第十七話 ⑳ 計画通りだ!
驚くユーエルだが、だからと言って手加減して貰えるわけもなく次々と攻撃的な光が襲い来る。
同時に繰り出される八本の攻撃はユーエルを回避に専念させる。
「「この後の予定に支障がでるほどに魔力を使わせたのだ。あっさり死んでくれるなよ!」」
夜の公園に反響する声に、考え巡らせる。
あの幹部とか言っていた双子を凌駕するほど寸分たがわぬ連携攻撃。
これは流石にさっきまでみたいに舐プをやってるわけにはいかない。
それなりには、マジでいかせてもらう!
ユーエルの足元が爆発する。
実際には爆発したわけじゃないのだが、蹴った勢いに地面の方が耐えられず爆ぜたのだ。
「また目くらましか!だが、今度は二つの目がある!さっきのようにはいかない!」
「でもさ。反応出来なかったら意味なくない?」
正面。真っすぐに正面を見ていた片方の遺跡男の目の前にいつの間にか黒騎士の姿があった。
「いつから…グエェェ!!」
「いつから?知ると絶望しちゃうよ?」
落ちて行く敵を見つめる残像の口が開くと、既に本体はもう一人の遺跡男を上から殴り飛ばす最中だった。
同じところに揃って落とされた二体が揃って独り言のように呟く。
「私はあのジャスティスと互角に戦えたんだぞ!それなのに何故こうまで差があるんだ!」
「本気で言ってんの?どんなおべっか貰ったかはしらないけど、よく考えてみなよ。あんだけ大怪我した相手に勝ちを取れなかったって時点で互角どころか負けってことでしょうが」
「バカな!じゃあ気を使われたというのか?オレが!」
「じゃないの?なんか仲間意識強そうだったし」
「この偉大な遺跡の申し子たるオレが、世界を統治するべき力をもったオレがただの正義馬鹿に気を使われただなんて認められるかぁぁぁ!」
八本の腕がユーエルに向け一斉に魔力を放つ。
が、そんな直線的な攻撃が当たるはずもなく、かすりもせずに雲を突き抜け空へと消えていく。
「気がすんだ?じゃあ、ここいらでお終いにするよ?」
「すむわけ無いだろ!!命令なんて関係ない!もう全部ぶっ壊してしまわないと収まらねぇよ!」
「ほ~ん。じゃあどうすんのか見せてみなよ」
瞬殺されてしまうであろうこの状態にも拘わらず、二体の怪人は勝ち誇ったようにニヤリと笑う。
ユーエルの頭上から異様な気配が降ってくる。
慌てて振り返ると、いつの間にか夜空に浮かぶ厚い雲に穴が開き、星々と同じ高さに魔法陣が光を放っていた。
遥か彼方で存在を示すそれは、“びる”と同じ程の大きさに見えるがあれだけ遠くにありながら同じ大きさに見えるというのはそれだけ馬鹿デカいと言うことだ。
それがあんなに高い所から落ちてくるのだ。
街どころか辺り一体全てが消滅してしまうだろうと容易く想像がついてしまった。
大きく舌打ちしてさっきのあれは攻撃じゃなかったのかとわかったところで、今更遅い。
「今オレができる最強召喚、空の塔だ!」
じわりと巨大な魔法陣から巨大な白い塔が顔を出し始める。
一瞬、自分はこのまま怪人の相手をして“びる”と同じようにあっちは黒鳥男に任せるかと思う。
しかし、顔をだしたあの先端の大きさだけで、今のあいつでは街の外に押し出すことも難しいだろうと察してしまった。
それにアイツがまだこっちに戻ってきていないことを考えると、戻る余裕もないということだろうからやっぱりユーエルがやるしかない!
けど、そうなると目の前のこいつらは…あ。まって…うんうん。考え過ぎじゃぁん!シンプルにあの白い塔と同時にやれば問題なしじゃんね!
片足を地面に打ち付けるように地面を蹴り、公園を揺らす。
突然揺れた地面に戸惑う怪人達との距離を詰め、白い塔に向け纏めて蹴り上げる。
「よし!計画通り!」
これで全部が一直線になったところをワールドエンドクラッシュで真っ二つだ!
「とか、都合の良いことを考えているんだろうがよ!そんな子供でも思いつくことは、こっちだってお見通しなんだよ!それより、いいのか?オレと距離を開けて、オレは全部ぶっ壊すって言っただろ。その中には当然のお前の大事にしているモノも含まれるわけだぞ」
二体の怪人がイヤらしく口角を上げると、八つのドクロの顔がユーエルを見つめる。
しかし、ドクロの視線はそのままユーエルを通り過ぎて違う方を向く。
「まさか!」
瞬時に全てを理解したユーネの顔色が変わる。
何でわかったのかとか考えるところ色々ある。だけど今はそれどころじゃあない!
即座に振り向くが…足が止まる。
このまま行ってしまったら、あの空の塔ってやつが街に落ちてしまう!
あれだけ巨大なものが落ちれば、街どころか周囲一帯は塵になって消えてしまうだろう。
ヤバい!完全に油断した!
このままだと、どっちかしか守れない!
「「ぎゃははは!今更気が付いてもおっせぇんだよぉぉぉ!!」」
下品な本性をさらけ出し突き出されたドクロから放たれる光が、尾を引きながら街のある一点を狙って飛んでいく。
その先には、子供の兄弟が薬を振りまいている。
一本の束となった光は兄弟の小さな方をへと向きを変える。
兄が異変に気が付き、弟を庇うように走り出す。
しかし、離れていた兄に出来ることはない。
弟は顔を歪ませるこちらに来る兄の視線に誘導され振り向くと、その小さな瞳に紫の光を映す。
当たり前だが人間と変わらないリズにも、ただ光を見つけることしか出来なかった。
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