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第十三話 ⑤ 栞見つけただ!


突然の爆発音が耳に押し入ってくると、それは無理矢理にユーネをまどろみから現実へと引きずり戻す。

唸りながら、ちらりと時計に目をやると十二時を少しすぎたところだ。

眉間に深い皺をよせ明らかに不機嫌な様子で、窓へと向かい外の様子を伺う。


すると少し離れた場所に白い煙が上がっているのが見えた。

あの場所は今日みんなで、ジジョーチャーシューを受けたあたりのはずだ。


「あの泥棒たちに何かあったみたいね」

いつの間にか隣に来ていたルウが口を開く。

「ふぁあ~だね~。なんかリーダーはあの中にはいなかったみたいだから、助けにきたのかも」

「その可能性が高いわね。けど、行くの?脱走されても別にユーネのせいってわけじゃないわよ」

「ん~まぁそうなんだけど…なんか変な感じがするんだよね」

「じゃあ、後から後悔しないように行っておきましょうか」


二人は観音開きの窓を大きく開けて、パジャマのまま外に飛び出すと屋根の上を走り出す。ほどなくして着いた先に広がっていたのは、見慣れない化け物が街を破壊している光景だった。


「ちょっと待って!なにあれ、怪人!?」

「いえ、なんか違うわ。あれは多分…人よ」

「ひとぉ?」

「呪い…のような何かの力で強制的に体を変えられている感じのように見えるわ。あ、ほら、真ん中をよく見て」


ユーネが眩しくもないのに、両手で眉の所に「つば」をつくり、異形の化け物を観察する。

すると幹の真ん中に、人の顔が付いているではないか。まるで「お遊戯会の木の役」のように。

しかも、その顔は昼間捕まえたばかりの盗賊達のような気がする。


「うげ。きっしょ…」

「でも、このまま野放しにはできないわよ」

二人の会話が合図であったかのように、樹の化け物が駆けつけた衛兵たちに覆いかぶさっていく。


即座に屋根から飛び出すと、今まさに振り下ろされようとしている枝ごと蹴り飛ばす。

吹き飛んでいったすきに、尻餅をつく兵隊さんを遠くに投げ飛ばす。

乱暴だけど、ここにいるよりもずっと安全だ。


「こんな夜中に大騒ぎしやがって!眠いんだからさっさと終わらせるぞ!」

腰を落とし気合を入れるユーネに反して、化け物たちはちらりと視線を送るだけで笑い出す。


「おいって!なに笑ってんだよ!」

「昼間と同じだろ?なんで、無理して戦わなきゃいけないだんよって思ってんだよ」

横から現れた人物が、ふふんと偉そうに肩に手を置いて来る。


「リーヴル!あんたこんな時間に起きれたんだ!」

「それはこっちのセリフだっつ~の」

「あっぶな~い!今度は間に合った~!」

今度はミトラちゃんが駆けてくる。

「今度はボクが一番だね!」

更にその脇を犬の着ぐるみが駆けていく。


「あ~!ソロリズ、ズルいって!」

ユーネが叫ぶ間にもリーヴルやミトラちゃんがお先にと言いながら駆けていく。


慌ててユーネ達も走り出す。

まずはさっき蹴り飛ばしたやつからだ。

流石に中身が人間だと分かっているから、変身して真っ二つにするようなことはしない。

もしかすると、元にもどれるかもしれないからね。


一応そのことを戦いながらみんなに知らせる。

勝利条件が付いても、こいつらは動きも遅いし、攻撃も大振りだから遅れをとることは無いだろう。


ルウが顔をひっかき、怯んだところをユーネがオラオラと拳をぶち込むと近くの建物の中へと吹き飛んでいく。

うん、やっぱり大したことないね!


「なんなんだよぉ!こんないい気分なのに邪魔すんなよぉ。あ~腕が折れてやがるぅぅ」

崩れた建物の中で、化け物が涙を流し叫び散らす。

「いてぇ~よぉ~!リーダーどこいんだよぉ~。助けてくれよぉ!」


「泣いても何も解決しない!ユーネだってね、もう何回もその手は試したことあるんだから、知ってるの!」

「それとこれは違うでしょ」

化物は不思議な説得力のある叱咤に押されて、思わず目を泳がせてしまう。

すると、その目は闇の中の何かを見つけたようで、反転顔をほころばせる。


「あ!リーダー!そんな所に居たのかよぉ~早く助けてくれよぉ~」

「‥‥‥」

人の隠れられるようなスペースはなかったように見えたが、そこから頬のこけた骸骨のような男がスッと音もなく出てくる。


「お前がリーダーってやつか。仲間を助けに来たんだろうが、そうはさせないからな!」

そいつはチラリとこちらをみると薄く笑うと、突然真横に現れた棺桶を開け、中から剣を取り出す。


「ルウ。今の見た?」

「ええ。わかりやすく光ってたわね」

あの棺桶が何かは分からないけど、剣を取り出す際に見えたあれはリーヴルの栞だったのだ。




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