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第十七話 21 びるってなんだ?


「リズッッッ!!!」

ソロの声が響く中、ユーエルも一瞬遅れはしたものの飛び出していた。

ミスった!勝手安全だろうと決めつけと思い込みをしていたのは自分だった。

通りすぎる景色がやけにスローに見える。


あああ!遅い!遅い!遅い!なんでなの?いつも街を一周するなんてあっという間なのに、今はなんでこんなに進まないのよ!!


「フハハハハ!そっちを選択したか!だが、こっちはどうするつもりなんだ?」

背中越しに怪人の勝ち誇った笑い声が聞こえる。

遥か上空から降ってくる空の塔のプレッシャーも強くなっている。あちらももう時間がない。

だが、今にもあの邪悪な紫の光はリズを貫こうとしているのだ。

今は友達のことに集中するだけだ!後のことは後から考えるしかない!


そんなユーエルと一筋の白い光が交差する。

更に自分に対する苛立ちが募る。

だけど、どんなに唇を噛んでも今は任せるしかないのだ。


「間っに!合えぇぇぇ!!!」

自身への苛立ちを吐き出すようにユーエルが吠えながら右手を懸命に伸ばす。





建物というにはあまりに異質な真四角な建物。

なんでも“びる”という物らしい。

こんな建物に人が入る様はまるで物の様だな。と、どうでもいい事を考えながら、目の前に迫るそれに両手をつき、くすんだ灰色をした羽を広げる。


「おらああ!!」

クールキャラだったはずなのにこんな荒々しい声があげることに自身でも驚きながら、最後の“びる”を街の外へと押し出していく。

「これも友の影響だな」


さっきまで次々と召喚されていたのも遂に今ので最後を迎え、街を囲む壁の外で大きな地響きをあげる。

きれいに整頓しようとしたわけではないので、雑多の散らかってはいるが一応は石で出来ているようなので、新しい市壁にでも要塞にでも作り変えてしまえばいいだろう。


肩で息をしながら屋根の上に降り立ち、街の方へ目を向ける。

そこには手当をしてくれた黒髪の男と小さな子供たちが、何やら液体を振りまいているのが見えた。

暴れ狂う人間たちは、液体を掛けられると意識を失いその場に倒れていく。

良い調子だが、あれではまだまだ時間がかかるだろう。


今度は公園へと顔を向ける。

こちらはミステリーハンターの召喚が止まったことで、友が召喚もさせない程優勢なのはわかっている。

絶え間なく幾つもの紫の光が明滅している。

かなり焦っているのだろう。遠くから見ているだけで、冷静さを欠いている攻撃なのが手に取るようだ。


これならもう暫くは問題ないだろう。こちらも少し休めるな。

腰を下ろし大きく息をしてから、折れているにも関わらず大した痛みのない足へ目を向ける。

友の父親という人物がくれた不思議な薬はマナを急激に活性化させるらしく痛みを押さえてくれる。

飲む前に酷くキツイ副作用が表れると忠告されたが、今を乗り切らないとそれどころではないのだから、特に考えることなく了承した。


この調子だと、もう少し休めば黒騎士の援護に向かえると思っていたんだがな…。

大量の魔力の反応にため息まじりに空を見上げると、“びる”とは比べ物にならない程の白い塔が召喚されているところだった。

あれだけならば黒騎士だけでどうにかなるだろうが、次に発せられた紫の光が街に向かって伸びて行く。


説明されずとも、あれが街にいる人間を狙ったものだという事は、簡単にわかった。

それを食い止めようと、黒騎士が動くことも。


「フ。少しは休めるかと思ったんだが、友の為だ。仕方がない」

ソードオブジャスティスはくすんだ灰色の体に鞭打ち、両羽を大きく広げる。



     ◇



「おおおおりゃああ!!!」

腕のどこかに当たればいい!

すぐ傍までソロもきている。直撃さえ防げれば何とかなるはずだ!

伸ばした右腕が焼ける様な痛みが走り籠手が溶けて消えていく、だがそんな状況でも思わずにやけてしまう。

間に合ったのだ。チラリと見えたリズは無事のようだった。すくなからず、大きな怪我は負っているような様子はなかった。


ほんの少し気が抜けてしまった事もあって受け身も取れずにそのままの勢いで幾つもの建物を突き抜けていく。

立ち上がろうとするも半壊した建物は大きな音を立てながらユーエルの上へと崩れ落ちてくる。


すぐに上空へと向かおうと思っていたのに、思わぬ時間を取られる事になってしまった。

そんな中、苦悶に満ちた声が上から響いてくる。

目を向けたそこには、空気との摩擦で真っ赤に燃える塔を支える羽の生えた怪人と、その背中に光を放っているまた別の怪人の姿があった。




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