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追放されしニート。土地持ちとなり、異世界との交易で村興しをする  作者: バッド
4章 再会を楽しもう

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66話 鍛冶をする僕

「ドナドナドーナ、ドーナツ。ドーナツを揚げて〜」


「ドーナツ食べたいでしゅ! まぁしゃん作って作って〜! 揚げたてで〜、お砂糖たっぷりまぶしたのが食べたいでつ!」


 マセット村2号に運ばれるビンチョーさんたちを見ながら鼻歌を歌うルル。その歌に敏感に反応して、僕の脚にしっかとしがみつくと、よだれを垂らしてドーナツを想像するあ~ちゃん。ドーナツ揚げてくれるよねと、もう作ってもらう気満々だ。ルルは常に余計なことしかしないね、まったくもぅ。許しちゃうのは、惚れた弱みってやつだ。


 ルルの歌でわかる通り、ドナドナドーナツと、土竜人たちが恐る恐る幻想の扉を潜って、日本に来ています。


「ここはどこもぐ? なんか怖そうもぐ」


「魔力の匂いが薄いもぐ………」


「大地から魔力を感じないモグ! 全然味がしない………この土地は死んでるもぐよ!」


 陸の家の前に転移してきた土竜人たちは、空気を吸って不味いよと顔をしかめて、地面を舐めて味がしないとオロオロしていた。中には怖がって、僕の脚にしがみつく子もいる。たしかにこの日本は変だ。なにせ、世界を支える重要な魔力という柱がないのだから、当然と言えば当然だ。


「うひゃ~! まーくん、この可愛いモグラはなにかな? 私への愛のお土産?」


「ネズミに似ているけど、可愛らしいですわね」


 陸の家で寛いでいたあかねさんたちが店から飛び出してきて、早速あかねさんは抱きしめて毛皮を撫でる。ローズさんがツンツンと土竜人の頭をつついて物珍しそうにして、他の面々も新顔の土竜人を見て、ガヤガヤと騒がしくなる。


「どうやらモグたちは大人気種族らしいでもぐね。握手一回千天貨もぐよ」


 チヤホヤされて、怖くなくなり、早くも調子に乗って手をフリフリと突き出すビンチョーさんたち。怯懦だけどお調子者なのだ。


「はいはい、ビンチョーさんたちには、仕事をしてもらいに来たので離れてください、ほら、あかねさん離れて」


「しょうがないなぁ、それじゃ代わりにまーくんを抱きしめるね」


 ちゃっかりと抱きついてくるあかねさんだけど、ここで断るとグズって話が進まなそうなので諦めてなすがままになる。


「ビンチョーさん、貴方たちにはこの土地の土壌改良、新しいハンターギルド支店の建設から、陸の家のリフォームをお願いしたいんです」


「え~っ、この魔力ゼロの大地を〜?」


 面倒くさそうな顔で、土を摘み取り指でこすって消滅させていく。


「はい、見ての通り、この大地には魔力が宿っていません。なので土壌改良が得意な土竜人に任せたいんですよ」


 土竜人たちは土壌改良が得意だ。あらゆる種族の中でもエルフと一、二を争う凄腕である。このまま家屋を建てても、大地が魔力ゼロだと簡単に崩れてしまう。なので、まずは地盤を固くしないといけないんだ。


「ちゃんとお礼は考えてますよ。バアルの大樹で作った皇帝人参でスペシャル人参スティックを作ったんです」


 ポッケには大量にその人参が入っている。匂いよし、味よし、歯触りよしの三重奏。一口食べたら人参嫌いの子でも大好きになる代物だ。


「そういえば、ロロはそろそろ巣穴でお昼寝うさ。巣穴は親分のポケットだったうさよ」


「うさ、最近マセットのポケットに引っ越してきたうさ」


「うさなんて、前世からマセットのポケットを巣穴にしてきたうさ」


 うさぎたちが、僕にしがみつくと、よじよじと登ってポケットに頭を突っ込んでくる。うさもうさもと、ワラワラと集まって、押し合いへし合いぎゅうぎゅうで、足をパタパタ振って、なんとかポケットに入ろうとアホ可愛い姿を魅せてくれていた。


 ポケットから出てる白いもふもふの脚をツンツンとつついて、肉球は気持ちいいなぁとほんわかしてると、ほんわかできない子が怒り出した。


「もぐーっ! その人参はもぐたちのために親方が用意してくれたもぐよ! 出るもぐ、そのポケットから出てこいもぐ!」


 もぐたちが黙っているはずもなく、よじよじと僕の脚を登ると、うさぎたちの突き出た脚を引っ張りポケットから引っ張りだしていく。


「なにをするうさ! 親分はうさでれうさよ! この人参はうさたちの物として用意したうさーっ!」


「そうだそうだ、うさのもふもふ毛皮に、親分はめろめろうさ」


「だいたいキャラがかぶってるうさよ! もぐらは土に還れーっ」


 地面にコロンコロンと転がったうさぎたちが、背筋を伸ばして、シャーッと両手を掲げて威嚇する。


「もうあざというさぎの時代は終わったもぐ! このお鼻がラブリーなもぐたちの時代もぐ!」


「そーだ、そ~だ! このちっこい身体は見かけもラブリもぐ」


「決闘もぐね!」


 モグたちも背筋を伸ばして、両手を掲げて威嚇する。2種族は遂にここにきて決戦の雰囲気を見せる。あだ名はモグで良いよね、そっちのほうが可愛いし。


 ゴゴゴと空気が震えて、2者はテテテと走って手を組み合う。押し合いへし合い、ハイタッチをするかのように手を合わせて相手を倒そうとするうさぎとモグ。


 その危険なる決闘は、まるで争い合うマーモットの如し! スンスンヒクヒクと鼻をぶつけ合いどちらも負けていない。


「ほらほら、喧嘩はやめなさいな」


 ローズさんが二人の間に手を入れて喧嘩を仲裁しようとすると、うさぎとモグはローズの手を掴んで押し始める。スンスンヒクヒクと鼻をぶつけて、ローズの手を倒そうとするのであった。


「やだ、この小動物たちアホ可愛いですわ。敵を忘れて、わたくしの手を倒そうとしてますわよ」


 押し合いへし合いするのに夢中になって、相手を忘れるうさぎとモグに、ローズさんがデレデレになっちゃう。見ると、他の面々もワクワクとした顔で手を差し出して、うさぎとモグに絡まれていた。絡まれていたというか、絡んでいた。あかねさん達はとっても嬉しそうだ。急遽うさぎとモグのふれあい広場が開催されました。


「………ここにテッパンさんと一緒に作った『魔石付与』のお札を置いておくから土壌改良に使ってね」


 実乃梨さんの膝の上に乗り、美味しそうにジャーキーを食べているビンチョーさんに告げておく。


 ドサドサと千枚ちかくのお札を地面に置くと、モグたちはちらりとそのお札を見て、あんなにちょっぴりしかないのかと、楽勝だねとヒクヒクと口元を引きつらせて、礼場さんたちにしがみつくと触れ合いに夢中になるのだった。


 うん、触れ合いが終わったら全部1週間以内に終わらせてね。追加のお札はたっぷりあるし、家屋も作ってほしい。あと、ゴーレムによる瓦礫の片付けもよろしく。


 喜んでと、心の声を僕に送ってくるモグたちに僕は満足して、鉱石へと近寄ると一つ手に取る。


 さて、僕はこれで金属製の武具を作るとするか。


           ◇


 武具を作るには二つの方法がある。それは従来の鍛冶場で鍛造する方法と、単純に素材と魔石を使って錬金魔法で作成する方法だ。


 それぞれメリットデメリットがあり、鍛造する昔ながらの方法は優れた鍛冶師ならば時には国宝級の名剣などを作ることができる。錬金魔法と違い性能が高い物ができやすい。が、その方法から数は打てない。


 錬金魔法は運任せとなる。時にハイクオリティは作れるが滅多にないし、すぐに作れるので、量産できるメリットはあるがその性能は鍛造よりも悪い。鋳造といったところかな。


 魔物たちとの戦闘は少しの武具の性能の差で、命が助かることも、倒せることあるので、高位のハンターは鍛冶師の作る鍛造品を買い求める。なので、ハンターでも鉄ランクくらいが錬金術師が作る武具を買い求める。ちょうど礼場さんたちがそれくらいの階位に入ったので、ちょうど良いだろう。


「金属鎧実装されました! と言うやつですね領主様。金属鎧からは性能がダンチですものね、ここは相場の十倍で売りましょう!」


 ルルがポリポリと人参スティックを食べながら僕の手元を覗き込む。それ、うさのじゃない? いや、モグのだよねと、肩にわさわさとしがみついているけど、鉄よりも分厚い面の皮は全く変わらない模様。


「相場の十倍なんて、僕は清廉潔白、品行方正なマセット君だよ? そんな暴利はとれないよ。この地の相場価格に従うだけさ」


 相場価格に従う僕って、お人好しすぎるよね。本来はルルの言う通り、十倍とか暴利を貪ることができるんだろうけど、善人の僕には出来ないのであった。


「というわけで、まずは『アイアンインゴット作成』」


 鉄鉱石を置いて、火炎アリの魔石を取り出すと魔力を送り込む。魔石と鉄鉱石が空中で融合するとスライムのように変化して、ゴゴゴと魔力光が僕の顔を照らす。


 ホへぇと、あかねさんたちがうさぎを抱えて眺めてくる中で、ピキーンと涼やかな音がして、銀色にも似たアイアンインゴットがポトンと地面に落ちるのであった。


「親方、滑らかな魔力移動うさ。こんな品質の良いアイアンインゴットは見たことないもぐよ」


「うさともぐが混じってるよ、ビンチョーさん」


「うさぎと決闘をしてたら間違えたもぐ」


 適当極まるビンチョーさんたちだけど、目利きの能力は高い。アイアンインゴットを見て、ほほーと感心してくれるので、少し照れくさい。だけど、これで終わりではない。


「では次に『アイアンソード作成』」


 さらに魔石を投下して、アイアンインゴットと融合させる。同じようにスライムのように変化して、最後にピキーンと光るとアイアンソードが地面に落ちるのであった。


「うん、魔力もしっかりと乗っている。これなら鉄ランクのハンターに売れる性能だ」


 太陽のもと、アイアンソードを掲げるとキラリと刃が光る。え~と、リンボ帝国の首都ではアイアンソードは幾らだっけ………。


「二百万天貨でアイアンソードは売りたいと思います。これは今までの木刀よりも遥かに性能がいいですよ?」


「? 親方、アイアンソードは五十万ふげっ」


 なんかビンチョーさんがお腹すいたみたいなので、人参スティックをお口に放り込んであげる。


 アイアンソードは二百万天貨。相場に合わせた金額だよ。この地では魔力の籠もった武器はないから、少しは高くなるけど、仕方ないよね。

アースウィズダンジョンのコミカライズがやってます。ピ〇コマなどで見れますので、よろしくお願いします!ピッ〇マなら、最新話以外は無料で見れます!

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― 新着の感想 ―
 マーモットの争いとレッサーパンダの威嚇は観てるコッチが癒されるほど熾烈なバトルですがそれに劣らぬうさとモグの熱い戦い!(^皿^;)平和な時代ならこれだけで投げ銭いただきウハウハになれるんだけどココの…
モグ思ったよりかわいい見た目なんですねぇ ルルと付き合ってるから暴利の基準ずれてないからマセット君w まぁ誰も耕していない場所だから実際いくらでもいけちゃうモグうさ
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