第十五話 ➂ 貸し借りだ!
「も~何言ってんの?時間ないんだから、ワガママ言わないの」
「確かにワガママだけどさ。オレがちゃんとミラーボール男をちゃんと倒しておけばアイツもこんな目にならなかったわけだろ。だから、その責任をだな」
「はぁ~ホント馬鹿真面目なんだから」
ミトラが呆れながらユーネと目を合わせ一緒に肩をすくめる。
「責任っていうんだったら、これ以上被害が出ないようにすぐに動く!それにその理屈だと、前に倒し損ねたユーネにこそ責任があるわけだからね!悪いけど譲れないよ!」
そもそも、あんな凄い魔力を使いこなせてたりしたら、リーブルたちを守っている余裕はなくなる。
「ソロリズもいざとなったら、無理にでも二人を抱えて逃げてね」
『ああ、わかってる。だが、そんな必要がないようにしてくれるんだろ?』
「…ふふ…もちろん!このユーネちゃんに任せんしゃいよぉ!じゃあ、いくよ、ルウ!変身!」
◇
ユーエルは街を囲む堅牢な壁を盛大に破壊しながら、一つ目のゴーレムは更地まで誘導していく。
元ヘドロ男としては別に抵抗して、街に居座ってもよかったのだが、ただのガキだと思っていた奴が、まさかあの黒騎士だったという驚きと、力の試すのであれば広い方が動きやすいという理由で黒騎士の挑発に乗り街の外まで誘導されることにしたのだ。
「よし!ここでいいっしょ!」
大きく羽を広げるユーエルの眼下に広がるちょっと前まで森があった更地。
ここなら、多少暴れても被害はそんなにはないだろう。…多分。
「本当にいいのか?こんな何にもない所で死ぬことになっても」
「なにそれ?もしかして自分に言い聞かせてるの?大丈夫、気にすんなって!マナに還れば仲間が沢山いるからさ」
「どへへへ。相変わらず面白い奴だな。だが、前回の様に不用意に外に出る様なまねはしない。そうすれば、お前に出来る事は無いんだからなぁ!」
言い終わると同時に三本の指を大きく広げた手を向け叩き付けてくる。
ユーエルは迫る強大な手の平に拳を打ち付けると、爆発音が響き渡る。
それがゴングだったかのように、一気に互いの魔力が膨れ上がり嵐のように周囲の物を吹き飛ばしていく。
「うおおおおお!!」
まずはユーエルが両腕でのラッシュを放ち、怪人の手は砕け金貨となってキラキラと飛び散っていく。
「どうだ!出来ることがあったみたいだな!」
「…もしかして、手を吹き飛ばしたことを言っているのか?」
ゴーレムがいびつな形となった手を振りあげると、金貨が集まり再生されていき、悔しそうに口を曲げる黒騎士に小さな満足感を得る。
「ぼっとしてんなよ。まだオレ様の番が残ってんだろ」
再び振り下ろされくる手に向け、再現のようにユーエルの拳が突き出されるが、直撃する瞬間に数多の金貨に分かれてしまい、先程のように吹き飛ばせたりはしない。
しかも、金貨はそのまま輪になりユーエルを一気に縛り上げる。
輪をぬけようとほんのひと時、目を離した瞬間に金色の拳が頭上から叩き付けられる。
苦悶の声を上げ、落ちながら認識を改める。
決して油断したわけじゃないのにも関わらず、反応出来たときには遅かった。
あれだけの強さをどうやってとルウがぶつくさ言っているが、難しいことを考えるのはユーネの担当じゃない。
今は目の前の敵にもっと集中しなければ、約束を守れないという事だ。
黒い鎧の内にぐっと決意と魔力を秘めながら地面に激突すると、辺りを濃い土埃が埋め尽くしていく。
「どうした?このくらいでやられたなんて言わないでくれよ?こっちは沢山借りてるものを、じっ~くりと返してあげたいんだからよ」
見えなくなった黒騎士に、余裕の笑みを浮かべる元ヘドロ男。
「ハッ。意外と真面目なんだな。そんなの遠慮せずに地獄までまるっと持っていきな!」
ユーエルの言葉に合わせて煙の中から、大量の蒼い光が漏れ出す。
「どへへへ!つれないこと言うなよなぁぁぁ!!」
言葉とは裏腹に背中に冷たいものが落ちる。
そんな気持ちを振り払うように、硬く握られた拳を思いっきり叩きつける。
しかし、本当にそう思っているのか疑わしい程の爆発がおこり地面が穿たれる。
「どへっ、へへっへ。どうだ?少しは気が変わったか?」
「はぁ…その程度で変わるわけないだろ」
どうゆう事か頭上から聞こえた返事に慌てて空を見上げると、そこには不敵に笑う蒼い騎士が浮かんでいた。
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