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第十七話 ⑬ 新たな怪人だ!


(…ついに出てきたわね。花火男が「待っていた」なんて言うものだから、待ちわびたわ)

(だね。でも大丈夫だよ。あの時と違って三体でも問題ないから!)

そう。あずき棒アイス男のときのような醜態をみせるつもりはない。

ルウやお父さんを心配させないために、修行をしてきたんだ。

来るならいつでもこい!と覚悟を決め、殺気を置き去りしながら今にも爆発しそうな花火男を追いかける。


「おい!早くその玉を放せって!」

遠くで飛ぶ黒鳥男に向け怒鳴る。

「ダメだ!街にはまだ人を狂わす魔力が溜まっているんだぞ!少しでもコイツの力が影響してみろ、街は滅びる!」

「だからって、お前がすることじゃないだろ!ユーエルがやるから早く変われ!」

そう言うとこちらをチラリと見てから、少し笑いやがった。笑う?この忙しい時になんなんだ!?真面目にやれっての!


「ありがたいが、もう間に合いそうにない!それに心配は無用だ。私はこう見えても幹部に次ぐ強さを持っているのだ。このくらいなんの問題ない!!」


何かにアイツの言葉がかき消されて、うまく聞き取れない。

それでも言い返そうと口を開きかけたとき、燦々と白く輝く玉が宙で制止したように見えた。

風も音も止まり、まるで時が止まったように辺りが静まり返っていく。


次の瞬間、思わず目を閉じてしまうほどの強い光がチカリと広がるが、すぐさまその光は二人の怪人へと収束していく。

そして収束した光は真っ赤な炎をあげ大きな爆発が起こす。

遅れて嵐の様な暴風と重低音が円を描き世界を壊していく。


遥か下にある街の建物がめくれ上がり砕け散っていることで、今しがたの爆発がどれだけのものだったのか推し量ることが出来た。

正直あの中心にいたのが自分だったらと想像すると思わずゾッとする。


完全に固定された視界の中で、爆炎が収まると残された爆煙の中から黒鳥男がその体を焦がし煙を引きながら、真っ逆さまに頭から落ちてくる。


「ほら、言わんこっちゃない!」

ユーエルは急いで落下地点まで移動すると彼を受け止める。

続けて少し離れた場所に手の平に納まるほど小さくなった花火男が落ちてくる。

爆発を無理矢理抑えられ不完全延焼で終わったことで、瀕死ではあるが生き残ったようだ。

しかし今気にするべきは黒鳥男の方だ。


「おい!大丈夫か!生きてるか!?」

「い、生きてなきゃ大丈夫とも言えないだろ」

「いいんだよ!今そんな正論言わなくても!」


地面に横たえ、改めて見るとその姿は遠目からは想像できない程にボロボロだった。

ただでさえ薄汚れているのに、所々羽は燃え落ち、肉はそげ片足なんかあらぬ方を向いている。

きっと今は喋るのもシンドイだろう。

はやくお父さんの所に連れていかなければならない。


「おとなしくして、もう少し待ってて」

そう言って守るように立ち上がり振り返ると、視線の先から汚い物でも触れるかのように瓦礫を避けながら、一人の男が歩いてくる。


「ほう。敵を助けるつもりですか?」

言葉の主の見た目は、探検帽子を被ったステレオタイプの考古学者そのものだ。

見た目もの大きさも普通の人間と変わらない。

しかし、目の前に立ってみれば誰でもわかる。この自制しようともしない淀んだ魔力を垂れ流し、無条件に他人を見下す目は人間のそれではない。


「やっと出て来やがったな。そこの花火男はお前が来るのを、すっげ~待ってたみたいだぞ。遅刻するときは連絡するのがマナーだろうがよ。時間にルーズな奴は信頼されないんだからな!」

腕を組んで鼻から息を盛大に吐き出す。

いわゆるドヤ顔でだ。


「……」

ムッとした顔で黙る怪人にユーネの鼻息が荒くなる。

いや~ちょっと影響を受けて正論を言ってしまったが、意外とこれは気持ちがいいかもしれない!

今度「ユーエル正論パンチ」なんて新技を作ってもいいかもしれない。寝る前に出もルウに相談してみよう。

(言わなくても、何を考えてるかわかるから今答えてあげるわ。ダ メ よ!!)

(まだ、なんも言ってないじゃぁん!)

(だからこそよ!!)


「遅刻と言われましても別に何時に着くとか、そんな約束をしていたわけではありませんし、彼が勝手に待っていただけなんですが…」

そいつは余裕のつもりなのか困った様に顎に手を当てて、首をひねる。

「まぁ別に困るのは貴方じゃないからいいじゃないですか。それに私の目的は戦うことじゃありません。そこに転がる三尺玉男ですから、無視してもらって構いませんよ。じゃそう言う事で…」


そいつは無造作に転がる花火男の方へ歩いていき、腰をおり手を伸ばす。


「待てよ!」

殺気と共に放った言葉が、触れそうになっている手を止める。

「…なにか?」

「お前…それどうするつもりだ?助けるためとか冗談は求めてないからな」

こいつ拾おうとした時に、凄い悪い顔しやがった。

丁寧な喋り方をしているが、ついつい気が緩んで漏れてしまったって感じだ。



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