第十四話 ➂ 逆転だ!
怪人が呆気に取られている中、リーヴルが口を開く。
「ミラーボールってのは、強い光を反射して辺りを照らすもんだろ。その反射する光が無くなってしまえば…どうだ?」
「な、ないぃぃ!!しまったぁぁぁ!!!」
「獲物を追い込んだと思いこんでいたんだろうが、追い込まれていたのは自分の方だったな」
「だ、だが、こんな真っ暗闇だとそっちだって攻撃できな…い…。まさか…」
「こっちには気が付いたみたいだな」
風の魔法を放ち終わったリーヴルが閉じていた目を開くと、剣を片手に一気に距離を詰める。
怪人は自慢の体を袈裟切りにされた痛みで、やっと人間が目の前にいる事に気がつく。
だが流石というべきか、続けてくるであろう次の刃に対し即座に退避行動をとる。
それでもリーヴルの体が万全な調子であれば逃しはしなかった。
だが今は半分とはいえ体の自由を奪われていることで、ほんの一秒程度の遅れが生じてしまったのだ。
その隙にミラーボール男は丸い体を高速で回転させ即座に閉じたドアをぶち抜き部屋の外へと転げ出ていく。
「しまった!」
勝利を確信していたリーヴルは、敵の以外な行動に焦る。
プライドの高い怪人が人間相手に逃げるようなことはしないと踏んでいたのだ。
ここで逃がして街の外まで行かれたら、追跡しようがない。
カクカク動く手足を引き摺り、晴れ渡る外に出ると以外にも怪人は逃げずに怒りに燃える顔で魔力を溜め初めていた。
「この街にはジワジワと体を支配される恐怖を与えていくつもりだったが、それじゃオレの気がおさまらねぇ!だからスカッとさせてもらうぜ!街中の人間をオレの眷属にしてよぉ!だが、お前も勘違いするなよ。これはオレ様を怒らせたお前が悪いんだからなぁぁ!」
「クッソぉぉ!!」
自身の力不足に心が折れそうになりながら懸命に駆けるが、怪人の攻撃にはとても間に合いそうにない。
「パパパパッ!!くらえぇぇぇ!!!」
人間の悔しそうな顔に口角を上げるミラーボール男が、溜めた魔力を解き放とうとした瞬間、二人の間に閃光が走り爆発が起こる。
突然巻き起こった強烈な衝撃に双方、本能的に防御行動をとりながら、煙の向こうにいる者に注視する。
徐々に晴れてくる爆心地には一本の大きな斧が突き刺さっており、その上に黒い騎士が静かに降りてくる。
斧の上に立った黒騎士は、リーヴルに向けおもむろに指さす。
「もう!遅刻しないようにって前の会議で言ったばっかでしょ?ちゃんと聞いていたの?」
黒騎士から発せられる声に、お前が言われた方だろと呟きながら、つい先ほどまで歪んでいたリーヴルの顔が笑顔に変わる。
「うるせぇ!どうせお前も遅刻したんだろ!」
「う…」
黒騎士は都合の悪い言葉など聞こえないふりをして、地面に下りると斧を肩に担ぎ怪人の方へと向き直る。
「で、あんたが遅刻の原因みたいだね」
「遅刻ぅ?訳の分からないことを!そんなことより貴様知っているぞ。怪人を次々に倒しているという噂の黒騎士だろう。だが、現れたタイミングが悪かったな。
今しがた街中を飲み込めるほどの魔力が溜まった所だ。
大方カッコつけて出て来たんだろうが、これで貴様も一緒にオレの支配下だ!さぁ今度こそくらえぇぇ…え…え?なに?」
戸惑いの言葉に合わせて丸いミラーボール男の体が斜めにズレていく。
「き、切られた?このオレ様が認識もできずに…?」
「そういうこと。のんびりお喋りしすぎなんだよ。でも、わざわざ手を下すまでもなかったね。あんた、その胸の大きな怪我でもう殆ど終わってたよ」
いつの間にか、背後に立つ黒騎士が呆れたように口を開ける。
「ぐおぉぉぉぉ!!!」
悔しさをにじませた声を上げ体が二つに分かれると、赤い光をばら撒きながら爆発して消えていく。
「ふぅ。ホント、リーヴルちゃんは手がかかるわ~」
なんて額の汗を拭うフリをしながら、振り返ると変なおかっぱ頭のガキが走り寄ってくる。
「すげーなチミら!今日からオレの子分にしてやるぞ!?な、嬉しいだろ?ほら、ありがとうございますって言ってみよろ!」
「…何コイツ?」
「さぁ。知らない奴。巻き込まれたから一緒に逃げてきただけ」
確かにさっきから、居たことはいた。
てっきりリーヴルの知り合いかと思っていたけど、困った様に肩竦める様子は嘘でもないみたいだ。
「ふ~ん。まぁいいや。じゃあ皆もう駄菓子屋さんに移動してるから、先に行ってるね」
「おう。じゃあまた後でな」
◇
そんなこんなで、リーヴルが駄菓子屋さんに着くと既に変身を解いたユーネといつも面子が真ん中で二つに割れるソーダ味のアイスを分け合っている所だった。
「あれ?オレの分は?」
「オレのって、ルウは食べないって言ってるから、ユーネとミトラちゃんでしょ。それにソロとリズで丁度じゃん」
「マジかぁ~どうしようかな~今月ピンチなんだよな~!」
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