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第十六話 ➁ イベント開始だ!


セブレが調べてくれた話だと、アクークさんがイベントの司会進行を行ってくれるらしいことがわかった。これは参加しないわけにはいかない。

どこに行くんだとしつこく詮索してくるウザいお父さんを何とか騙して、イベント当日を迎えることになった。


ユーネの周りでは人気は無いが、やはり世界に名高るカードだ。

噴水周りの広場は、お祭りのように人がひしめき合っている。

背の低いユーネはどうしているかというと、棒の付いた飴を咥えながら、街灯の上に腰掛けている。

最前線とまではいかないが、ここからなら誰にも邪魔されずにイベントを堪能できる。


ほどなくして、青い空に花火が上がりイベントが始まる。

今後のロードマップから、初出しの新情報などもあり会場の熱気はこれ以上ないほどヒートアップしていく。


しかし、そんな楽しい時間に水をさすものが現れる。

イベントも中盤に差し掛かってきたころ、突然空から甲高く汚い音が街へと響き渡った。

人々が何事だと驚き空を見上げると、一部が真っ赤に染まっている。

ワイバーンの群れだ。二匹の特別大きな個体を先頭にしたワイバーンの群れが迫って来ていたのだ。


(ククク。ついにこの時がきた…傷を癒すのに思いのほか時間が掛ってしまったが、翼竜の王たる我に石を投げつけたうつけに自身の罪を思い知らしてやるぞ!もちろん、連帯責任として他の人間どもも全員、群れの餌にしれくれる!)

羽に刻まれた傷にチラリと目をやると、開始の合図を出すように再度大きく吼える。


食事場と認識された会場へと魔物が一斉に降下してくると、人々の様相は一瞬にして様変わりし、先ほどの熱気は嘘のように冷え切ってしまう。


しかもこれだけの数の人間がひしめいていると、逃げるのも簡単なことじゃない。

誰もが我先にと押し合いへし合い逃げ惑う中、転倒した男性の上に大きな翼を広げた魔物が舞い降りてくる。


「誰かぁぁ!!!」

餌をついばもうと嘴を湿らせた魔物の頬へとカワイイ足が突き刺さる。

大きさからは想像だに出来ない威力にワイバーンは、錐もみ状になりながら近くの建物へとめり込み動かなくなった。


「おじちゃん大丈夫!?」

「あ…ああ。大丈夫だ。あ…ありがとう」

目の前の光景を飲み込めないのだろう。目を白黒させている男性を上から一通り見て大丈夫そうだと判断すると、その小さな足ですぐに地面を蹴る。


「ルウ!」

「わかってるわ!ただ、みんなパニックになって好き勝手な方向に逃げているから、あんまり期待できないわよ!」

ワイバーンの群れが見えた瞬間から、ステージ付近には出来るだけ広範囲のバリアの魔法を張っているのだが、そこから出ていくぶんにはなんの制限もない。


幸い大きなイベントという事で多くの衛兵さんが待機していてくれたことだろう。

倒せはしなくても、街の人が逃げる時間ぐらいは稼いでくれるはずだ。

それに人間が多いからか、群れはこのイベント会場に集中していて、他の所にいく気配は見当たらないから、短期決戦でいけば被害もすくなくできるかもしれない。


ステージ上では、へたり込むアクークの目に悲鳴を上げながら逃げ惑う人々の姿が映る。

こんな時にこそ、冒険者の私が頑張らないといけないのになぜ座り込んでいるのだ?

肩書だけといえども、私はAランクに席をおいているのだ。

それなのに、襲われている人をただ眺めているだけ…


いや、いや。密かな誇りだった剣ダコもいつの間にか綺麗に無くなって、変わりにお高いハンドクリームの染み込んだこのぷよぷよの手で、一体何が出来るというのだ。


乾いた笑いを浮かべる数メートル先で、懸命に戦っていた衛兵が血を流し膝を折る。

足に力を込める。

誰が貼ったかわからないが、このステージ周辺には結界が張られているみたいなのだ。

あの衛兵もコチラに引き込めば、きっと助かる。

だから、一歩足を前に出して手を伸ばす。


だが、それ以上に恐怖で体が動いてくれない。

「あ…「間に合えぇ!」

衛兵に鋭い爪を突き立てようとしたワイバーンの背中に一筋の影が落ちてくる。


爆発が起こったような衝撃をまき散らした中心には、どこかで見た事のある少女が魔物の上に堂々と立っていた。




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