い! あそこで休むといいぞ!!」
サイガはクロウを担ぎ上げて街へと走り出した。
●●●
勇者一行とサイガはライゴウという街にたどり着く。
クロウは街に着く前にどうにかしてサイガの手から逃れた。が街に着くと同時にサイガの顔色が悪くなって倒れこむ。
「おい、無駄にシーン作ってんじゃあーねぇよ!!!」
「すまない。気にしないでくれ。命の恩人の御礼が」
「んなこと言っている場合か!」
クロウはサイガの肩を組んで持ち上げる。
「すまないが、お前らは宿を取っておいてくれ。俺はコイツを教会に連れて行く」
クロウは疲れたのか、熱くるしかったのか、一旦、サイガを引き離してから魔法で浮かび上げてそのまま教会へと歩いていく。
リリネッド、ナギは街の奥へと進む。
少し歩いた先で街の住人が集まり騒ぎになっていた。
リリネッドは近くにいた女性に話を掛ける。
「何かあったんですか?」
「それが子供達が昼になっても帰って来てないらしの。今、街の腕のいい人と冒険者さんが探し行こうとしている所なのよ」
「そうなんですか」
リリネッドが他人事の様に話を終わらせた所でナギが肩と肩をくっ付ける。
「これはクロウが言うところの人助けという物なのでは勇者殿」
「かもしれない。 手を貸した方がいいかな?」
「まあー、勇者という肩書を背負う者なら助けるのが筋だとワシは思う。ほそれにクロウがここにいたら助けると思うぞ」
苦い表情になるリリネッドは背負う剣のベルトをギュッと握りながら、子供たちを探しに行こうとする人たちの軍団に向かう。
ナギは自分から話しかけに行くリリネッドを観てボソッと口を開く。
「勇者殿は人見知りではないのじゃなあ」
独り言を言い終わると、リリネッドの後を追う。
●●●
リリネッド、ナギは住人と一組の冒険者をそれぞれ馬車に乗って移動していた。
馬車は3台あり、分かれて探し始めた。
リリネッドが乗る馬車には腕に自信がある街の住人、4人と態度が悪い男が一人乗っていた。
馬車の中は深い合わせの長椅子になっていてそこに座る。
「めんどくさい」
狭い馬車の中で奥に座り腕と足を組み誰よりも幅を取る冒険者の態度の悪い男。
ナギとリリネッドは入り口の近くの横同士で座った。
後から腕のいい住人達が開いている椅子に座った。
「なんで、俺までこんな事に付き合わなければならないんだ」
グチグチと文句を言う冒険者の男を見てナギはリリネッドの耳元でボソッと話す。
「なあ、あの者の態度どうなんじゃあ?」
「でも、あの人も子供を探してくれる人ってなるよね」
「奴は本当に冒険者かあ? 見た目は盗賊じゃあろうが」
「ナギ、人を見かけで判断したらダメなんだよ」
「主がそれを口にするのに驚きじゃあ。今日は新たな発見が多い日じゃなあ」
それから10分ほど移動して、馬車は止まる。
「さて、ここいらを探しましょうか。冒険者のみなさんはモンスターや魔物のお相手をお願いします」
「任せるのじゃあ」
「は、はい」
冒険者の男は大きなあくびをして返事をしなかった。
住人達は声を出して子供達を探しながら草の中や川の近く、木の上などを探していく。
リリネッドや、ナギは、襲い掛かる魔物を倒していく。主にナギが倒して行く。
冒険者の男は仕方がなく倒していく。それをみたナギはその男に話しかける。
「お主、もう少し真面目になったらどうじゃあ?」
「は? どーでもいいだろう。ガキが大人に文句を言ってんじゃーねぇよ」
冒険者の男はナギを足で押す。ナギは後ろに倒れ、ちょっぴりキレかけ様とした時、男はリリネッドに近づき肩に腕に回し、顔を近づかせる。
「先から気になっていたんだ。お前、名前は? 俺はクモグサってんだ。よかったらこの後、一緒に出掛けない?なあ、そこの草陰とかでさあー」
「勇者から離れろ!!」
ナギはべったりと体を密着させるクモグサをリリネッドから離し刃を向けるナギ。
「ガキ、空気読めよ。邪魔だ」
「そうか、斬られたいようだな。 そんなに死にたいのか?」
ナギが今にも斬りかかりそうな所をリリネッドがクモグサの手を払いのけて止める。。
「もういいから探そう」
「勇者が そう言うなら」
「勇者? お前が? まさか」
クモグサが何かを言おうとした時、住人の一人が大きな声で叫びだした。
「子供が居たぞ!!」
リリネッドはナギと共に声の元へと走り出した。
●●●
馬車から降りた場所から少し離れた場所で地面に大きな穴が開いており、その中を覗き込むと底が少し見るぐらい深い穴。足場になりそうな所にはロープの梯子の半分が落ちていた。
リリネッド、ナギが穴の中を覗き込んでいるとナギが人影を見つける。
「勇者、あそこじゃあ」
「え?」
「足場になりそうな崖岩の出っ張った場所の下に子供がおる」
リリネッドが大きな声を出そうとした息を吸い始めたところに住人が止める。
「駄目だ!! ここは」
「え?」
「ここはドラゴンの巣だ」
「ドラゴンじゃあと!!」
一旦、探しに行った他の連中に連絡をするために住人の二人はその場を離れる。
もう一人は場所に繋がれている一匹の馬に乗り街に戻って梯子を取りに戻る。
リリネッドは不安そうな子供の表情をみて無断で穴の中に入って行った。
「勇者、危険じゃあ」
「でも、やらないといけないのが勇者だから」
そう言ってリリネッドは子供がいる場所まで降りて行った。
その行動を見ていたクモグサは口を開く。
「何が勇者だ、ただの偽善者じゃーねぇーか! 」
ナギは冷たい目でクモグサを見る。
●●●
穴の下にいる子供に近づくリリネッド。
「大丈夫?」
子供は泣き疲れたような表情で疲労していた。
「まだ、奥に友達が」
子供は奥の通路に指を差す。
「わかった。 もう少しここで待ってて。大人が助けに来ると思うから」
そう言ったがまだ震えが止まらない子供を見て、リリネッドは奥にいるという子供を探しに洞窟の中へと進む。
中に入ると同時に背負う剣に手を伸ばして抜いて奥へと進んでいく。
光が届かなくなって行く中、勘で歩いていくと急に刃が光り出した。
「ありがとう」
リリネッドは剣の中にいる者に御礼を言った。
奥に進んでいく中で足元に何かが当たった。それは壊れたランプだった。
その周囲を光る刃で照らしてみると、そこ近くに衰弱した子供が二人が倒れていた。
リリネッドが近寄ろうとした時、何かの気配を感じそこに向かって光る刃をを照らす。
そこには
石の結晶が全体的に広がっている場所。その結晶の中、クリスタルの様な物に閉じ込められた状態で体が大きなのドラゴンが眠りながらいた。よく見るとヒビが入っていて今にも割れそうであった。
それだけではなくその近くにはクリスタルに閉じ込めた卵が2つほどあった。
リリネッドは子供を連れて行きたかったが子供たちは怯えて動けずにいた。
運ぶにも一人では無理だと思っていると来た道から光を照らしながらゆっくりと近づく者が現れた。
「大丈夫ですか?」
「あれ?」
「また、会いましたね。 ソロアクです」
ナギの生まれ故郷の村で盗賊のカイジョーの体を見てくれた僧侶がその人物であることをリリネッドは薄い記憶の中で彼を思い出す。
「手を貸してほしいの」
リリネッドとソロアクは子供を抱きかかえながら二人はそこから離れる。
洞窟から出て長い梯子を使って、リリネッド達は穴から抜け出る。
ソロアクは僧侶として子供の怪我や疲労を回復させていく。
「このままではまだ、足りないので一度、教会へ向かいましょう」
リリネッドは周りを見ると分かれて探していた他の二組の馬車も来ている事に気が付く。
「なんかいっぱい集まってる」
そこにソロアクと仲間が集まって状況説明をしている中に、リリネッドが近づく。
「えぇ~と、ソロアクさん」
「勇者さん、こちら私の仲間のクモグサ、ブリノ、カタハヤです。カタハヤさんとは前に一度会ってますよね」
「うん」
ソロアクの仲間のブリノが話し始める。
「ソロアク、下はどうなっていたんだ?」
「洞窟があって奥にドラゴンがいました」
「ドラゴンがいたのか?」
「はい。でも、結晶の中に閉じ込められていたの大丈夫かと」
「それ以外には?」
「ドラゴンの卵らしきものも閉じ込められていました。もしかしたら結晶のせいで生まれられないのかも」
ソロアク達が話している所に住人達が近づき話に割り込む。
「すみません、冒険者のみなさん。 そろそろ街に戻るので馬車に戻ってください」
その言葉でそれぞれが馬車に乗り込んで街に戻る。
ソロアクのパーティー4人は同じ馬車に乗りもどる中で3人は何かをコソコソと話し合う。
「話が本当なら」
「ああ、俺達は金持ちになるぞ」
ソロアクは3人が何かをたくらんでいるのを感じ取りながらも軽視するのであった。




