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第十八話 ⑨ 時間稼ぎだ!


「これでひゃ~く!なんか今日は絶好調なんだよね~」

自信満々で宣言したユーネがスフィンクスをぶっ飛ばした拳をそのまま空に突き付ける。

勿論だが、ユーネが百まで数えられるのかというと、少し怪しいのでたぶん百ぐらいという事だが。


幸い村の人達は村長さんの大きな家に纏まって避難してくれていたので、その周りだけで戦っていればよくて意外と早くやっつけることが出来た。

だけど、こいつらから元の時代に帰る情報を聞き出さないといけなかったと、今更ながら思い出して、そばに転がる変な狼の首を掴み千切れんばかりに振り回す。


「おい!おいって!お前ら遺跡男なんだろ!帰る方法を教えろって!」

しかし、その目にはもう光はなく。だらしなく舌を垂らすだけだった。

「あ~しまった~!またルウに怒られちゃうって!」


「そんな心配をする必要なない。子供は子供らしく泣き喚いて死ぬがいい」

不気味な声と共に大きな影がユーネを覆う。

風を切り空を滑空しながら現れたのは今までの比ではないほど大きなスフィンクスだった。


その辺の民家ほどもある巨大なスフィンクスが翼を羽ばたかせると、舞い散った羽根が小さなスフィンクスへと変わり次々に地面に下りたっていく。

ユーネの目の前には折角、片付けたのに拘らずあっという間に先ほどと同じだけの群れがそこに現れてしまう。


「人間の子供がどうしてそこまでの強さを有しているのかはわからないが…結局のところ無駄だということを教えてやろう」

更に大きなスフィンクスは太陽を覆い隠すように翼を広げ、小さなスフィンクスを増やしていく。


これは、正直ちょっと嬉しい。

表には出さないが、一晩経っても約束を守れていないこと、仇を打てていないことにイライラが止まらない。

止まらなかったのだが、今は確実にアイツと関係しているであろうこいつらが来てくれたことに、ふつふつと怒りを含んだ喜びが沸いてくる。


さっさと、居場所を吐かせないとね。

目に怪しい光が浮かぶと、それを諫めるように心地の良い声が聞こえてくる。


「あらあら、やっとお出ましってところかしらね」

「ルウ!」

後から優雅に歩いて来る黒猫に思わず声が弾む。

別になんてことないけど、やっぱり安心するんだよね。


「寂しかった?」

「はぁ?違うし!ルウだけサボってズルいって思ってたの!」

誤魔化すように笑うルウを置いて、近くの敵をぶん殴る。


「こんなに一杯いるし、変身して一気に終わらせちゃうよ!ほら早く!」

「わかったわよ。じゃあ結婚式もあるし最初から全開でいきましょ!」


二人を中心に激しく黒い魔力が光を放ち渦巻いていく。



     ◇



遺跡の地下深く。空気すらも動くことなく何年も何年も静かさが満ちていた空間を、今は怒りと血の臭いが満たしている。


「てっめぇぇぇ!!!」

アキラが声を張り上げ怒りを放った直後、瞬間移動でもしたかのように一瞬で謎の敵の横へと移動し剣を振り下ろす。

だが勢いのまま振られた剣は、無機質な床を切り裂くだけに留まる。


「ちっ!!」

謎の敵は瞬時にのっぽに刺さっていた腕を抜き、薄皮一枚の所で躱したのだ。

敵がそのままバク転を繰り返し部屋の端まで離れていったおかげで確認できたその姿は、人の様でそうではなかった。


首から下は確かに人間の形をしてはいるが、そこから上はのっぺりとした狼型の頭部が乗っているのだ。

それにその全身にはぴったりとした黒いゴムのようなものが張り付いており、主張の激しい肢体はまるで美術品のような艶めかしい美しさを放っている。


だが、当然だが今はそんなことどうでもいい。

敵が距離をとったことで、視線はそのままにすかさず二人へと回復魔法を放つ。


「ミドルキュア!!」

二人は緑の光に包まれ、みるみる傷口が塞がっていく。

しかし、キョウの顔は焦り染まったまま動かない。

中級程度の魔法では傷口を塞いで血を止めるぐらいで精一杯なのだ。

このままでは、ぽっちゃりはまだしも体の真ん中に穴が開いているのっぽはヤバい。


夢の中では賢者だぞ!などどのたまっているだけあって、保有する膨大な魔力を使いオバーフロー気味に回復魔法をかけていく。


だが、当然ながら狼頭の敵も黙って見ていてくれるわけじゃない。

回復を遮るように、距離を詰め拳や蹴りを放ってくる。

攻撃を仕掛けられる度に、回復が中断してしまい中々のっぽの血が止まってくれない。


いち早く立ち上がったぽっちゃりが手を貸そうと脂汗を流しながら踏み出すが、そんな状態で出来る事は無く、顔面に拳を受け吹き飛んでいってしまう。


そこに出来た隙を見逃さず剣をふり、伸びたきった腕を肘から切り落とす。

敵は再び距離を取り、欠けた右腕を見ながらふんと鼻を鳴らす。


「いい加減にしろよてめぇ!いきなり攻撃してきやがって何なんのつもりだ!?名前ぐらい名乗りやがれ!」

などど、どうでもいいことをいかにもっぽく叫ぶ。


いや本当に名前も目的も気になるし、他にもこいつがユーネが言っていた怪人なのかもしれないとか、どこから現れて、なんでスキルに反応しなかったか?など聞きたいことは山ほどあるが、今は会話ができるのであれば会話をしたい。




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