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第十五話 ④ 友達だろ!だ


「羽ばたけ蝶よ」

蒼い騎士が手を振ると周りを羽ばたく蝶が持つ角灯が輝く。

伸びでる光は、もの凄い速度で金色のゴーレムの頭部以外を貫いていく。

セブレの変化を思い出すと、きっと頭部以外は大丈夫だと思ったからだ。


「がああああ!!」

次々に放たれる光に、ゴーレムの体はボロボロと崩れ、遂には片腕が落ちる。

落ちた腕は低い音を立て地面を鳴らすと、腐った色のヘドロに変わり流れていく。

堪らず片膝を付き体勢が崩れた巨体に向けユーエルが叫ぶ。


「このまま、押し切られてもらう!」

「やらせるかぁ!オレ様は生まれ変わったんだ!」

膨大な量の魔力を爆発させると、止まったと思われていた金貨の流れが再び始まり、輝きを増しながら再生を加速していく。

明らかに異常なほどに。


「どへ、どふぇふぇうぇええ!むむむ無駄だ!ムダ!そう、むだなんだよ!いくら頑張っても、どうせ誰もオレを見てくれない!オレはお父さまの機嫌をとるための他人の道具で、他人に言うことを聞かせる為のお父さまの道具なんだ!」

悶えだしたゴーレムは突然空を仰ぎ、吼える。


「なに!?お父さま?怪人がおかしくなった?」

「おかしくなったというより、力を増したせいでセブレ君の心に入り込みすぎたみたいね」

「じゃあ、助けられないの!?」

「そうね。このまま長引くと精神が混ざり合って離れなくなるでしょうね」

ルウは相変わらず怪人ではなく、少し違うところを見ているみたいだけども、逆に言うとそれが出来る余裕があるという事だ。


莫大な魔力を有しながら、それを御しきれていない。というのが最初見た時のルウの見立てだ。

正にその通りなのだろう。あの双子のように天候を変化させてもおかしくないほどの力を持っているのに、出来るのは金貨を出して強大なゴーレムを形成するだけだ。


「だからと言って、油断は出来ないわよ!」

「わかってる。前みたいに逃がすわけにはいかないし、ボンボンも助けなきゃいけないしやることいっぱいだけど、まぁ任せておいてよ」

まだ、方法は思い浮かばないけど皆もルウもいるし、なんとかなるに違いないっしょ!



     ◇



こいつらは…いつも父さんの顔色を見ながら、オレにヘコヘコする。

みんなが見てるのは父さんとそこにある金だ。

オレじゃぁない。


誰もオレのことを見ようとしないくせに、絡んでは来やがる。鬱陶しい。興味ないなら放っておいてくれ。


それはだんだん怒りに変わってくる。

その怒りが、刺々しい言葉になって外に溢れ出たとき、周りの視線が初めてオレに向いた。

だから、試しに金におびき寄せられた馬鹿どもを煽ってみる。


こういった人を不快にさせる言葉も最初は難しかったが、慣れてくるとみんながちゃんとオレを見てくれる。嬉しい。

だけども、時間が経つと悔しそうな顔をしたやつらが、お金は汚いとか馬鹿を言い出す。

あれだけこっちに顔を向けなかった癖に、目を引かれ出すと今度は否定し始める。


寄ってくるのはそっちからだろ!

冒険者とかいう奴らだって、暴力、権力を持っているヤツが偉いだろうが!それが金の力でも親の力でも構わないだろ!目に見えようが見えまいが同じ力だ!

自分にないものを羨ましがって、否定してきてんじゃねぇよ!


「結局、どっちにしろオレを認めないんじゃないか。ならオレは…一体なんだんだよ」

ゴーレムの嘆きは、遂に周囲の地面までの金貨に変えていく。

まるで金色の海のように波打ち広がっていき、このままでは街は飲み人も動物も変わり果ててしまうだろう。


「そんなこと、知るかぁ!!」

蒼く尾を引く拳がゴーレムの頬へと突き刺さる。

砕け散る顔の中にセブレの姿が見えるが、すぐにコインに覆い隠されてしまう。


「グダグダ言ってないで、認められたいなら今出来ることをやれ!」

「うるさい!お前になにがわかるんだ!そんな強くでカッコよくて、おまけに空まで飛べて!どうせ英雄扱いの人気者のクセに!オレの気持ちなんてわかるわけないだろ!」


「あなた!ユーネがどれだけ…」

「ルウいいんだよ。ありがと」

ルウが怒ってくれたことに心を温かくしながら、大きく息を吸う。


「甘えるな!!わかる、わからないなんて関係ないんだよ!!親の力だろうが本人の力だろうが、他人に嫌な思いをさせてれば、誰だってお前なんか見たくないつ~の!当たり前だろ!」


「うるさい!じゃあ、どうすればよかったんだよ!?厳しい親、その親しか見ていない他人。そんな雁字搦めの中にいたオレにはどうにも出来なかったんだ!」

「雁字搦め?何言ってんだ?金持ちなら美味しい料理の勉強でも面白い大道芸の修行でも、皆を笑顔にする力を得るための環境を好き選べただろうが!それを無視して簡単な方に進んだのはお前自身の選択だろって!」


黙り込みセブレに、少し呼吸を整える。

ユーネだって、わかっている。外から見て冷静に判断できるから、そんな簡単に言えるんだって。

実際に自分がその環境と立場になったら、どうなるかわからない。

でも、ユーネはミトラちゃんが手を伸ばしてくれたように、ユーネも誰かに手を伸ばしたいんだ。


「ほら、まだ遅くないだろ。他人に自分の機嫌を取ってもらうようなことは止めて、自分の主導権を取り戻せ!」

「そんな…今更…」

「心配すんなって!だってお前にはユーネ達が…友達が付いてるだろ?」

「友達…お前たちがこんなオレの?…うん。うん、ありがと、やってみる…」

ゴーレムの眉間の周りから、ボロボロと崩れて土くれに還っていく。

途中で金貨に変わった人たちも気を失っているようだが、無事のようでなによりだ。

暫くして泥の山となった頂点には、目を閉じたセブレが横たわる。


「核であるセブレ君を失うと同時に魔力も失ってしまったようね」

「うん!今の内に!」

まだ決着はついていない。体の中に怪人がまだいるのだから。




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