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第十七話 ⑯ お父さん遅いって!だ


ユーエルを害そうと思ったら、この方法が一番確実かもしれないとルウは感心する。

行動を制限された上に、ジワリと精神にも蝕んで来る。

(意図したわけじゃないんでしょうけど、今後の良い課題にはなったわ。でも急いでよ。アキラ。今後はこれ以上に大変になりそうだから)


悩むユーエルの視界に、突如光の筋が走る。

それは落ちてくる馬鹿デカい石に幾重にも刻まれると、石は形を保てずに崩れ落ちていく。


「友よ!ここは私に任せておけ!!」

ボロボロの黒鳥男が剣を片手に羽ばたいている。

分厚く包帯を巻かれた足が痛々しい。

何が任せておけだ。どうせお父さんが止めるのを振り切って、飛び出してきたんだろうがバレバレだっつーの。


だが、そんな怪我人に頼るしかないのことに歯を食いしばる。

ユーエルが今向こうに行っても、現状は変わらないのだから。

「よし!まずやることぉ!! 一、ここのみんなの安全を確保することに集中! 二、空に浮かぶ塔は、さっきの考古学者みたいな奴のせいだろうから、アイツをぶっ飛ばす!以上!」

ぐだぐだ悩んでいても仕方がない。今は考えるよりも体を動かそう!


「という事でやるよ!リーヴル!」

「そんじゃあ気合入れますか!」


     ◇


公園のベンチに腰掛け、夜風に吹かれながら、怪人は満足そうに頷く。


さて、そろそろ始めますか。

あの岩場の遺跡が壊れてしまっていた時は、何年もかかると覚悟していたものですが以外なところから運が回ってきたものです。

いや、運なんかじゃありません!これは私の愛があの遺跡に通じた証に違いない!


「ずいぶん楽しそうじゃないか。遺跡男いやミステリーハンターよ」

「…ジャスティスさんですか。そんな体でわざわざ…いや、あなたにとってのそれは私の遺跡に対する気持ちと同じですからね。野暮なことを言うのは止めておきましょう。だが、それはあなたも私の気持ちをわかっているということ。それを邪魔するということは…」


「ああ。当然わかっているさ。さぁ互いの誇りを掛けた勝負だ。全力で来い!」


     ◇



死屍累々。死んでいるわけでも屍でもないのだが、ユーエル達の前に広がる現状はまさにそれだ。

途中から多少の怪我は仕方ないと、少し強めにぶん殴っていった結果。

力無くうなだれた人の山がそこらへんで、盛られているであった。


「おい、ユーエル!まだアキラおじさんの薬は出来ないのかよ!」

いくら常軌を逸した子供達といえど、ゆうに千を超える人間たちを相手にしているのだ。

愚痴の一つも吐きたくなるのも仕方がない。


「知るわけないじゃん!出来たら一番にここに来るって!」

「そう!一番に来ますよぉぉ!!」

空から何かの液体を振りまきながら真っすぐに一つの影が落ちてくる。

言わずと知れたアキラだ。

まるでどこかで待機していたようなタイミングの良さだと思うルウだが、今は非常事態故に敢えてのスルーだ。


アキラの撒いた液体に掛った人達だが、安らかな表情を浮かべると静かにその場に倒れこんでいく。

死屍累々は相変わらずだが、さっきまでの緊迫した空気はもうそこにはない。


「お父さん遅い~!」

「ごめんごめん!ほら、街の人全員分って量があって大変でさぁ」

「おじさん、コレでみんな直ったんですか?」

「あ~すまん。状態異常の回復薬は数が多くて間に合いそうに無かったから、今のはただの範囲効果魔法と組み合わせた睡眠薬だ」

すぐに父親たちの異常性も良くなるのだろうと期待していたリーヴルは少し残念そうな表情を浮かべる。


「大丈夫。心配しなくても明日には必ずブークさんたちは回復させてやるから。なっ」

「あ…すみません」

リーヴルは街中のみんなが大変な状況なのに身内を優先して考えていた事を見透かされてしまい、顔を赤くして俯くとそれ以上喋らなくなった。

ユーネは別にそれで良いと思うんだけど、妙に時間とか約束とかにも拘るし変なところで真面目過ぎるんだよね。

余計なお世話かもしれないけど、将来カミに見放されないか今から心配になっちゃうよ。


「じゃあ急いで他の場所にも睡眠薬を撒かなきゃね」

「いや、他のところにはソロ君とリズ君が向かってくれているよ。普通の人たちだったらあの子たちを捕まえるなんて出来ないだろうからね」


「だね!じゃあユーエルはもう一人の所に行ってくるよ!なんか向こうでドンパチやってるみたいだからさ」


     ◇


厚い雲の隙間から漏れる月明かりが公園へと降り注いでいる。

その薄い明かりに照らされた砂場で、片膝をつく灰色の怪人とそれを見下ろしながら髭の形を気にする怪人の姿があった。


「そんな大怪我を負っているのに、これだけの力を…幹部候補ナンバーワンというのは伊達ではなかったようですね」

片膝をつく羽の生えた怪人を見下ろしながら、乱れた髭を直す怪人が尊敬の念を込めて驚嘆を表す。


「…評価して貰えて光栄なんだが、そんな戦闘型の私と互角に戦える調査型が目の前にいると素直に受け入れなられないな」


「いえいえ、これは私一人の力ではないので、気を落とす事はありませんよ。もともと私の体が戦闘に向いているようには作られている事は知っているでしょ?」

「まぁな。しかしそれも解消されたみたいじゃないか?その方法を取れば、それこそ幹部にだって対抗できる力を得る事ができるだろう」

月の光の中を小さな影がひらひらと通りすぎていく。


「…物事は発掘作業のように、慎重に慎重を重ねなければならないのですよ。…おっと、来られましたね」

二人の間に、夜の闇に溶ける様な漆黒の騎士が砂をまき散らしながら降り立つ。

「待たせたなお前ら!超絶カッコいい黒騎士ユーエルちゃんのぉぉぉ登場だ!」




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