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追放されしニート。土地持ちとなり、異世界との交易で村興しをする  作者: バッド
3章 村を復興させよう

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33話 冒険者たちの戦い

 半年前にサラリーマンを辞めて、冒険者となった者がいる。その者の名前は礼場彰俊れいばあきとし。会社を辞めるにあたり、聖人に覚醒した仲間たちと一念発起してパーティーを組んだ男だ。


 魔物退治は命懸けだ。礼場れいばは冒険者になってからの数ヶ月を、常にそのことを心に留めながら戦っていた。安全マージンは多くし、怪我をなるべく負わないようにと。


 彼らは住宅街にて、突如として現れた魔物たちの群れと戦っていた。その数は30匹ほど。戦闘は終盤に入っており、残りは10匹程度だ。


 礼場たちは5人パーティーのCランク冒険者である。冒険者となってから、ずっと組んでいる頼もしい奴らだ。


 戦場は家屋が建ち並び、道路は狭く、普通の住宅街であったのだが、戦闘の余波で隣接する家屋は壁が砕かれて、電柱は倒れ、アスファルトは穴だらけだ。


「よし、そろそろ敵が弱ってきた。一気に押していくぞ!」


「おおっ! 流れ弾に気をつけろ。下手に傷を負うなよ!」


 仲間たちが慣れたもので、魔物を包囲しながら危なげなく攻撃をする。今日の依頼は畑に生えているようなトウモロコシの魔物だ。最初はトウモロコシだと聞いて、なんだそりゃと皆で笑ったものだが、今は真剣そのものだ。


「敵を一掃するわよ。『閃光熱線』」


 後方の仲間が聖術を使い、前方に屯ろしているトウモロコシの魔物たちへと熱線が飛んでいき、薙ぎ払う。熱線により炎がトウモロコシの身体を炎に包む。


 トウモロコシといえば弱そうに思えるが、その体は2メートルはあり、その黄色い粒が金属が擦れるようにシャラシャラとなる。粒は金属のように硬く、こちらの攻撃を簡単に防ぐ。蔓が寄り集まり手足のようにトウモロコシの胴体を支えていて、ゆらゆらとこちらをからかうようにステップを踏んでいた。


 その名前は『ダイナマイトウモロコシ』。誰が名付けたかはわからないが、ふざけた名前だ。だが、その名前のとおりの力を持っているので、分かりやすいのだが。


「熱線で弱っているぞ。『ソニックスラッシュ』!」


 鉄の塊のような大剣を手に、礼場は一気に間合いを詰めると、ダイナマイトウモロコシへと斬りかかる。熱線を受けてよろけたダイナマイトウモロコシの無防備な胴体に命中して、音速の衝撃波がその体を砕く。胴体がパラパラと黄色い粒を撒き散らし、地面に転がっていく。


『ソニックスラッシュ2連』


 返す刀で他のダイナマイトウモロコシを衝撃波で吹き飛ばす。アスファルトはめくれ上がり、土砂が衝撃波の通過した後に撒き散らされて、魔物たちを巻き込んで、地面に転がす。


「おっしゃ! 『アックスボンバー!』」


「『龍王衝』でトドメだ!」


 倒れたダイナマイトウモロコシたちに、仲間がチャンスと追撃をする。爆発的なエネルギーを内包した斧を振り下ろし、槍の先端に龍の形をさせたオーラを纏わせて突きを繰り出す。


 他者から見てもド派手な攻撃の数々。爆発が地面にダイナマイトウモロコシを沈めて、龍が直線上に溝を作っていく。


 トウモロコシごとき、それらの攻撃には耐えられない。一般人なら思うだろうが、礼場は倒しきっていないと知っていた。


 よろよろとよろけているが、ダイナマイトウモロコシは立ち上がってくる。


「もう一撃だ。トドメを刺すまで安心するなよ」

 

 派手なエフェクトの技であっても、魔物に対しては悔しいがダメージはたいしたことがないのだ。


「ココココトトトウ」


 まるで奏でるかのように粒を鳴らして、手のような蔓をダイナマイトウモロコシが翳す。礼場たちの周りに光球が生まれて、その輝きを増していく。


「皆、下がって! 『ホーリープロテクション』よ!」

 

 魔法が発動すると察し、待機していた仲間が素早く聖術にて立ち向かう。半透明の聖なる障壁が礼場たちを包むのと、ほぼ同時であった。光球が弾けて大爆発が起こり、周囲を吹き飛ばしていく。


 放置されていた車両はひしゃげて、鉄板のように潰れる。家屋が爆発で瓦礫へと変わり、道路に大きなクレーターが生まれて、礼場たちも爆発の衝撃波で地面を転がってしまう。魔物の名前通りに、まるでダイナマイトが爆発したかのようだった。


「かはっ、なんつー爆発だ。助かった!」


「ぐぅ………。たった一発でこれかよ。つっ」


 聖なる障壁によりダメージは防げたが、その身体は吹き飛ばされたことにより傷だらけだ。血が滲み、身体の節々が痛む。


「『閃光熱線』。さっさと片付けるわよ!」


「お、おっしゃ、『アックスボンバー』だ」


「最後だ、全力を尽くせ。追撃の『ソニックスラッシュ』!」


 他のダイナマイトウモロコシたちが魔法を使う前にと、全ての聖力を使い、攻撃を繰り出し、今度こそ全滅させるのであった。


          ◇


「つつっ、いてー。なんだよこいつら、やけに強かったな」


 肩に手を当てて、魔物たちの死骸を眺めて愚痴る。トウモロコシの魔物たちは最初の依頼で聞いた軽く倒せるような雑魚ではなかった。


「そうですね。魔法を使うとか聞いてましたか?」


「恐らくはこのトウモロコシの力は最新の情報じゃないんじゃないか? 最近の魔物はただ力任せに攻撃をしてくるんじゃなくて、ガンガン魔法を使ってくるって噂だぞ」


「…………銃が効かない敵も多くなっているとか。兵士では対抗できない魔物が以前よりも遥かに増えているらしいですよ」


「というかよぉ。俺らは聖なる障壁を使える仲間がいるから良いけど、他のパーティーはヤバいらしいぞ。鉄の鎧程度じゃ紙のように破られるとか………冒険者たちの死亡率も跳ね上がってるらしい」


「あいつらはかてーもんな。タングステンの剣でもダメージを与えることが難しいらしい」

 

 暗い表情でため息を吐く仲間たちを見て礼場もため息を吐く。重い空気だが、その噂を否定はできない。真実だと知っているからである。


「で、でも報酬も高くなってますよね? 今回の仕事も200万円ですし」


「そうだな、実乃梨。たった数時間でこれだけの稼ぎだ。割に合わないということはないさ………つっ」


 支援の聖なる術を得意とする小柄な少女の頭へとポンと手を乗せて、ズキリと走る肩の痛みに顔をしかめてしまう。見ると肩当てがなくなっており、服が破れて肉が抉れていた。気付かないうちに傷を負ってたらしい。


「礼場さんっ! 大丈夫ですか? すぐに包帯を巻きますね」


 顔面を蒼白させて、慌てて実乃梨が消毒液と包帯をリュックから取り出して応急手当をしてくれる。周りの仲間たちも大なり小なり怪我を負っている。いかに障壁で守られていても、常時かけられているわけではないので、どうしてもダメージを負ってしまうのだ。


「生傷が増えてきましたね………。そろそろ手を引くところでしょうか?」


 実乃梨が包帯を巻きながら暗い顔で呟く。実乃梨自身は後衛のためにあまり怪我を負うことはないが、日に日に前衛が傷を負うことが増えているのが心苦しいらしい。


「月に百万円を超える仕事はないからなぁ。この半年で八百万円は稼いでるだろ?」


「そうそう。俺は家にどでかい金庫を買ったよ」


「タンス貯金はヤバい。冒険者の家を狙っているやつもいるらしいぜ」


「それに、どんどん失業者増えてるもんね。この地区もほとんど放棄されているし…………。これだけ稼ぐ仕事なんかないよ」


 気楽そうに仲間は言うが、一人がぽそりと呟くと暗くなり顔をしかめる。


「確かにな………この間までこの地区は賑わっていたのに、今や静かなもんだ」


 住宅街なのに、礼場たちのいる地区はシンと静寂が支配していた。ついこの間までは、スマホが使えなくなり家で遊べなくなった子供たちが公園で遊ぶ声が響き、老人が日向ぼっこをしてのんびりとお喋りをしていた。少なくともこの住宅街は人が住んでいるという空気が流れていたが、今は廃村のような寂しい姿を見せていた。


 どんどん人類圏は少なくなっている。もしもの時はナパームでも、気化爆弾でも使って魔物を一掃すればよいと言われているが、街中でそんなものを使う時点で追い詰められている。


「………帰ろう。この後は調査員が調べて終わりだ」


「了解です。この怪我じゃ一週間は休みですね」


「だな。聖人は治りが一般人よりも遥かに早いが、それでもこれじゃ休まないと無理だ」


 包帯に滲む血を見て嘆息すると、仲間たちと帰還の途につくのだった。


 ━━━━そうして、お喋りしながら帰り道を歩いていると


「本日開店ですわ〜、レストラン『陸の家』に食べていきませんか〜?」


「開店でしゅよ〜。ぐるぐるでしゅよ〜」


 ドレスを着た変わった金髪の少女と、その場でくるくる回転する幼女がいた。後ろには元は昔ながらの喫茶店だったろう古ぼけた店がある。開店したばかりだとは思えない古さだ。


「なんだ今日開店だって? こんなところでか?」


「おいおい、この地区はどんどん人が減っているんだぜ?」


 呆れる仲間に礼場も立ち止まり、二人の姿を見る。誰もいない地区に開店とは随分ともの好きだとは思うが………理由はすぐに分かる。


「たぶん開店は数か月前に決めてたんだ。開店するにも、店のリフォームや働く人を集めたりと時間はかかる。契約してすぐにとはいかないからな。まだ、地区に人が大勢いる時に契約したんだろうよ」


「そういえばそうね。きっとお金も必死になって集めたのじゃないかしら? 可哀想………今さら開店をやめることができなかったのよ、あの子たち」


 まだまだ年若い少女と幼女。大人はいそうにない様子に同情心が湧く。特に幼女がお客を呼ぶために頑張っている姿を見て可哀想で見てられない。


「それじゃ、俺たちが最初のお客になってやるか! 皆、お腹空いてるだろ?」


「えぇ、そうですね! もうお腹が鳴り続けて辛いですし」


「食いまくってやりますか!」


 気の良い仲間たちに、おもわず笑みが漏れると、呼び込みをしている少女へと近づくと声をかける。


「5人だが大丈夫かい?」


「ようやくのお客様! どうぞですわ、オーホホホ。わたくしの呼び込みは大成功ですわね! 5人様ごあんなーい」


「グワッグワッでつ! グワッグワッ」


 高笑いする少女に、鳥の真似をして鳴きながら手をパタパタと振る可愛い幼女。だがなぜ鳥の鳴き声なのか……アヒル? どことなく不安を感じながら案内される。


 チリンとドアベルが鳴り、中は意外とシックな内装の店内に安心する。めちゃくちゃで汚い店ではと恐れていたが、新店にふさわしく綺麗だ。


「いらっしゃいませ。『陸の家』にようこそ。きっとご満足していただけると思いますよ」


 そうしてカウンターから見れる厨房にいるコック服を着た青髪の少女が柔らかな優しい笑みで出迎えてくれる。そうして後に礼場たちはこの店に入ったことを後に感謝することになるのである。

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― 新着の感想 ―
何がひどいってレベル固定制人類vsレベルアップ制魔物の戦いなんだよなぁ
>高笑いする少女に、鳥の真似をして鳴きながら手をパタパタと振る可愛い幼女。だがなぜ鳥の鳴き声なのか……アヒル? 惜しい!アヒル(家鴨)ではなくカモが来たサインだ!(^^;)
現実のクマ駆除はお金にならないのに自腹で処分費用かかったり終わってる仕事らしいですね。 ハンターも命をかける価値あるか?だな。
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