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第十七話 21 幹部候補だ!


「さぁ早くその手を離せ!ソードオブジャスティスよ!怪人のお前が人間なんかを守ってやる必要はないんだぞ!」

「ひ、必要とか不必要とか、自分の信念に対して理屈はいらないって事は、お前自身がよくわかっているんじゃないのか!?ミステリーハンターよ!」


落ちてくる巨大な質量に対し、体中から血を吹き出しながら懸命に耐える羽の生えた怪人が吼える。


「ならばその信念の為に自ら無駄死にをするというのか!?」

「無駄死にか…それは自身の勝利を前提とした都合の良いお思い込みという事を教えてやろう!三尺玉男程度にも苦戦して、こんな塔にすら手こずるオレが何故、幹部候補ナンバーワンと呼ばれるのかと共に!」


残った力を振り絞り思いっ切り塔を押し返し、後方へと下がり僅かな隙を作る。

その時間を使い魔力を暴走させたジャスティスの灰色の体がひび割れ、中から白い光が漏れ出す。


全身に千切れるような激痛が走りながら、魔力が行き渡り倍増していくのがわかる。

こんな怪我を負った状態からでも全力を出すことが出来るのはあの薬のおかげだろうと改めて思う。

まぁ代わりの副作用が恐いところだが、今はただただ感謝して街を守ることで恩を返そう。


「これがぁ!オレのぉ!本当の姿だぁぁ!!」

その光が眩く辺りを照らしつくした後には、純白という言葉を体現したかのような美しい怪人が羽ばたいていた。


淡く光を放つその姿はこれ以上ないほど闇夜に映え、まるで神の作りたもうた芸術品のようだ。

それを証明するように遺跡以外まったく興味のない遺跡男ですら、思わず跪いてしまいそうになるほどに神々しさを放なたれている。


「美しい…そ、それが、ソードオブジャスティスの…いや「怪人あひる男」の真の姿だと言うのか…まさかこのオレが遺跡以外に惹きつけられてしまうなんて…」


遺跡男が硬く拳を握っている間に、あひる男は大きな翼を優雅に開げ、抜けおちた羽が煌めく星のように瞬き舞い散る。

掛け声と共に、再び塔にとりつくと隕石のように赤く染まった三万トンをこえる超重量を押し返し、跳ね除けていく。


しかし、そう簡単に解決するわけも無い。

何故なら遺跡男もいつまでも惚けているわけではないのだから。

すぐに我に返り自身の心内に気が付くと、すぐさま攻撃を再開したのだ。


「…クソが!今日は人生最悪の日だ!黒騎士といいこの遺跡男の大事なものを簡単に踏みにじられてしまった」

二体の遺跡男がもつドクロから息をつく暇なく光の矢が放たれ、肉が焼ける臭いと共にあひる男の背を打ち続ける。


いくら覚醒した状態といえども、無防備な背中へ攻撃を受ければ当然ダメージは入る。

焼け付く痛みに思わず力が抜けた刹那の時間で、重さが増したのではないかと思ってしまうほど加速する。

ついにはあひる男ごと押しつぶすように雲を突き抜け、その質量で街を壊し崩し巻き上げ始める。


更には塔が纏う熱により火の手も上がり始め、徐々に赤黒く染まっていく様子は地獄の入り口を思わせる。


アヒル男は奥歯を噛みしめ苦悶が漏れるのを防ぎながら思う。

黒騎士も選択をしたように、自分だって両方同時とはいかないと。

選択するのだ。正面か背中か…いや、そんなのは始めから決まっていた。

背中には友がいるじゃないか。私はただ前だけをむいて自身のやるべきことをやればいい!


「うおおおお!!!!」

雄たけびを上げながら、更に内からあふれ出る魔力を外へと放出して塔を押し返していく。

「なんだ…その出鱈目な力は。それが幹部候補の所以…だが、そんな力を使えば!」

驚愕しおののくミステリーハンターをよそに、あひる男は勢いを増す。

その体からは少しづつ光が漏れ始める。


「チッ!時間的にこれ以上構わなくてもいいんだが!ここまで虚仮にされて放っておくわけにはいかねぇ!街も友人も大切なものを全部失くして悔しさに塗れさせてやる!」

遺跡男はドクロの攻撃を止めると空に向け魔力を打ち出していく。

その先にはもう見慣れた魔法陣が次々に現れ、“びる”が顔をだす。

びる達は意思を持って押し出すように空の塔の後方へとぶつかっていく。


「オラ!まだまだいくぞ!最後にその本気とやらをぶっ潰してスッキリさせてもらうからな!」

遺跡男の気合と共に広範囲に雨のように降り注ぎ始める。

流石にこれに対して一人では、いやユーエルが隣にいてもこの数をどうにかするのは難しいだろう。

勝利を確信したように響く笑い声をかき消すように、大声を上げる。


「友の住む街をこれ以上好きにはさせはせん!」

両手両足を大の字に大きく広げ魔力を解き放つ。

すると背中で輝く純白の羽が太陽が爆発したのかと思うほどの輝きが放ち、空を覆ってしまうほどに大きく大きく広がっていく。


「うおおおおお!!!」

降り注ぐ異物の全ては輝く羽に触れるとボロボロと崩れ、砂粒程に小さくなると風に乗って流れて消えていく。

もちろん、空の塔とて例外ではない。

サラサラとほのかな美しさまで纏いながら、夜の空へと消えてしまった。


「どうだ見たか…友よ…」

シンと静まり返った空の上でアヒル男はうっすら笑みを浮かべ、満足気な表情を浮かべる。次の瞬間スッと音もなく消えた羽に驚くことも抵抗することもなく、真っ逆さまに落ちる。

石畳を陥没させ、大の字で空を見上げるアヒル男に瓦礫から抜け出してきたユーエルが駆け寄る。




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