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追放されしニート。土地持ちとなり、異世界との交易で村興しをする  作者: バッド
3章 村を復興させよう

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41話 野菜樹と僕

 銀色の大樹『バアルの野菜樹』。名前は長すぎるから短縮しました。この大樹は野菜樹と名前はつけられているが、実際は果物も採れる。そして、その品質は階位70前後と伝説レベルのものだ。


 古代では、邪教徒が「うはは、この村を生贄に遂に伝説の西瓜が蘇るのだ」と高笑いして、勇者たちにタコ殴りにされた御伽噺もあるくらいに美味しい。まぁ、普通なら一つの土地を砂漠地帯に変えるのだから、それくらいのメリットがないと誰も興味を持たなかったろう。


「私はシャンピニオンステーキをレアでお願いします」


「あ~ちゃんね〜、たい焼き盛り合わせ〜」


「そのタイプの大樹じゃないです。料理が入った実が生るわけじゃないので、あきらめてください。どうして貴女はいつもいつもボケるんですか? あ~ちゃんの教育に悪いです」


 悪乗りするルルとあ~ちゃんにツッコミを入れるベルさんを横目に大樹を眺める。純銀製にも見える大樹は美しく、枝に伸びる葉はキラキラと煌めいており、枝の一本だけでも、宝石よりも価値があるだろう神々しさを見せている。


「この大樹の使い方は簡単です。欲しい野菜を『力ある言葉』で願い、代価として魔力を捧げると実が生るシステムです」


「では、シャンピニオンステーキの味がする実をください。あだっ」


 ベルさんの説明を聞いて、意気揚々と懲りずに余計なことをするルルの頭にでっかいザクロが落ちて、地面に叩き潰される。どうやら大樹からの罰が落ちた模様。体を張って、教えてくれる銀髪メイドだ。そろそろ大人しくって騙されやすい美少女枠を飛び越えそうな予感がします。


「なるほど、ちゃんとした願いでないと駄目なんだ。となると、『苺をください』」


 スッと少しだけ魔力が吸い取られると、枝の一つにわんさかと花が咲いて、すぐに苺が生った。だいたい百個くらいだろうか。粒は大きくよく熟れて真っ赤だ。見ただけで甘くて美味しそうだとわかる。


『帝王苺:階位70:8時間の間、体力50上昇』


 ものすごい高価で効果な苺だよ。こんなものは、皇帝陛下だってめったに食べられないだろう。最初に採取できた果物だ。とても美味しかったですと、感謝の気持ちをこめて後で伝心を送ってあげよう。内容は『くふふふ、とても美味しい帝王苺です。テレポ屋がいれば送れたんだけど、とてもとても残念です。かっこ笑い』。完璧だ、きっと皇帝陛下もこのどうしようもない村を育てた僕に喜んでくれるだろう。


 プチリと切って、しげしげと眺める。真っ赤な苺はつやつやとしていて、よく熟している。ポイと口に放り込むと、口内に甘みが広がって、それでいてスッキリとした酸味が自分でも気づいていなかった身体の疲れをとる。魔力が足りなかったんだ。だから少しずつ弱まっていたんだね。


「おぉ、身体がスッキリしましたよ。これが帝王苺の力かぁ」


「マセットはその程度ですが、村人が食べるともっと顕著な効果がわかります。まるで干し柿がつやつやの採れたて柿になるみたいに」


「なるほど、そうだったのですね。では、魔力の足りない私がヘブッ」


「さ、村人たちにわけてみてください。この肥料は木に植えておきますので」


 真っ先に帝王苺を食べようとした銀髪メイドはベルさんの脚に踏まれて、地面にめり込んでいるけど、気にしなくてもいいかな。


「それじゃ………シチリちゃん、あ~ちゃん、あ~ん」


「わぁい、ありあと〜、りょーしゅさま。あ~ん」


「あ~ちゃんもあ~ん」


 ワクワクとした顔でそばに来た雛たちの口にそっと帝王苺を放り込む。モキュモキュと二人は美味しそうに苺を食べる。


「あま~い。あたちこんなあまいの初めて食べた!」


「あみゃーい。あ~ちゃん、この苺だいしゅきになりました」


 ほっぺを押さえて、くねくねとご機嫌幼女ダンスを踊る幼女たちだ。その姿はとても可愛らしいけど、シチリが痩せぎすなのが、気になる。あれだけ食べたのに、まだガリガリだ………ん?


 ちゃんとしたご飯が必要だなぁと思っていたら、シチリの身体がほのかに光り、痩せてガリガリの頬がぷっくりつやつやになり、枯れ木のような手足がふっくらな健康的な手足に変わる。


「わ、わぁ、なんか身体が元気いっぱいになりまちた! みてみて〜」


「かけっこ負けないでつよ!」


 自分の姿を確認して、幼女はぴょんぴょんと飛び跳ねて、子犬のように元気いっぱい走り出す。お友だちが走り出したら、あ~ちゃんももちろん走り出して、ポテポテと後ろに続く。もう痩せた栄養不足の幼女はどこにも存在せず、元気な幼女がいるだけの平和な光景だ。


「おぉ………痩せた孫娘が元気に………ありがとうございます、領主様」


「いえいえ、残りは村人たちに………足りないけど、魔力を奉納すれば無限に採取できるのかな、ベルさん?」


 感涙するテッパンさんだけど、帝王苺は百個。村人は五百人。全然足りないんだ。


「この樹は1日に3回だけ願いを叶えてくれます。なので、ろくなことをしない人からは守らないとあっという間に使われてしまいますよ」


「そっか。でも一粒で回復するなら、2日で全員に行き渡りますね」


「それならば、苺は女子供に配ってくだされ。儂らは明日でも大丈夫なゆえ」


 おじいさんたちは、ためらうことなく帝王苺を譲ると言って、反対する者は誰もいない。この困窮した状況でも他人を思いやれる人たちが領民で僕も嬉しいよ。


「その間、儂らはおとなしく宴会でもするかのぅ」


「そうだな。俺らはいんすたんとらーめんをフライパンで焼いてみよう」


「発泡酒は本当に発泡しているのか確認しないとな」


 宴会を始めるかと、よいしょと座り始める優しい村人たちの首元を掴んで、領主として褒めてあげる。

 

「思いやりのある発言、素晴らしいと思います。では次に、領主の僕への思いやりもお願いします。具体的には、田畑を耕して、そろそろ村人をやりましょうか」


「は、はい。わかりました」


 快く皆は久しぶりの農業を開始することになったのでした。


           ◇


 田畑は村から近くても、バアルの大樹からは少し離れているので魔力の吸収率がすこーしだけ弱い。


『ちょっと痩せている土地:階位3』


 普通の田畑は階位は10〜20。この土地は少し痩せていてどちらかといえば田畑には合わない土地に変わってるけど、まぁ、これなら農民のスキル補正が入るからなんとかなる。


「田畑から収穫できる野菜でも魔力はとれますし、先ずは簡単な野菜から育ててみましょうか」


 土地はよく耕されており、村人たちがサボってはいないことがわかる。なので、後は種を植えてみるだけだ。宴会ばかりしてたわけじゃなかったんだね。


 村人たちもワクワクとした顔で、田畑を見ている。世界のルールによりペナルティがかかる土地が、今度は自分たちの頑張りで野菜が育てられるときて、期待と熱意が渦巻いている。


「さて、なにを植えようか?」


「親分、人参の種どーぞ」


 お鼻をスンスンと無らして、もふもふの手に乗せた種を渡してくれるロロ。もう人参しか育てる選択肢はないよねと、つぶらな瞳を輝かせて、尻尾をふりふり振っている。そして、僕の答えを待たずに、きゅーと一鳴きして種を植え始める。


「それじゃ、私は人参の横にラディッシュを植えれば良いんですね。人参はラディッシュには敵わない〜」


 鼻歌を歌いながら、ラディッシュをルルが植え始める。早くも復活した模様。


「この種は魔物たちを退治して手に入れたんです。なので、普通の作物よりも早く育つし、味も良いはず。土地が多少痩せていても、その分を補正するだけの力は持っています」


 ジャガイモや白髪ネギ、人参にラディッシュ。ピーマンに茄子。様々な種がある。実験的に日本の野菜の種もたくさん買ってきたんだ。


「おぉ、そこまでしてもらえるとは感謝の言葉もございません。儂はセージのため、みんなの頑張りを眺めるだけになりますが」


 おじいさんは農夫ではないからと後ろに下がり、村人たちが一斉に種を植え始める。今までは種を植えても、若芽が出る程度で、ほとんど育たなかった。だが、今回は大丈夫なのだと、期待に満ち溢れている。


「今度は野菜が育つのかねぇ」


「あぁ、ようやくこの村でも野菜が収穫できるんだねぇ」


「よし、どんどん植えるぞ、飢えないようにな」


「上手いことを言うな、お前」


 和気藹々と村人たちは植えていく。しばらくは野菜が育つか見守る必要があるだろう。しかし、これからは収穫を期待できる。その期待を胸に畑を見つめる村人たちだった。


「どれくらいで収穫できるんでつか?」


「えーと、だいたい4ヶ月くらいかな?」


 あ~ちゃんもワクワクとして畑を眺める。早く育たないかなとソワソワ幼女だ。


「4ヶ月って、一回寝たら良いの?」


 あちたには育ってるよねと、腕にしがみついてくるあ~ちゃんだ。その無邪気な言葉に村人たちはほのぼのとした空気を醸し出す。


「一回じゃないよ。百回以上寝ないと駄目かな。野菜って、そんなに簡単に育たないんだよ」


「百回以上?」


「百回以上」


「何個くらいでつ? 指いくちゅ?」


「えーと、たっくさん。ヘカトンケイルの指よりもずっと多く必要だよ」


 僕の言葉にコテンと首を傾げてあ~ちゃんは考え込む。百回って何回かなと紅葉のようなおててを出すので教えてあげると、理解したのか、じわじわと涙が溜まる幼女。


「うわ~ん、早く育って、人参しゃん。花を咲かせて、ジャガイモしゃん。あたちは収穫したいのでしゅ!」


 幼女は待つことが嫌いなのだ。パタパタと手足を振って駄々っ子モード。畑の隣でパタパタ暴れるので泥だらけになっちゃう。


 そして、あ~ちゃんが泣けば泣くほど、畑からはピョコンと発芽して、すくすくと育っていく。おぉ、と皆が眺めている中で、葉は広がり、蕾ができて花が咲く。


 おぉ、あ~ちゃんパワー最大だよ。


「あ~ちゃん、あ~ちゃん。明日には収穫できそうだよ」


「! 収穫したいでしゅ! やったぁ、収穫、しゅーかく!」


 ピタリと涙が止まると、あ~ちゃんは起きて、キャッキャッと踊りだす。ご機嫌幼女ダンスだ。


 全てに愛される幼女のパワーは凄いねと、村人たちは目を逸らし、野菜が育った不自然さに目を逸らすのでした。

アースウィズダンジョンのコミカライズがやってます。ピ〇コマなどで見れますので、よろしくお願いします!

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