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第十七話 23 友よ!


「か、覚悟?覚悟だと!大事な遺跡を壊したことを大目に見てやろうと思ったがやめだ!覚悟はお前がするんだよぉぉぉ!!!」

潰れた肩を無理矢理動かし殴りかかる。

だが、そんな肩を支点にした振られるだけのパンチなんて当たるわけがない。


完全に見切ったユーエルは、ボクサーのように上半身を少し後に倒すだけでそれを避ける。

しかし次の瞬間赤い液体がバイザーを濡らす。

潰れた肩から流れ落ちる血だ。

古典的な手ではあるが、頭に血が登っていたユーエルはもろにその効果を受けてしまった。


「覚悟と言ったな!だったら見せてやるよオレの覚悟をよぉ!」

走り出した遺跡男の体が真っ赤に色付き、光が溢れ出す。

やかんのように蒸気を一気に立ち昇らせると、三つの腕を大きくひろげ抱きついてくる。


連想されるのは自身の命を攻撃へと転化する自爆だ。

ドクロのビームや肉体を使った攻撃なわけでも無く、目が見えていない状態でいきなりこんなこんな行動に出られれば、普通躱しようがない。


しかも、いくら万全の状態ではないとはいえ、マナの集合体である怪人が至近距離で爆発するのだ。

ユーエルの命を脅かすのには充分すぎる。


しかし、一見覚悟が示されてはいるように見えるそこには、何処か余裕を感じさせる空気があり余計に不安を煽る。

まるで、自分だけは助かるかのような確信をもっているようなかんじだ。


そんな気味の悪い雰囲気を漂わせた怪人が、命を燃やそうと迫りくる。

だがそんな窮地にありつつも、黒騎士は、慌てふためくどころか血を拭うこともしない。

ただただ静かに立っているだけだ。


その態度に遺跡男の表情に変化が起こる。

忘れていたのだ。先ほどやり合った時のことを。

ユーエルの間合いに入り込んだところで余裕の態度は焦りへと変わる。


「そうだ!こいつは!」

「さっき教えたのにもう忘れたのかよ。まぁでもこの距離で声を上げて真っすぐ突っ込んでくる馬鹿にはどっちでも一緒か…」


これまで幾多の闘いで間合いの制しあいを経験してきたユーエルにとって、この程度のこと見えていようがいまいがどうってことはない。

もちろん、相手がお父さんだったり…あひる男であったりと強敵となれば油断は出来ないが。

今突っ込んで来ているのは、戦闘が得意ではただの怪人だ。

万に一つもない!


「これで終わりだ!あいつの…友達の仇、ここで打たせてもらう!」

「あああああ!!ややや、やめ!やめめめ」

明らかに呂律が回っていない。今の自身の現状を悟ってしまったのだろう。

そう。抱きつこうと両腕を広げていると言うことは、つまり全身無防備なのだ。

どこをどう攻撃されてもガードなど間に合うはずもなく、好きなように殴ってくださいと言っているようなものだからだ。


呼吸を合わせるように黒い拳が鋭利な角度で両手を広げた遺跡男のみぞおちに突き刺さる。

嗚咽と共に口から何かが吐き出される間もなく、上から逆の拳が降ってくる。

背骨が軋ませながら地面にぶつかり大きく跳ねると、更に上からの攻撃が続く。


しかし、そこは腐っても怪人。残った三本の手を使いなんとかしようともがく。

「…お前は注意を逸らすのが上手いみたいけど、もうそんな隙を与えて貰えると思うなよ!来い!バイトオフザソウル!」


悪あがきを行う遺跡男を空へと蹴り上げる。

手足をバタつかせながら登っていく敵に向かい腰だめに構えると大斧に怒りを乗せる。


「コイツで終わりだ!ワールドエンド!クラッぁぁぁぁシュ!!」

放たれた牙は、その名の通り世界を噛み千切るように悔しそうな表情を浮かべる怪人を中心から真っ二つにすると、そのまま空へと昇っていく。


「友よ!仇はとったぞ!」一欠

拳の中に掴んでいたものを解放するように、腕をあげ手を広げると掴んでいたあひる男のマナが解き放たれていったような気がした。


そんな感傷に浸っていたユーネの背中越しに違和感が響いてくる。

特に気にしていなかったけど、いつものなら怪人の倒した合図ともいうべき爆発音が聞こえてくるはずなのだ。

だが、代りに聞こえてきたのは硬い金属とぶつかったような異音なのだ。


慌てて振り返った先にあったのは、渦まく雲を割き大きな逆さのピラミッドが降りてくる異様な光景だった。


「なんだよ。あれ?」



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