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第十七話 ⑩ 準備完了だ!


「舐めるな!花火は遠距離ばかりじゃないぞ!」

火花を散らしながら大斧と拮抗するのは、手に持って遊ぶあのススキ花火だった。

左右から飛び出たススキ花火で、十字を作るように重ねて防いでいるのだ。


「オレに近距離、遠距離共に隙などない!」

思わぬ行動に間合いを開けるユーエルが熱で溶けた斧の刃を見ながら、悪態をつく。

花火というぐらいだから、飛ばしてくるものだと思い込んでいた。

それが近接武器も持っているなんて…。しかも、バイトオフザソウルの刃を溶かすほどのだ。


警戒するようにチラリと後へ目をやる。

前には花火男に後にはアイツか…。

悪い奴には思えない。何気に気を許せる感じもする。


本当に協力してくれるのかもしれない…が、どこまで信用していいものか。

なんだかんだ言っても相手は怪人なのだ。急に凶暴性を露わにしてきて、背中をズバッとやられちゃ堪らない。

グルグルと同じところを回り、囚われていく思考を割くように信頼できる声が聞こえてくる。


(今は…敵だと考えた方がいいでしょうね。接近戦は黒鳥の方が死角に入っちゃうから止めて、三尺玉を中央にして挟むように立ちまわるのがいいわね)

何も口に出していないのにと…不思議に思う半分、何故か安心してしまい小さく笑みが漏れる。


(了~解!!)

羽を大きく広げ後方へと距離をとる。

「いくぞ!モード:アンダーザナイト移行!」

左から右へと片腕を振る動作に合わせて、鎧の色が変わっていく。

(こんなに素早く変更できるなんて、修行の成果がでてるじゃない!)

(まぁ~ね~!このくらい楽勝よぉ~)


ふふん。胸を反りながら角灯をぶら下げた蝶を羽ばたかせる。

まるで光の蛇の様に夜空を這いながら渦を巻き、次々と向かってくる花火を貫いていく。

その隙を逃さないように、反対側のアイツが切りかかっていくのが見えた。

しかし、タイミングを合されて弾き飛ばされてしまう。

が、ユーエルはそんな事もあろうかとすでに距離を詰めていた。


「背中に戦士の恥を作ってやる!」

突き出された拳はまたもや甲高い音を立てて、目の前でその動きを止める。

「なッ!?」

確実に背後から攻撃したはずにも関わらず、先程の再現のようにススキ花火で止められている。


黒鳥男の方に二本、ユーエルの方に二本。計四本になった腕で二人の攻撃をしのいだのだ。

いや、腕だと思い込んでいたがこれは腕じゃない。

表面に張り付いている紙だ。紙が腕のように伸びてきているのだ。


「ヒヒ。背中がなんだって?」

花火男は勝ち誇ったように口角を上げると、火花を散らしながら高速で回転する。

後に下がろうとするが、追撃を受けて吹き飛ばされてしまう。


「おおっと!」

黒鳥男が、錐揉みながら吹き飛ぶユーエルを受け止める。

「大丈夫か!?」

「うあ?う、うん、問題ない!」

まるで歴戦のパーティーメンバーのような行動にぎょっとしてしまったが、コイツから放たれる真面目な空気がそんな事を気にしている場合ではないと伝えてくる。


「仲良さげにしやがってよ。ムカつくなぁ。戦闘中だろうがよ…あぁ、そうだ。お前ら良い話をしてやるよ」

そんな風に言われて、良い事なわけがなく。睨みながら身構えると、怪人は嬉しそうに笑う。


「昼間よぉ、あのケーキ屋の男の様子。ヒヒヒッ!おかしいと思わなかったか?オレの能力に当てられると、体内のマナが淀んで狂騒状態になるんだよ。しかも周りが見えなくなるぐらいに暴力的になぁ」


やっぱりコイツのせいかとモヤモヤが取れてスッキリしたので、すぐに切りかかろうかとも思ったんだけど、ルウに止められてしまう。

なんかもうちょっと話を聞きたいみたいだ。


「さて、ここからが良い話ってやつだ。ほら、下を見てみろよ。街に光が灯り始めてるぞ。これは戦いの音を聞きつけて、人間たちが家の外に出てくるのも時間の問題だ。あ~大変だ~危ないな~」

「フッ!そんな思惑など、さっさとお前を倒してしまえば問題ない!」

クルクルと回り楽しそうに話す花火男の言葉を遮り黒鳥男が剣の切っ先を向け宣言する。


街には日ごろから、戦いを生業としている人間がいる。

兵士のおっちゃんや冒険者の人達がそうだ。

もし、その人達が狂って暴れたら昼間のケーキ屋のようにただ暴言を吐いて包丁を振り回すぐらいでは収まらないだろう。


…いや、なんの保証もない未来のことをうだうだ考えるのは、相手のペースに乗せられているということだ。

しっかりしなければ、それこそ街のみんなを守れない!


「ヒヒ。お前らに出来るのか?もうすでに準備は終わっているんだぞ?」

「!?」

「いや、ちょっと違うな。お前たちが終わらせてくれたんだ」




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