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第十四話 ➀ パーティータイムだ!


教会の就任式典から数日たち、いつもの平穏さを取り戻し始めた朝。

いつものようにリーヴルが世界征服会議に出席する為に大通りを歩いている。

彼はなんだかんだ文句をいいつつ、いつも誰よりも早く公園に到着している。それこそミトラよりも早くだ。

当然一番遅いのはユーネなのだが、みんな慣れたもので眠そうな目を擦りながら現れても何も感じなくなっている。


そんなリーヴルが通りをぬけ、白く染まるほど陽の光を反射する小川に差し掛かった所で、不思議な人だかりがあることに気が付く。

中心からキラキラした光が漏れ出しおり、周囲の人達も何かカクカクとした変な動きをしている。


「なんだ?」

好奇心と相まって見慣れぬ光景に引き付けられるように、近づいて行く。

するとある一定の距離まできたところで、踏み出す足がカクカクと一動作おきに一瞬制止してしまう。


これは!と思ったときはすでに遅く。徐々に体を制限する力は強くなってくる。

それでも正体を暴こうと不思議な力に抗い、中心が見える位置まで近寄ったところで光から声が上がる。


「ヘイ!お前ら楽しんでるか!?このパーティータイムをよぉ!」

まん丸の銀色のボールが叫び体から七色の光を放つと、周りにいる数匹のぐちょぐちょしたスライムが音楽に合わせて波のよう縦に揺れ始める。

その様子はまるで野外のダンスホールのようだ。


いや、そんなことはどうでもいい。

スライムだって、雑魚だし無視していい。

だが、真ん中で光っているあのボールは確実に怪人だ。

すでに片足に制限を掛けられてしまってはいるが、このままユーネ達が来るのを待っていては、多くの人が恥ずかしい思いをさせられてしまう。


だって怪人の能力でこんな素人感丸出しのロボットダンスをさせられているんだからな。

下手すぎる自分の体の動きを見ながらオレが何とかしなきゃ!と両親から受け継いだ正義感を燃え上がらせる。


リーブルは手を正面に付き出し、手足の生えたミラーボールに向け火の魔法を放つ。

ゴゥッとわかりやすい音を立てて迫ってくる火の玉に気が付いた怪人は、高速で体を回転させると、何ごともなかったかのようにそれを弾き飛ばした。


「んん?なんか、ノリが悪いやつがいるみたいだな?このミラーボール男様のグルーヴによぉ!」

怪人はそう言ってコチラへ向き直ると体の一部から光の帯を放つ。

もつれる足に力を入れ横に飛ぶが、躱しきれなかったのか左手が器用に踊り始める。


クッソ!あの異様にキラキラした光のせいか!

一つ悪態をつくその間に、距離を詰めてきた怪人の硬く握った拳を振り下ろされる。

変なダンスを強制させられているせいで、防御が遅れモロに顔面を打ち抜かれてしまった。


たった一発だが、人を越える怪人の攻撃だ。かなりのダメージだ。

このままじゃヤバいな…作戦もなしに揚々と攻撃を仕掛けたことを後悔しつつも、今はそんなことを言っている暇はない。

なぜなら怪人の中に魔力が集まっていっているからだ。


「パッパッパッ!さぁ喜べ!これでお前もパリピの仲間入りだぁ!」

力を溜めるように、腕を折りたたみ腰を落とすと、光が強まっていく。

そんなことになったらユーネ達に笑われるのが目に見えている。

望まない未来の想像に背筋を冷たくすると、風魔法を地面に叩き付け煙幕を張り、自身の体も浮かせる。


「ちゃんと動くのは右手と左足だけか…」

頭を冷やす代償は大きかったが、痛いがあるわけもないし、まだ何とかなると前向きに思いなおし一旦隠れる路地に逃げこむ。

体形を活かし転がりながら追いかけてくるのが見えるが、大した速さじゃない。

このまま距離をとりつつ、公園までいけばユーネたちもくるだろう。

全員で掛ればこの不思議な能力でも負けることはない。


全員がそろってからの作戦を考えながら、狭い通路に身を隠していると、突然後ろから声が掛る。

「おい、チミチミ。変な動きしながら何してんだ?」

驚き振り向くと、そこには飴を咥えたアホそうなおかっぱ頭が立っていた。

年齢は同じぐらいだが、初めてみる顔だ。


勿論、街の子供の顔を全員覚えているわけじゃないが、こんなふくよかでテカテカした顔の奴がいれば目立つだろう。

だが今はコイツがどうとかは考えている余裕はない。


「馬鹿!大きな声だすなって!見つかるだろ!」

「見つかる?ああ、かくれんぼしてんのか!じゃあオレも混ざってやってもいいぞ!嬉しいだろ?」

「違うし、なんで上から目線なんだよ!!」

大きな声を出すなと言いながら、自分が一番大きな声を張り上げると言うオヤクソクを果たし、無事に見つかってしまう。


「お!そんな所に居やがったか!しかも友達も連れてきたのか!いいぞ、だったら二人仲良く魂を解放して踊り狂うといいさ!」

「ほら見つかったじゃねぇか!」

怪人を目の前にしてもボーっとしている少年を見捨てるわけにもいかず、抱えながら横に飛び放たれる光をかろうじて躱す。


まずいぞ。オレ一人でも大変なのに、見るからに甘ったれたボンボンみたいな奴を庇いながらは分が悪すぎる。だからと言って、見殺しにもできないし。

とにかくもう一回距離をとるしかないか!


リーヴルが石畳に手を付き魔法を発動する。

すると、みるみるうちに土が盛り上がっていき、通りを塞ぐ壁になる。

「今の内だ!行くぞ!」



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