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第十六話 ➂ カードが!?だ


子供のころから憧れて、大好きな事だった。

私だって、自分の手で誰かを守れることに誇りを持っていたんだ。

だから、きつくてもランクは低くても冒険者を続けて来たんだった。


「それなのに!!!」

これ以上自分から目を逸らさないようにと、しっかりと前を向き目を見開き駆け出す。


飛びつくように泣きじゃくる子供へと覆いかぶさる。

今は武器どころか防具すらつけていない。

こんなひらひらの服で魔物の牙を受ければどうなるかなんて子供でも分かる。

でも、それが私の信じた道だから!


「大丈夫だから!お姉ちゃんが守ってあげるからね!」

胸の中の少女に穏やかな声を掛けながら、風を切りながら降ってくる攻撃を待つ。


すぐ後で怒声と衝撃音が響き渡るが、それを確認する余裕はない。

吹き抜ける衝撃に身をこわばらせるだけで精一杯だ。

数秒後、自分が無事だと分かると、辺りが妙に静かになったことへ場違いな興味が湧き上がってきてしまう。


駄目だと分かっていてもつい我慢できずに薄く目を開き、小さく振り返るとそこには青い騎士の背中が輝いていた。

「なぁんだ、やっぱりちゃんと出来んじゃん。心配して損しちゃった!」

聞いたことがある声が聞こえる。


確認しようとするも遮るように崩れ落ちた建物を吹き飛び意識を持っていかれる。

その原因である巨大なワイバーンは紫色のオーラを揺らめかせながら起き上がると、空に向け大きな口を開ける。

次の瞬間、言葉が通じなくてもわかるほどの怒りを乗せた咆哮が響き渡る。

それは街中の窓ガラスを砕き、建物を震わせながら広がっていく。


先ほどまでの喧騒が嘘のように静まりかえった中で、ようやくワイバーンへと目を向けると先程よりもかなり巨大になった姿が映る。

これはマズイ。どうしようもない。死を待つだけだ。

冒険者としての経験と勘が彼女にそう告げる。

自分一人だけでも逃げるんだと。

しかし、すぐ近くで聞こえた力強い声が弱きなもう一人の自分を瞬時に吹き飛ばしてくれた。


「フヒ!怒ってやんの~ってふざけんな!怒ってるのはこっちだ!!折角のイベントを台無しにしやがってよぉ!」

「ユーネ!アレも前に戦ったクマの魔物と同じ感じがするわ!一気に決めないと被害が大きくなるわよ!」

「了解!なんの恨みがあってこの街に来たのか知らないけど、ユーネの楽しみを潰してくれた罪を思い知らせてやんよ!」


敵を確認した王は鋭い爪を地面に突き立て、後足を蹴り上げトカゲのように地を這ってくる。その鋭き牙でかみ殺す為に。

一方、迎え打つようにユーエルも両手に魔力を集め大きな筒のようなものを産み出していく。


「ちょっと、凄い速さで突っ込んで来てるわよ!急いで!」

「わかってるって!ルウは黙ってて!」

「ほらほらほら!早く!早く!」


大きく開かれた口が、ユーエル達を包み込もうとした瞬間、翼竜の真下から幾重の光が立ち昇り蝶が舞う。

なんの予兆もなく光に腹部を叩かれ、羽を貫かれた赤い体は抵抗も出来ずに空へと舞い上がっていく。


「今だ!!オーバァァショットォォ!!」

ユーエルの脇に抱えられた銀盤上の予言者(オブセストラバー)から発せられた黒い光はワイバーンの体を貫き消し去りながら空へと消えていく。


(ぐおおぉ!我の復讐が!!いつも石を投げてくるうつけ者への復讐が、こんなあぁ…)


そんなこと露知らないユーエルが満足気に振り返り、手を上げる。

「やったね!」

アクークと子供はキョトンとした顔を向ける。


「はい!」

更に前に手をグッと広げる。

「ああ、ハイタッチ…」

「そうそう!はい!」


「…べつに私は別に何もしてないから」

俯くアクークに呆れたようにユーエルが笑う。

「もぅ。アクークさんの腕の中にはなにがあるの?」

視線を落とすとキラキラした目でこちらを見ている少女と目が合う。


「お姉ちゃん、ありがとう!と~ってもカッコよかったよ!」

その言葉に自然に涙がこぼれ落ちる。

「…ううん。こちらこそありがとう。ありがとうね」

あ~やっぱり私は冒険者が好きなんだと自分の心に確認する。

うん。今日でおしまいにしよう!


自身の本当の願いを見つけたその時、服の中からSSRのアクークカードが輝きながら浮かび上がる。

また敵かと警戒するユーエルをよそにカードは、辺りを真っ白に染め、光が収まった時には消えて無くなっていた。




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