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第十七話 ⑧ 私のために争うのいはやめてだ!


「異常…?それはうちのユーネちゃんが天元突破して異常にカワイイということか…?」

「ちげーよ!考え方がおかしいって言ってんだ!」

「おかしくてもいいだろうが!カワイイんだからよ!どこに問題があるって……わかったぞ。お前、いちゃもんを付けて可愛すぎるユーネを奪うつもりだな!そうはさせんからな!!」

領主は知らなかった。子が子なら、親も親だということを。


「二人ともユーネのために争うのは止めて!それに今はそんな事をしている場合じゃないのよ!」

領主の腕の中から飛び降りて、二人の間で両腕を広げる姿はさながらラブロマンスのヒロインのようだ。

なぜお前が被害者ポジなのだと釈然としない領主だが、この娘の言うことの方がもっともだとマッシへと向き直る。


「わ、わかった。だが、こう言う事は大人に任せるんだ」

領主が指をパチンと鳴らすとドカドカと足音を立てながら、世紀末から来ましたと言わんばかりのヒャッハーな世紀末な感じの男たちが現れる。


「お待たせしました!我らが主よ!」

「アイツを捕縛しろ。色々と話を聞きたい」

総勢10人はいるだろうむさ苦しい集団がマッシに詰め寄っていく。

世紀末な野郎どもが大人数で詰め寄ってくるのだ、今度こそ諦めて大人しくするものだと思っていたが、聞き取れない言葉を発しながらナイフを振り回し始める。


口の端から泡を噴き、焦点の合わなくなった男を殺すだけであれば、特に問題はないのだが生け捕りにするとなると話が変わってくる。

屈曲な男たちが二の足を踏んでいると、後方から碧色を帯びた風が巻き起こりマッシを上から抑えこむ。


「皆さん今です!」

ミトラが叫ぶ。言い終わるか終わらないかのうちに、世紀末な野郎どもが覆い被さっていく。

正気を失くしたマッシはあっという間にグルグル巻きにされて地面に転がる。

それでも何か叫んでいるが、猿ぐつわまでされると流石に諦めたのか静かになった。


連れていけと指示を出すと領主はブークに向き直り声を掛ける。

後から来たうえに仕事を取ってすまなかったと謝っており、領主の名に恥じないしっかりとした人なのかもしれない。


だが、一人そんな領主さんに対してさっきからいい顔をしていない人物がいた。

リーブルだ。なんでもこの間の盗賊の件が有耶無耶になったのは、領主さんからの圧力が掛ったからだと言う。

そのせいで表では良い人ぶっているが、実は悪い奴で盗賊とも繋がっていたのではと疑っているのだ。

だからと言って真正面から問いただしても意味がないと分かっているので、ただ睨むだけに留まっている。


そんな空気を壊すように、私が同行して事のあらましを説明しようじゃないかと声を上げて、例の怪人が堂々と腰の鳥を左右に振りはじめる。

ホントにこいつは…だけども今だに何か悪さをするわけでもなさそうだし一体なんなんだろうか。

別に何かするわけじゃないなら、戦うのも疲れるし別にいいっちゃいいんだけどさ。


「さて、無事に事件も解決した事だしウチに帰ろうか」

アキラがルウごとユーネを抱え上げて、肩ぐるまをする。

「お父さんユーネね~。大きくなったら探偵になろうと思うんだけど、どうかな~?」

「えぇ!?探偵!?ダメダメ!働いたら負け!!ずっとウチに入ればいいんだって!ほら、お父さん貯金もコネも一杯あるからユーネ一人くらい食べさせていけるからさ!」

(何をバカなことを言ってるのよ!ユーネ、こんなダメな大人にはならないと思って生きていきなさいよ!!)


仲睦まじい家族の会話を交わしながら家に帰り、夕食を摂り、かなり早めにベッドに入る。

そして日付を跨いだころ、眠気による不機嫌さを浮かべた目を擦るユーネが焼け残ったマッシの店の前に立っている。


彼女はまるで自分の家のように瓦礫を踏み抜きながら壊れたオーブンの前へと進んでいく。



     ◇



「…出てこいよ。昼間はいっぱい人が居たから気づいていない振りをしてあげたけど、火事の半分はお前のせいだってことは、わかってんだからな」


「ヒヒ。なんだ気が付いていたのか」

「オーブンの天板といい、こんなにわかりやすい花火の匂いと変な魔力を残していたら、お前のハウダニットはバレバレだっつうの」

「それ、ハウダニットって言いたかっただけだろ!」

オーブンの中の人物も姿を見せる前から、敵にツッコミを入れるハメになるとは思ってもみなかっただろう。


「あーあーあー!わかってても、そんな事を女の子に言っちゃいけないんだー!!正論の刃は人を傷つけるってことを知らないんですかー!?」

「正論って…いや、まぁいいや。確かに昨日は新しい街に来てついテンションが上がってしまったから、色々と痕跡は残っていたかもな」

異様な魔力が高まっていき、焦げた黒ずむオーブンを熱気と共にオレンジ色へと変えていく。


「アイツが来るまで、減った魔力をここで回復させておこうと思っていたんだが…仕方ない」

甲高い声と共に色付いたオーブンが、風船のように膨らんでいく。

一方ユーネとルウの体を魔法陣が包み込む。


限界まで達したオーブンは、破裂音と共に槍のようにたがった破片を全方位にばら撒く。

突如現れた黒騎士は銃弾のようにせまる鉄の欠片を大斧を細かく回しながら、なんなく撃ち落としていく。


「黒騎士ぃ!?そうか、お前みたいなガキが…まぁ仕事はしっかりこなすつもりだったし、丁度いいか。ヒッヒッヒ」

声のするほうに目をやると、上空にベージュの包帯をグルグル巻いたような巨大な玉が浮かんでいた。

どうやらオーブンの中に潜んでいた怪人の正体がアレだったようだ。

ユーエルは即座に地面を蹴り巨大な玉よりも高く飛び上がると、真っすぐに大斧を振り下ろす。


「お父さんがな。仕事はしたら負けって言ってたから、もうお前の負けは確定したも同然だぞ!」

これで終わりだと思われたその時、色鮮やかな火花が目の前で幾つも飛び散り視界を塞ぐ。

更に、ピューという高い音を立て何かが飛んでくるとユーエルの背中を叩き爆発した。

深刻なダメージでは無かったが、思いがけない反撃に、急いで距離を取る。




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