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第十七話 ⑨ 花火男だ!


「痛ったぁ!なんだよ。今のは!?」

「ヒヒ。綺麗だっただろ?このオレ三尺玉男様、お手製の花火は?」

「三尺?よくわかんないけど、ようするにお前は花火男ってことか?」

「ヒヒ、まぁそう思って貰ってもいいぜ。どう思ったところでお前はここで死ぬんだからよ」


楽しそうに怪人はグルグルと回転すると、体から棒の着いた円柱状の物体を次々と放出していく。

夜空を埋め尽くさんと溢れたそれらは、規則正しくユーエルの方を向くと宙で制止する。

「じゃあ、まずは定番のロケット花火からだ!」

三尺玉の表面に現れた顔がニヤリと笑うと、ロケット花火が一斉にピューと音を立て放たれる。


ユーネもロケット花火ぐらい知っているし、もちろん棒を手でもってやらかした事もある。

故にその威力と速さ、そして恐怖は身に染みている。

それが何百、いや千を超えているかもしれないものが飛んでくるのだ。グッと奥歯を噛みしめて本気の構えをとる。


魔力を込めた大斧の一振りで、何十ものロケット花火が爆散していく。

それを目にも止まらす速度で繰り返すが、焼け石に水だ。

何故なら、いくら壊しても本体の怪人から新しく生み出されて数が減らないのだ。


そんな中、脇腹に痛みが走る。

視線を落とすと、鎧に小さな焼けた跡があった。

いつの間に被弾したんだと疑問が沸くと同時に、答えが現れる。


クルクルと回る小さな花火が、ロケット花火の隙間を縫って飛来してきているのだ。

「ネズミ花火か!」

小さいといえど魔力の籠ったものだ。くらえばそこそこのダメージとなる。

しかも自由気ままに動かれ、狙いが定まらない。

舌打ちをしながら、自身を中心に円を描くように高速で斧を振る。


周囲の花火を一時的には一掃はできたが、一度崩れてしまったペースはそうそうに元には戻らない。

無限にも思えるほど押し寄せる花火にガードを固めて、受ける方向へとシフトする。

着弾と共に爆発を起こす衝撃の雨が黒い鎧を叩く。

二種類の花火は一つ一つは大した威力はないが、これだけ大量に降り注ぐと抜け出せるほどの余裕はない。

だが、いつまでもこうしているわけにはいかない。なにか対策を考えなければならない。


街中を叩きおこす爆音を響かせ、ツンとした独特の火薬の匂いと粘性を伴うような濃い煙が黒騎士を覆い隠していく。



「苦戦しているようだな。手伝ってやろうか?」


どこからか不思議な声が聞こえてくる。

リーブルやソロリズとも違うし、ましてやお父さんの声でもない。


「お前、昼間のユーネちゃんなんだろ?」

緊張しながらガードの隙間から素早く視線を動かすと、離れた所で何処かで見た黒鳥の首が揺れているが見える。


「ああ…わかっているさ。心配するな。女の子の秘密を暴くなんて正義じゃないからな」

纏う空気を変えた黒騎士に何を勘違いしたのか、偉そうに大人ぶる灰色の怪人。


そのまま彼は腰の鳥を引っこ抜くと、それは灰色に光る剣となった。

「さぁ、共に正義を貫こうじゃないか!」

「いや、誰も頼んでないだろって!」

しかし彼は、黒騎士の言葉など最初から聞いていないように誇らしげに剣を振り、花火を一掃する。

もちろんそんな事をすれば、仲間であるはずの三尺玉男が怒るのは当たり前の話だ。


「なんでお前がオレの邪魔をするんだ!我々に下された命令を忘れたのか!?」

「フフ…命令か。ならば君は死ねと命令されたら、死ぬのか?」

「はぁ?何を言っているんだ?組織に所属して、その組織の恩恵を受けて好きなように生きているなら、その責任を負うのは当たり前だろうが」


「ふむ。確かにそれも大事だなのかもしれない。しかし君は命令という他人の言葉に責任を負わせることで、自分で考えることを放棄しているじゃあないのか?目を覚ませ!君の人生は君のものなんだぞ!!」

「「‥‥‥」」


まぁ。正論と言われればそうなのかもしれないが、今三尺玉男としてはそういった話をしているわけではない。

なんで仲間を裏切って敵を助けているんだという単純な話だ。

人生がどうのこうのという話ではない。


しかし、あまりの勢いに二人ともつい口をあけてポカンとしてしまう。

──これがいけなかった。反論が返ってこないことに自身の言葉に正当性があると勘違いしたソードオブジャスティスの言葉が滝のように流れだす。


「お、おい!わかった!わかったから、今は戦闘中なんだよ。わかるだろ?」

「ん?ああ、なるほど。アイツを倒してから続きを聞きたいというわけだな。了解した!ではいくぞ!友よ!」


友ぉ?…いや、今はまぁいいか。邪魔をするつもりも無さそうだし。

変な奴だが、へんに憎めないんだよなぁ。コイツ。

さて、取り敢えずは邪魔になりそうにも無いし、気合を入れ直して再開といきますか。


「ヒヒ、まぁいいさ。もともとそいつは数には入っていないような奴だ。裏切り者と共に綺麗に爆ぜろよ!」

再び構えを取った黒騎士に、三尺玉も男も再び花火の雨を降らせる。


「フッ。では黒騎士よ。私が爆炎の中に道を切り開いてやろう」

そういって頭上に真っすぐ鳥の首が付いた剣を上へと掲げると、刀身が空に向かってぐんぐんと伸びていく。


それをかなりの長さになったところでそのまま振り下ろす。

見た目はふざけていても、人間を遥かに超える魔力を扱う怪人の攻撃だ。

その一撃は周囲を舞う花火を一瞬で消し去り、三尺玉男までの一本道を作り出した。


「今だ!黒騎士!」

「わかってる!」


一直線に伸びる何も無い空間を黒騎士が矢のように飛ぶ。

気合の雄たけびと共に振りぬかれた大斧バイトオフザソウルが、三尺玉男の目の前で不本意にその動きを止めた。




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