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第十八話 ⑪ 敵増援だ!


「お前の言う通り、終わりだったな」

なんてカッコつけながら、片膝を付き肩を大きく上下する。

少し呼吸を整えたところでミドルキュアを自身にかけ、傷を塞ぐ。


強かった。もう戦いたくないと思うほどに。

不意打ち以外は一撃も受けていないし、速攻で倒せはしたがギリギリだった。

背中の不意打ちもオレの腕を斬り返すという感情を表に出さずに、ただ殺すだけというなら、あの時点で勝負はついていたし、今のも相手の感情と目的を予め読んだうえでの勝利だ。

冷静になった状態でもう一度やり合うとなったら、正直勝てるか分からない。


だが、逆に言うとこれだけ強いってことは、きっとここの番人みたいなもんだったんだろう。

なんか自分でそれらしいことも言ってたし。

だが、その番人を倒したってことはもう安全ってことだ。


「まぁ怪我が治ったらゆっくり宝探しにきますかね」

希望が見えたことで気持ちを切り替え、仲間達を再び担ぎ上げ出口へと向かう。


「グぬぬ…ぽ、ぽっちゃりめ。明日からは無理にでもダイエットさせてやる!」

息も絶え絶え遺跡の外へと出れて、陽の光を浴びると生きてる実感が沸いてくる。

そうなれば愚痴の一つも溢したくなるのが人情というものだ。


二人が死なずにすんだことや溢れる解放感から大の男二人を担ぎながらも、つい顔が緩むのが自分でもわかる。

「のっぽが意見を無視してオレが行こうなんて言っちまったからな…」

まだ終わっていないと自分を律しながらなんとか橋を渡りきり顔を上げたとき、そこには絶望が待っていた。


「そんなに嬉しそうな顔をして、何かいいことがあったのか?」

「もしかして、逃げきれた。なんて思っていたわけじゃあるまい?」

そこには、口元に手を当ておかしそうに微笑む狼の頭の番人が二体いたのだ。


「三体いたってわけかよ…」

思わずでた愚痴に答えるように、担がれたままののっぽの口が開く。

「に、逃げろ…オレ達を置いて。お前だけなら、逃げられるだろう」

「バカ野郎が!起きた第一声が逃げろだと?怪我人は黙って寝てろ!」

「バカ野郎はお前だ!思い出せ、受けた依頼の事を。こいつらが村に行くかもしれないんだぞ、お前は村にこの事を知らせて守る義務があるだろう。さぁわかったら行け!!」


怒鳴り疲れたのか、激しく咳き込み再び気を失ったのっぽに、懺悔のように語りかける。


「心配すんな。村にも行かせないし、お前らを見捨てるなんてことも絶対しねぇよ…全部オレのせいだからな」


意識のない二人をおろし、戦闘態勢を取る。

そうは言ったものの敵は二体。一匹を押さえても片方がのっぽ達にこられたら詰む。


今のオレに対処できるのか?

一瞬で様々な考えが浮かぶが、どれも上手くいくイメージがつかない。

しかし、唯一チャンスなのはオレをまだ舐めていてくれているという事だろう。


「ごちゃごちゃ考えるのは止めだ!先手必勝!」

まだズキズキと痛む背中の傷を無視して全力で、足がおかしくなっても構わないほどの全力で地面を蹴り、一体の剣の間合いに入る。


「これでタイマンだ!」

怒声と共に、剣を抜きながら斬りつける。

多少のリスクは思っても一対一に持ち込みたいと思ってとった攻撃だ。

その攻撃が先ほど狼頭と同じように胴から真っ二つにした。と思った瞬間、横からきた紫の光に剣が弾かれる。


続けてくる光線を躱しながら、せっかく詰めた距離を開ける。

視界の先には、片手に天秤を揺らす狼頭の姿があった。

その天秤から再度光が放たれる。


間一髪で躱し、すぐさま天秤に鑑定スキルを掛けるが、当り前のように文字化けが並ぶだけで見れたもんじゃない。

だが、あの感じは高位の魔物が使うブレスと同じようなものに感じる。


あのブレスもどきで剣を弾いたのか…

ということは、遠距離から攻撃にも注意しないきゃいけなくったわけか。


いや、剣を弾く程度の威力だ。当たっても我慢すればいい!

今は弱きになるな!攻撃あるのみだ!

気合を入れ、駆け出そうとするが、次の瞬間地面が視界一杯に広がっていた。


事態を把握する前に右腕に激痛が走り、手の中の剣がポロリと落ちる。

意味が分からず目を向けると真っ赤な穴がこちらを見返していた。


まさか…さっきの光で攻撃されたのか!?

威力を見誤っていたのもそうだが、まったく見えなかったことに背筋にイヤな汗が滲む。


「いいのか?ぼっとしていて?」

「ぐわっ!」

今度は左腕に激痛が走る。

続けて、胴、足と全身を次々に貫かれていく。


痛みに体が動かない。

膝の力が抜け、そのままモノのように地面に倒れ込む。

だが、仲間との約束したのだ。意識を保つだけで一杯一杯の状況だが、無理矢理体を支え四つん這いに留まる。


「クソネズミに相応しい姿になったな。だが、これでちょろちょろ動けはしまい」

「そうだな。では、さっきのお返しといこうか」

片方が特に急ぐわけでも無く淡々と歩みよってくる。


痛みに痺れ、動かない足を引き摺り距離を取ろうとするが、脇腹を蹴り上げれ胃の中の物が吐き出される。


「じゃあ、私の受けた屈辱を少しでも味わってくれ」

一匹が歯茎をむき出しにしながら、愉悦を隠そうともせずに槍を振り上げる。


「クッソおおお!!!」



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