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第十話 ⑦ ユーエルスラッシュだ!



「え?」

無意識に漏れた間の抜けた声に、伸びきった隙だらけの体。ここから出来る事など無く、都合の良い事を考えながらゆっくりと動く人間の動きを目で追っていく。

「どおりゃああ!!」

リーブルの上段からの振り下ろされる魔力を纏った剣が、怪人の腕と胸を切り裂く。


胸と腕から血を流して、のたうちまわる怪人。

「く、クソ!騙しやがったな!お前実は百年の一人の天才剣士か何かだろう!?嘘をつくような卑怯なお前はダメだ!あそこの女!あいつと一対一だ!」

ミトラならば勝てると思ったのだろうか、彼女を指さし喚き散らす。

もう、誰も怒りもしない。あるのはある種の哀れみだけだ。


「おkおk!そんじゃあやろうか!」

ユーエルが指を鳴らし、ストレッチを始める。

「ち、違う!お前じゃない!隣の女だ!」

「まぁまぁ、そんな小さなこと気にしなくていいからさ」

ストレッチを終えて、いつでも始められるように構える。


それに対しアシダカ男は、即座に大量の魔力を使い辺りの地面を一気に柔らかくして中へと逃げ込む。

「クソが!あんなのとやってられるか!」

最初からわかっていた。あの黒い騎士は明かにヤバいと。だから、一対一を装い、ガキを人質にとってから逃げようと思っていたのにとんだ誤算だ。

大体、あのオスガキが天才剣士とか運が悪すぎる!そうだ、運が悪かっただけだ!でないと、オレが負けるわけないんだ!


「ミトラちゃん!あそこ!」

「りょかい!」

わかっていたのは、こちらも同じだと言わんばかりに、両手を上げるミトラの上空には巨大な火の球が浮かんでいる。

ユーエルが指さす方向に向け、両腕を振りそれを投げつける。


火球の魔法は、ゆっくりと地面にぶつかり、破壊しながら土を泡立てていく。

真っ赤に色づき液体のように揺蕩う大地から、悲鳴を放つアシダカ男が飛び出してくる。


「おかえり」

地面を好きなだけ転がった所で、真上から子供の声が聞こえたような気がした。

顔をあげて確認したい。しかし、本能が叫ぶ。見るな、すぐにその場から飛びのけと。

しかし、つい好奇心に負け首を上げてしまう。

瞬間、一筋の光が目の前を通り過ぎた。


「ユーエル・スラッシュ…我が斬怪刀に断てぬものなし!」


光の後には頭から真っすぐ縦にズレていく怪人と背中越しには、手刀を振り切り肩膝を付いたユーエルの姿があった。

アシダカ男は何が起こったかのかも理解できずに数歩進みながら爆発してマナに還っていった。


「よし!ラクチャック!!」 欠


「ユーネちゃん!」

いつものように、ルウと別れるとミトラが駆けてくる。

ユーネも合わせたように、ミトラに向かい駆け出すと、合わせたように二人とも跳び上がって、ハイタッチを交わす。

「「やったね!」」


「でも、まさかこんな所に怪人がいるなんて、ビックリしたね!」

「うん、しかもGなんて食べてるし、ホント最悪!」

「でも、なんで街じゃなくてこんな所にいたんだろう…」

「ホントに。しかも出会った時もユーネ達のことなんてどうでも良さそうだったし」


『まぁ倒したからいいだろ。さっ、日が暮れないうちに岩を削って鍛冶屋に持っていこうぜ』

追いついてきたソロリズが、早く帰りたくてうずうずしている。

きっとクッキー型が出来るのが嬉しく仕方ないのだろう。

クールに「まっいいだろ」何て言っているが、くるんと撒いた尻尾が千切れんばかり揺れている。

片やそれを聞いたミトラは顔を青くしている。

「そうだったぁ~また空を飛ぶんだった!…あのさ、帰りはなるべくゆっくり飛んでね」



     ◇



大量の岩をポッケに詰めて持って帰り、ビゼンさんをビックリさせると明日には作っておくからと言われ、ちょっと悔しそうなソロとリズだが、こればっかりは仕方がない。

また明日みんなで来よう!


取り敢えず今日は解散する事にして、それぞれ帰路につく。

今日は思いがけず戦いになってしまったが、みんなと遊べたので問題ない!

今度は何して遊ぼうかなっと考えていると、ユーネはある事を思い出す。


「あ!ごめんルウ、先に帰ってて!ユーネ忘れ物しちゃった!」

「ちょっと!何忘れ物って!」

戸惑うルウを置いて、職人通りの方へ一人走っていく。

「もう、あの子ったら。暗くなる前に帰ってくるのよぉ!」

「は~~い!」



     ◇



次の日、街のみんなが昼食を終え大きなあくびを噛みしめている中、対照的に緊張の面持ちした二人の冒険者が扉を蹴り飛ばすか勢いで冒険者ギルド(仮&借家)に転がり込んで来る。


「ギルマスはいるか!?」どうしたのかと、問いかける受け付け嬢に食い気味に問いかける。

「あ、はい、二階にいらっしゃると思いますが…」

わかった。と二人は足早に階段を上がっていく。


ノックと同時にドアを開け、目を丸くするギルマスに詰め寄っていく。

「ギルマス!大変だ…」

若い冒険者の言葉とタイミングを合わせるように、街を囲む壁の一部が轟音と共に空へ向け吹き飛んだ。




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