第十七話 ⑥ 犯人はお前だ!
正月休みに、さくらみこさん(ホロライブ二次創作)を書いてみましたので、お時間があるときに読んで頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
「ふむふむ。風魔法の練習中だったという事ですね。皆さんどうですか?ここで起こったのは火事です。風と火じゃ関係ありませんよね」
「そいつが!……嘘をついてるかも…しれないじゃないか……」
…まただ。
あとから処理しようと思っていたけども…どうしようか…。
(ユーネ。今はミトラちゃんの件に集中しましょう)
(うん。そうだね。わかった)
「…そうですね。記憶違いなんてこともあり得ますね。ブークさんはどう思いますか?」
「う~ん、風だけなら難しいと思うが、竜巻みたいな強い風と火と合わされば、大きな火事にはなるんじゃないかな」
青天井を見上げながら隊長の発言に周りの人達もそうだな。と首を縦に振る。
「皆さんも納得されているみたいですが、それは火だねがあってこそ成り立つ話と思うのですよ。それに、竜巻のような強い風は起こっていないという証拠もありますよ」
肩にルウを乗せた少女は接客スペースへと戻り、焼け残ったショーケースを指さす。
みんな言われた通りそれを見てみても、特に不思議な所はない。
ガラスは全て割れて無くなっているものの枠組みは保たれ、中の商品も何であった容易に判別することができるほどだ。
「焼け残った陳列棚とケーキだったもの…以外になにかあるのかい?」
ブークが顔を近づけて覗き込んだまま、疑問を口にする。
「おじさん。もっとよく見て」
ユーネの指がケーキだったものを指さす。
それは、もとはただの元はショートケーキだったようで、スポンジと溶けて液体になったクリーム。それに変色したイチゴが皿の上に乗っている。
他の兵隊さんも寄ってきて、ケーキを見ているが首をひねるばかりだ。
「ブッブー!はい、時間切れです!」
ユーネはおじさんたちの隙間を縫ってケーキの乗った皿を取り、みんなに見えるように胸の前に持ちあげる。
「はい、リーブル。この皿にはなんで溶けたクリームが乗っているのでしょうか?」
「何でって。火事の熱で炙られたから溶けたんだろ?どこにも変なところなんてなくないか」
「うん。うん。いいよ、その反応実にモブキャラぽくていいよ~」
「誰がモブなんだよ!それより早く答えを言えって!」
「もう。せっかちなんだから。あのね。それは溶けた理由なの。ユーネが言っているのは、ミトラちゃんの風魔法のせいで天井が突き抜けるぐらい大きな火事になったのなら、なんでシャバシャバの液体が飛び散りもせずに皿の上にそのままキレイに残っているの?ってこと」
「それは、ショーケースに守られて…」
「ガラスは割れて枠しか残ってないのに?そもそも、外から放たれた風が何で建物の中に入ってくるのよ」
「あ…じゃあミトラは全然関係ないってことか…」
「火!火の魔法だったかもしれないだろ!本人だってよく覚えていないって言っているんだから!」
「はい、じゃあ次ね。こっちに着て」
騒ぐマッシをもう見もせずに、大きく手を叩き奥の作業部屋へと進んで行く。
大人達はあちらの部屋も調べたはずと思いつつも、ショーケースの件もあって黙ってユーネの後を付いていく。
「では次は火の話になりまーす。ミトラちゃんの魔法は火ではなかったと思っています。その証拠がこれです」
ユーネは天板に大穴が開いて壊れているオーブンを指さす。
鉄で出来たスポンジや菓子を焼成するための珍しくもない普通の魔道具だ。
それこそ、マウイの店でも同じ系統のものを使っている。
「これがどうしたんだよ?」
「あぁ。なるほどな。この壊れ方がポイントだ少年。よく見てみたまえ」
いつの間にかついてきていた黒鳥怪人が顔を近づけてニヤリと笑う。
「ちょっと怪人のクセに当たり前のように近くに来ないでよ!まぁでもアンタもわかったみたいね」
ユーネも目を合わせニヤリと笑うと、口に人差し指をあてる。
かなりキモイうえに、こいつは怪人なのだが不思議となんとなく気が合うような感じがした。
なんでだろうと疑問がよぎるが、耳元でルウが次の答えを囁き始めたので、聞き逃すまいと意識を傾ると、すぐにそれはどこかに流れていった。
「なんだよ!二人してオレにも教えろって!」
「だからよく見てって!」
「よく見る…まずドアが無いな。あ~あそこに吹き飛んでいるか…」
リーブルは部屋の隅にグニャりと変形したドアが転がっているのを見つけるが、まだ分からないようで再びオーブンに顔を近づける。
少しツンとした馴染みのある匂いが漂ってきているが、それ以外は特に…あ…。
「わかった!内側からだ!」
「そうだ少年!オーブンの壊れ方が中から爆発したように捲れ上がっているのさ!」
「んじゃあ、そこから導き出される答えは~?」
「火事の原因はこのオーブンってことか!」
「はい!正解~!ということで、いくよ、いくよ~ハ ン ニ ンは~お前だ!!」
ユーネの人差し指とみんなの視線はマッシを射抜く。
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