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第九話 ⑥ ちょっと大きい奴だ!



駄菓子屋さんを飛び出すと、店の周囲だけ吹雪が収まり上空から着物の女が下りてくる。


「皆さんこんにちは~。突然だけど~そこのイケメンさんは~私のコレクションになって貰えます~?」

真っ白な髪に肌、着ているものさえも白色の不思議な女がニヤニヤしながら気持ちの悪い事を口走る。


ユーネはなんだコイツ?思いながらも、直観的にこの変な吹雪はコイツのせいだろうと理解する。

それにしても、何処かで見た事があるような気がするんだけど、何処だったけ。

そんなユーネの心境を察したのか、すぐにルウのフォローが入る。


(ユーネ。この女、前に幹部とか言ってたヤツの一人よ)

(あーあの!今日はユーネのフォルさんにラッキースケベしに来たってわけ!?)

(あなたのフォルさんじゃないけど、天候を操れるなんてかなり強いわよ。油断しないでね)

(モチロン!どろぼう猫なんかには負けてられないんだから!)


大体、あんな胸元の開いた服を着るなんて、リスクマネうにゃむにゃが出来ていないショウコ!

今の世の中、すぐエンチョウするんだから!…なんでエンチョウ先生がなんだろう?まっいいか!とにかく、ユーネよりちょっと大きいからって調子のんなよって事よ!


難しい言葉を使って一人満足げなユーネを隠すようにフォルさんが前に出てくる。

きっと情操教育に良くない奴を子供の目に入れるのを嫌がったのだろう。

さすがはユーネ曰く駄菓子屋の天使さまだ。


「おばあちゃん!ボクが気を引くから、ユーネちゃん達を連れて逃げて!」

そう言うと、フォルさんは腰の剣を抜き胸の大きな変態に切りかかっていく。


それと同時に、ばあちゃんがユーネの手を掴み逆の方向に向かい走り出す。

「ばあちゃん、ユーネは強いから大丈夫だって!」

「何言ってるの!口をよりも足を動かして速く逃げるんだよ!」


確かに普通の大人からすれば、子供がわけのわからない事を言っているとしか受け止めないだろうし、逆に子供の発言を聞き入れ、あっさり自分だけ逃げる大人の方が稀だろう。

勿論ユーネだってそのくらい理解できるからこそ、ばあちゃんの硬い手を力任せに振りほどこうとはしない。



     ◇



白い着物の女はイケメンから繰り出される攻撃を余裕を持って躱すと、目の前を通り過ぎる剣に冷たい息を吹きかけ氷漬けにする。

視界の端には子供が逃げていくのが映っているが、もとより目の前の人間以外には興味はなく、どうでもいい。


それに今ここから逃げたところで、この雪女ハク様の吹雪によって数時間後には街共々氷の塊になるのだから。


「ねぇ、こんな野蛮な事は止めて~私と良い事しましょうよ~」

「良い事?フフ、残念だけど、そんな時間は無いと思うよ」

フォルは、ユーネ達が完全に視界から消えたのを確認すると、意味をなさなくなった剣を女に向けて投げつけ、その隙に裏路地へと飛び込む。

この迷路の様に入り組んでいる裏路地に入ってしまえば、もう簡単なお仕事ってやつだ。あとは…。


「あぁもう!急に走り出すなんて~捕まえてごらんってやりたいのかしら~?フフフ」

女は飛んでくる剣を軽くよけると、くるりと一回転しながら冷たい息を吹く。

すると、白い風が女の体をとふわりと空へと持ち上げる。

「付き合ってあげるから、すぐに捕まっちゃダメよ~」


不自然な風の音にフォルが後を振り返ると、宙を舞いながら雪女が追いかけてきているのが見える。思った以上に速い…が問題はない。

ここは、住んでいる人間さえ迷ってしまうような場所だから。


いや、余りも簡単に思惑通り動いてくれるものだから、笑ってしまいそうになる事が問題だ。流石にいきなり笑いだしたりなんてすると怪しまれてしまう。

いくらこれが個人的な八つ当たりに過ぎないと言っても、今後の事を考えれば…。

「八つ当たり?」

ふと我に返り人間くさい考えをしている自分に少し自嘲しながら、速度を少し緩める。

さて、もうすぐ人目に付かない場所に辿り着く。

そこまでちゃんと付いて着てきなよ。怪人さん。



     ◇




ばあちゃんに手を引かれていると、あれほど吹き荒れていた吹雪がピタリと止み晴れ間が覗いていく。

思わず空を眺めながら三人の足も止まる。


(ユーネ、何かおかしいわ。さっきの場所に戻った方が良さそうよ)

ユーネはコクンと頷くと、ばあちゃんの手が緩んだ隙について駆け出していく。

背後でばあちゃんが何か叫んでいるのが、ひどく心にくる。

なぜだろう。フォルさんを助けにいくのに、良い事の為なのに、悪い事をしている気分になる。


「すぐ戻ってくるから!絶対も戻ってくるから、ユーネ達を信じて!」

ばぁちゃんに体を捻って大きく手を振ると、何故か小さく微笑むルウと頷きあい、一気に加速して通ってきた道を戻っていく。


「ユーネ、裏路裏で変身してから行くわよ!」

「了解っと!」

石畳に手をつき、盛大に土煙を上げながら直角に進路を変えると、通り過ぎそうになった細い路地へと飛び込み声を合わせる!


「「変身ッ!!」」

走りながら徐々にその姿を変え、建物の隙間から覗く大空へと羽ばたいていく。



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