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第十六話 ➀ イベントだ!


「ほら来週この街で新パック販促記念イベントがあるだろ。そのスポンサーがウチの呉服問屋なのさ」

「ああ。だから、三枚も持ってたんだ!」

「そそ、自分で当てたわけじゃなくて、貰いもの」


「なぁんだ、ズルだったわけ。ソンケーして損した気分!」

「チミは何言ってんだよ!立派な金の力だぞ。まぁ父さんのだけど…」

「まぁいいじゃん。自分が望んでる望んでいないは別にしても、お前の持ち物の一つなのは確かさ」


ソロが遠い目をして言うと、説得力がある気がする。

こんな時はやはり日頃クールキャラでいた方がいいのかもしれない。

ユーネも笑う時はフッって言うようにしようかな~。


なんてどうでもいいことを考えていると向こうから男と女の二人連れが歩いてくるのが視界に入る。

「…え?」

何気なく見た女性の方はフードを深く被っているけど、ユーネ達の身長からすれば普通に中の綺麗な顔が覗けてしまう。


だが、自分の目が信じられなくて、隣のミトラちゃんの裾を引っ張る。

ミトラも察してコチラの視線を追って顔を上げる。

そして二人して目を合わせる。

だってそこを歩いていたのは、ユーネが貰ったばかりのカードに描かれた人物だったからだ。


「あー!あーー!!あーーー!!!アクークさんだ!!ミトラちゃん!アクークさんだよ!」

突然の叫び声にフードの女はびくりと体を震わすと走ってきて、指をさす少女の手と口を塞ぐ。

「ちょっと!静かにして!変装しているのにバレちゃうでしょ!」

目を見開くユーネも察してコクコクと頷くとゆっくりと手が離される。


「あなた…私のファンなの?」

再び頷くと、キラキラした目をしてさっき手に入れたばかりのカードを見せる。

「…そんなカードもう持ってるの」

感情を感じさせない顔をして、無言でカードをひったくると何処からか取り出したペンで何やら書いてずいっと返す。


「…うおお!えぐいって!サインサイン!」

カードに何か書いているのは当然見えていた。だが、サインかもしれないと期待を高めると後でガッカリしちゃうから、グッと自分を押さえていたところにこれだ。最高過ぎる!


「静かにするって言ったでしょ?」

「あ、ごめん!」

「わかったら、次から見かけても叫ばないでね」

それだけ言うと返事も聞かずにスッと立ち上がると、そのまま歩いていった。


「ユーネちゃん、よかったね!」

「うん!マジで最高!でも、なんでこんな所にいたんだろ?」

「それは今さっきセブレ君が言ってたイベントに出るからじゃないの?」

「マジで!?そうなのセブレ?」

「そこまで知らないよ。だってオレ興味ないもん」

「クッソ!じゃあちゃんと調べといて!ね!ね!約束だかんね!」



     ◇



「おい、アクーク。そろそろ時間だぞ。相変わらず頭痛が酷いのか?」

ドアが開き、足音と共にテーブルに突っ伏しているアクークに声が掛る。


声の主はNTRから派遣されて、マネージャーをやってくれている男の声だ。

頭の中央にピンと立った一本の髪の毛をいつも気にしている変な男だが、とても有能な人物で、運営からの信頼も厚く、常にこうやって気を使ってくれている。


「うん。まぁいつものことだから。それに来シーズンの契約も考えるとこのイベントがしっかり成功させなきゃいけないしね」

そう言うと、立ち上がり表情を作りながらドアへと向かう。

「おい!ちょっと待て!」

突然酷く焦った様子で呼び止められる。


「な、なによ!?」

「お前、手が…」

なんの話かと、自身の手に視線を移すが何事も無い。


「何もないけど…?」

「あ…い、いや、すまん。オレの見間違いみたいだったみたいだ…」

「もう、緊張してるの?しっかりしてよ。ほら、本番始まるんでしょ!行くわよ!」

「ああ…」


男の目にはアクークの手が透けたように見えたが、どうやら勘違いだったようだ。

最近忙しくてオレも疲れてるのかなと、マネージャーはそう思いアクークの後を追いかけていく。




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