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第十七話 22 オレの本当の名前はだ!


「おい黒鳥男!大丈夫か!?なんであんな無茶しやがったんだ!」

「…違う」

「何がだ!?」

「違うんだ。ずっと言おうと思っていたが…オレは黒鳥男ではないだ」

「なっ…に!?」


思いもよらない衝撃の言葉が飛び出してくる。

確かに今の姿は、焦げてボロボロだが透き通るほど真っ白で綺麗だ。

やはり最初の直感通りだったかと納得するが、一応、念の為、聞いてみることにする。

また間違えたりしたら失礼だからね!


「なら…やっぱりただの変態だったと言うのか…」

「やっぱりってなんだ!オレの名はアヒル男だ!!」

「アヒル?ああ…そう。まぁ自分でそう思うならそうなんじゃないの。知らんけど」

何故かユーネの方が上から目線で許容してあげますよ感を漂わせ始める。


「そんなことより、なんであんな無茶したんだ!お前だけでも逃げればよかっただろ!」

名前うんぬんなんかよりも、痛々しい怪我が目に入ると何故か非常に腹が立ってくる。

自分がやられたわけじゃないのにだ。


「…友よ。オレはな。こんな感じだから多くの人間や仲間から煙らがられているのを自覚している。だがそれでもオレは正論パンチを放ち続ける。なぜなら心の中の正義なんてものはあっという間に霞んで見えなくなってしまうからだ。友も知っているじゃないか?正しいことをやっていても否定され、蔑まされることがあることを」

ユーエルの答え待たずにアヒル男は続ける。

その指先からは、小さな光の粒子が立ち昇り始めている。

ユーエルはとっさに光を留めるようにその手を両手で包む。


「正しい行いが損をする世の中で一体誰が正しく生きようとするのか?そんな世界を私は認めたくない。そんな悶々とした気持ちを持て余してしている時に友のことを知ったよ。すぐにわかり合えると思った。敵同士なのにだ。そんな初めて出来た友の大事なものを守りたいと思った。それが逃げなかった理由だ」


「お前…そんなことの為に自分の命を…」

「そんなことではないさ。見えにくくて、すぐに消えてしまうものだとしても、私はいつだって絶対正義を貫くソードオブジャスティスなのだからな…ゴホッゴホッ」

口から大量の血が吐き出される。

気丈に振舞っても焼け焦げたその体からは、今にも命の灯が消えゆこうとしている。


「まぁだが…今日は少し…張りきりすぎて疲れたな…。すまないが、後始末をお願いできないだろうか?あいつがまだ残っているんだ」

「はぁ…馬鹿かよ。なに言ってんだ。友達ならなぁ遠慮なんかしてんじゃねーよ!素直に頼んだぞ!って一言いえばいいだろ!」


「……フフ。そうだな。ありが…とう。友よ…あとは頼んだ…ぞ」

一瞬目を丸くしたジャスティスは嬉しそうに目を細めて笑うと、赤い光へなり吹き抜ける風にほどけていく。


「おう!任せておけっての。相棒!だから、安心して休んどけ!」

目の前で舞う光をグッと握りしめると、高まる感情に比例してバイザーにヒビが走る。

漏れ出る激しい怒りをはらんだ魔力は、大気を振るわせ、大地を揺らす。


それを感じた遺跡男が異様な魔力の発生源へと振り返る。

召喚した建物が全て壊されはしたが、同時にアヒル男を始末できたことに概ねスッキリできていたのに一瞬で反転して焦りの感情が沸き立ち始める。


「な、な、なんだ、この異様な魔力は!!」

全身から噴き出る油汗と震えが止まらない。

それは生まれて初めて遭遇するものだが、確実に知っているものだ。

そう。「死」だ。

黒騎士から発せられる黒きモヤは、触れれば即座に命を吸わんとする死神の鎌だ。


二体の怪人は揃って空へと飛び上がろうとした瞬間、鼻の先を焦がしながら魔力の刃が通り過ぎていく。

鼻孔に立ち昇る肉の焦げる臭いなど気にも留めずに、恐る恐る飛んできた先へと眼球を動かすと離れた場所に黒く禍々しい者が宙に浮いているのが見える。


先ほどまでとは明らかに異質な魔力に目が離せない。

そのせいでバイザーに走るヒビから覗く光と目が合ってしまう。


「ヒュッ」

思わず喉が鳴る。全身に鳥肌がはしる。こっちに来る!

「いや、もういい。逃げろ!逃げろ!戦う必要はない!」


二体ともさっきまでの怒りはどこにいったのかと思うほど恐怖に飲み込まれてしまっている。

一貫性のない言動だが、自分に有利なときは強気で、不利なときは弱気になるなんて、人間の悪性の方が強く出ている怪人としては当たり前なのかもしれない。

いや、動物系怪人であれば、逃げるが勝ちの本能的思考の方が強く出ていただろうから、人間がどうこうではないのかもしれない。


結局のところ原因なんてどうでもよく、重要なのは感情を一瞬で反転させるほどのモノがそこに表れたということだ。


背を向け駆け出そうとした遺跡男の足首に鋭い痛みが走る。

何故だか分からないが、鋭い牙に噛まれたと認識して思わず足元を見る。


「は?」

思考が追いつかない中、遺跡男の視界の隅でスローモーションのように舞う自身の足と、もう一人の自分が二つにわかれマナに還っていくのが見えた。


「おいおい、散々好き勝手やっておいて今更どこ行こうってのさ。ちゃんと最後までやりきっていこうぜ。な?」

いつの間にか隣に立つ黒騎士が肩を強く掴む。

柔らかな口調とは裏腹に、掴かまれた肩がぎりぎりと軋み嫌な音を立て始める。

ユーエルそのまま一気に力を籠め遺跡男の肩を握りつぶすと、まるでゴミでも捨てるように遺跡男ごと放る。


「絶対に逃がしはしないからな。お前もここで覚悟を決めてかかってこい!」

激痛に呻く怪人を見下ろしながら怒りを解き放つ。

ここで決着をつけてやるともう決めているのだ。




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