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第十八話 ➉ 服従の証だ!


「…私は包む者。そうだな…目下、貴様らのような王の寝所に土足で入り込んでくるクソ虫をグチャグチャにして駆除しようと思っているところだ」

「クソ虫ってお前…いや、まぁそうだな、知らなかったとはいえ勝手に入って悪かった。すぐに出ていくよ」

「…何を言っている?罪を償わずに出て行けるわけないだろう」


「なら…どうしたら許して見逃してくれる?」

「…諦めろ。どのみちこの腕の礼もしたいのだ。見逃すわけがない。しかし、貴様ら遺体は私の名に懸けて丁寧に処理してやろう。だから、無駄な抵抗はするな…よっ!」


包む者は何処からか取り出した槍を片手に突っ込んでくる。

キョウは軽く舌打ちをしながら、後に転がるのっぽに目をやる。

なんとか傷口も塞がってくれたようだ。

浅いが呼吸もある。


「まぁ上等だろ!今は贅沢は敵だからな!」

にやける顔の横を真っすぐ突きだされた穂先が頬を掠めていく。

言わずもがな前に出して突くということは、次の攻撃につなげる為に、手元に引き付けなければならない。


若く、まだ経験の浅いキョウであっても、そんな隙を逃すことはない。

「おおらあああ!!」

頬が裂かれる痛みなど無かったかのように、間合いを詰めて拳を狼の頬にめり込ませる。

敵はバキバキと割れる様な音を立てて、遠くの鉄の箱へと突き刺さる。


「舐めすぎだっつうの!」

これ以上ないほどの最高のカウンターが決まったと拳に残る手応えが伝えてくる。

が…嫌な予感が拭いきれない。


ぶっ飛んでいった謎の敵に「鑑定スキル」を使い相手の情報を得ようとしたが、目の前に現れた半透明のプレートには「薶?ュ玲筝%訝」とあの子達と同じように完全に文字化けしていて読めたもんじゃなかった。

「まただと?…これは流石におかしいだろ。大体こんな結果になるってことは…」


いや、「スキル」とは何なのか完璧に理解しているわけではないオレが言うのもおかしいが、これはかなりおかしいことだと、思う。


「鑑定スキル」なんて呼ばれてはいるが、そもそも「鑑定」とは自分の持つ知識と経験によって「判定」を行うものだ。

しかしこの「スキル」は、初めて見る全く知らないようなモノまで看破して情報が表示されてきた。

まるで、どこかにある情報源からぶっこ抜いてくるように…。


そんな出鱈目なチートスキルをもって、分からないと言うことはこいつらは世界の理から外れた存在…なのかもしれない。

それは、普通に考えてまともではないということだ。


だから、逃げる!

もしかすると戦えば勝てるかもしれないが、個人的な勝利よりも仲間の命の方が百倍大事だからな!

急いでのっぽを拾い、ぽっちゃりのところへ向かい彼も反対の肩へ担ぎ上げると、急いでオレンジの廊下を駆け、縦穴を蹴りつけて上へと昇っていく。


なんとか一階へと戻りロビーを抜け、出口へ向かおうとしたとき背中に焼ける様な強烈な痛みが突き抜ける。

思わず手放してしまった二人がスローモーションのように飛んでいくのが見える。


「クッソ!あと少しのとこで!」

瞬時に斬られたことを察して、無様に転がりながら漂う殺気から距離をとる。

だが、勢いのまま立ち上がろうとした足がもつれる。


コンバットハイで痛みに鈍くなっているだけで、認識している以上にダメージがデカいということを思い知らされた所で、牙をむき出しにした狼頭から追撃が振り下ろされる。


肩口、二の腕、手首と切り裂かれながらも、なんとか追撃をしのぐ。

飛び散る赤い血の一滴一滴が認識できるほどのギリギリの緊張感の中で、紙一重で通り過ぎていく槍の先を見ながらふと疑問が沸いてくる…なんで、自分はこんなにも躱せているのだろうかと。


そんなことを考えているとドンと鈍い衝撃が体に響き、自分が壁に追い詰められたことに気が付く。


「終わりだ」

狼頭の口から背筋を震わせるような冷徹な声が静かに部屋へと広がっていく。

そこからは生きているようで、生きていない精巧な人形のような印象を受けた。


「へへ。どうだろうな」

追い詰められているくせにニヤリと笑うオレに、狼頭は槍を正面に構え真っすぐ突っ込んでくる。


こちらを向いた槍の穂先が急に下降し、床の瓦礫を弾く。

正確にオレの顔面を穿とうとするそれを剣で切り落とすと、伸びきった腕を目掛けて横から槍が振り下ろされる。


「さっきの仕返しのつもりか?口元が緩んでいるぞ」


すぐさま狙われて方の腕を剣から放し槍をやり過ごすと、そのまま突き出た顎に下から強烈な一撃をくれてやる。

完全に視界の外からきた一撃に顎の骨は砕けちり、犬歯が折れてぐるぐると飛んでいく。


「犬が無防備に腹を見せるのは、服従の証だっけか?」

伸びきって地面から離れようとする体を回転しながら真横からの一閃。

胴から真っ二つに分かれたそれは、まるで人形のようにゴトリと硬質な音を立てて床に転がり動かなくなった。

充分死んだことを見届けてから、血を払うようなふりをしながら剣を鞘に納める。



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