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第四話 ⑧´  と こぼれ話



そんなユーネ達と入れ替わるように、遺跡だった物の前では一つの影が盛大に泣き喚いている。


「何故!何故ですか!先月まで何ともなかったというのに、こんな粉々に崩れているなんて!まだ、この遺跡は探索してないんですよ?それなのに…クッ。こんな事になるくらいなら、さっさと楽しんでおくべきでした!…仕方ありません。負担も時間も大きくかかりますが、奥の手を使うしかありませんね」



     ◇



「こぼれ話」



北の果て、隕石でも落ちたかの様な巨大クレーターを中心に、草木も生えぬほど荒れ果てた大陸。人々から、死の大地と呼ばれる場所。

そんな場所の地下に、人工的な空間が蟻の巣のように張り巡らされている事を誰が想像できようか。いや、人が作ったわけでは無いのだから当然かもしれない。

そう。ここは今、世界を脅かしている怪人たちV.H.Fのアジトなのだ。


その地下施設の更に奥底で床を叩くブーツの音が響く。

音の主である黄色のコートを羽織る男は正面に望む金属製の両扉の前までくると、一度大きく呼吸をしてから軽く扉を叩く。

遠慮がちなノックが数度静かな部屋に響くと、部屋の主は読んでいた本を閉じ、ぶっきらぼうに声を上げる。


「おぅ、入っていいぞ~」

「失礼します」

黄色いコートを羽織り、顔の半分を仮面で隠した男が甲斐甲斐しく入ってくる。

ライと呼ばれていた組織の幹部だ。

彼はだらしなくソファに寝そべる赤紫の髪の女の前までくると、目線を合わせるように膝を折る。


「ユエン姉さん、例の件の報告です」

「あぁ~ん?…あ~あの兵隊が帰ってこない件か。で、どうだったよ」

ユエンと呼ばれた女は一瞬なんの事かとか思ったが、幹部のコイツがわざわざ担当する事件なんてそうそうあるわけではないので、なんとか思い出す事ができた。


だけども、別にその報告に特段の興味があるわけじゃない。

ただ命令の出どころが総帥だったので、仕方なく聞いておこうか程度の話である。

大体、事件も何もどうせちょっと強い人間とかにやられたに決まっているのだから。


あーあーめんどくせぇ。そんな気持ちを察しろと言わんばかりにユエンと呼ばれた女は、けだるそうに食べかけの「たべっ子モンスタービスケット」を一気に数個摘まんで口へと放り込む。

「はい、結論から言うとやはり倒されていました」

「やっぱりな。バリバリ。わかった。バリバリ。おけおけ。ごくろうふぁ~ん」

適当に返事をしながら、空になった口の中にもう一個ビスケットを放り込むと、もう帰っていいぞと手を振る。


「え?いや、もう少し詳しく説明しなくていいんですか?」

「ぬあんでぇ~?もごもご、もっほ。つおい奴。もごもご、送ればいいっしょ」

さらに続けてもう一個放り込む。


「そうですが、総帥に報告するとき困りませんか?やられてました!もっと強い兵隊送りました!以上です!…だと」

「…チッ!めんどくせーなー。マジで死なねぇかな。アイツ」

「ちょっと、姉さん」


「わかってるって。ほら、続き続き」

「ホント気を付けて下さいよ。一応怪人を倒している奴との接触も成功しました。正直言って強いです。我々幹部も戦闘スーツ無しじゃ苦戦は必至です」


ビスケットの箱に突っ込んだ女の手が止まる。

ただでさえその辺の怪人より数段強い幹部連中が苦戦すると言い切るのだ。

それだけで、並みの強さではないという事が分かる。

流石に興味を沸き、上体を起こしあぐらをかく。


「へぇ。お前らを本気にさせるレベルかぁ」

「はい。武力もそうですが、真に恐るべきはその知力です。最初はアホな印象を受け、舐めてしまいましたが、いつの間にか諭され言いくるめられていました。すみません」


「武力に加え知力もだと…そいつはやっかいだな。見た目は?一体どんな野郎なんだ?」

「真っ黒の全身鎧を着こんだ騎士で、声からして女だと思われます」

「…黒の全身鎧の女…ねぇ…。得物はなんだ?もしかしてデカいやつとかいわねぇよな」

「はい、その通りです。巨大な斧を使ってました。と言うか、なんでわかったんですか?」


ライは少し楽しいさと言うか、嬉しさを目に宿した姉に素朴な疑問がわく。

いつも自分勝手な姉であるから、機嫌の浮き沈みには慣れているのだが、そういうのとはちょっと違う感じがしたからだ。


「なんでもねぇよ。それより、まだこの事は総帥の耳には入らないようにしろよ。オレがタイミングを見てから報告するからよ。あ~あと双子に後から部屋に来いっていっといてくれ」

「ではすぐに向かうように伝えます」

では。と扉に向かう黄色いコートに声が掛る。


「あ~待て。あと一つ、ビスケットが無くなった」

「…わかりました。それも後で届けさせます」


ユエンはニヤリと笑うと、塩っ気を帯びた親指を満足そうに舐める。

「楽しくなりそうじゃねぇかよ」



     ◇



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