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第十六話 ④ 卒業だ!


「アクークさん!大丈夫!?なんともない?」

パッと見た感じでは特に怪我はなさそうだが、こめかみを押さえきつく目を閉じているをみると、何かしらの攻撃だったのではと疑ってしまう。

「だ…大丈夫。だけど私は…」

アクークはゆっくりと目を開け辺りを見回すと、何かを納得したかのように頷く。


「ううん。大丈夫。それよりも助けてくれてありがとう。誰だか知らないけどあなたがいなかったら、二人とも死んでたわ」

「全然おk!だってアクークさんだって、今同じことやったじゃん。それと同じ」

騎士から言われた事を確認するようにもう一度少女へと目を移すと彼女は大きく口を開ける。


「あのね!私も大きくなったら、二人みたいに強くなってみんなを守ることにする!」

突然のことにユーエル達も驚き目を合わせるが、すぐに笑いあう。

「フヒヒ!じゃあユーエルを先輩としてソンケーしなさいよ!」

「ちょっと子供に何言ってるのよ」

そんな、どうでもいい事でひとしきり笑いあっていると、一筋のカミをなびかせマネージャーが駆け寄って来る。


「よかった。無事だったんだな!さぁ早く戻ろう」

「戻る?どこに?」

「何を言っているんだ!イベントの最中だろ!今日一日に一体いくらかかっていると思っているんだ。こんな事ぐらいで中止になんてなるわけないだろ!ほら、わかったら、早く!」

魔物が暴れまくった状態を「この程度だ」なんて、このマネージャーはどんな修羅場をくぐってきたのか、少し気になる所でもあるが、聞いたら聞いたらダルそうなので流す事にする。


「ちょっと待って。この子の親御さんを探さなきゃ」

そこで初めて気が付いたのかマネージャーは、一本だけ生えているカミをピンと立てて目を丸くする。

「チッ。仕方がないな。空いているスタッフに当たらせよう」

「うん。じゃあ騎士さん。私達はこれで行くけど、色々ありがとうね。おかげで区切りつけれた」


「それは良かったね。まぁさすがはユーエルちゃんってことだけど!」

「ふふ、そうだね!マジで最高にカッコよかった。私もあなたみたいになれるように、これからまた頑張ろうと思うから、簡単に追い越されないようにしてよね!」

「ふふん!だったらユーエルはもっともっと先に行っちゃうもんね!」

握手を交わし、目を合わせて見つめ合う。

何か心の奥にあるモノで互いに負けないように、頑張ろうという光を映して。


それから一時間もすると、ぐだぐだになったイベントが再会された。

何だかんだで、再び集まって来たファンもファンでなんか凄いなと感心させられてしまう。


そして今度は何事も無く終わりまで進み、出演者たちの挨拶が順々に行われていく。

最後に司会進行役のアクークが舞台の真ん中へと歩み出る。


「みんなイベントはこんなになっちゃたけど、めげずにまた集まってくれて本当にありがとう!いっぱい楽しんでくれたかな?」

アクークちゃんカワイイとか、様々な歓声があがる。


「突然だけど、皆に謝らなきゃいけない事があります。私アクークは今日でこのアイドルみたいな私から卒業します」

先ほどまでの盛り上がりが信じられないほど、会場が一瞬で静まり返る。


「この街に来て自分の本当にやりたい事を思い出したから、これからは冒険者一本に集中してやっていこうと思います。これまで違ってやぼったい恰好で、汗臭くなっちゃうから、こっちの私を好きな人を裏切っちゃうかもしれないけど…」


マネージャーが慌てて駆けよってきてマイクを奪うが、彼女はそんなこと気にもせずに声を張り上げる。


「でも、気が付いた以上嘘を吐きながらはやっていけないから!私はどこまで行っても根っからの冒険者だから、その道を真っすぐ進んで行こうと思います!!」


まばらに拍手が起こり始めると、それはあっという間に大きな波となる。

街灯の上のユーネも器用に立ち上がり手を叩く。

うん。うん。やっぱり自分に正直なのが一番ってことだね!


夕陽に照らされながら肩に乗っかている黒猫に話しかける。

「ルウ。今日はこのまま街のパトロールして帰ろ!」

「パトロールはいいけど、もうどこそこに石を投げるのは止めておきなさいよ」

「ん?」


何を言われているのか分からないユーネをおいて、拍手の波は更に膨れ上がり、街を飲み込んでいくのであった。




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