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第十三話 ➂ 探偵みたいだ!


ユーネ達は閑散とした住宅街に入ると、すぐに怪しい奴らを見つける事ができた。

急いで崩れた建物の脇に入り身を隠す。

隙間から少しだけ顔をだし、泥棒と思わしき奴らを観察することにするのだ。探偵みたいにね!

怪しい奴らは復興作業員の様な体裁を取り繕ってはいるが、瓦礫を撤去したり、救助に来ている人達とは明らかに動きや目線が違う。


「おい、ユーネ。あれ、そうだよな」

「うん。妙にキョロキョロして何かを探ってる感じだし。間違いないっしょ!」

物陰からの立ち上がり、飛び出そうとするユーネの腕をリーヴルが慌てて掴む。


「待てって!あいつ等九人もいるんだぞ」

「人数ぐらい数えられるって。それにユーネたちだったら楽勝でしょ?」

「じゃなくて。泥棒がわざわざ正面から戦ってくれると思うか?」

「あ~一斉に違う方向に逃げちゃうか」

確かに纏う空気は鋭いが、その体格はお世辞にも戦闘に向いているとは思えない。


「そうそう。だから、アジトに戻って油断している所を一気に捕まえようぜ」

「よし!そうと決まったらフジザクラシークレット秘密警備隊、漆黒のノワール出動だ!いくぞ!新入り!」

「お前…それ人前で絶対言うなよ?こっちが恥ずかしいんだからな」

隣で黙って聞いていた黒猫が何度も力強く頷く。


変な顔をしたリーブルたちを無視してそのまま暫く尾行していると、怪しい集団は都合よくぞろぞろと細い路地に入っていく。

「フヒ!アイツらきっとアジトにいくつもりなんだよ!尾行されていることにも気づかずにさぁ~」

鼻息を荒くするユーネに先頭に二人もつづいて、路地に入っていく。


はっきり言って、三人とも完全に油断していた。

相手は怪人でもないし、ただのオッサンの集団だと。

ほんの数秒視界から外れただけだったにも関わらず、次の瞬間には頭上から降ってきた網に捉えられてしまっていた。


「なんだこいつら?つけられているから衛兵かと思ったらただのガキじゃねぇか。こんなんだとまたリーダーに足手まといとか言われちまうぞ」

ぞろぞろと正面から現れた男の一人が、苛立ちながら吐き捨てる。

「いいじゃねぇか。ガキは身代金でも奴隷でも、どうやっても金に出来るんだからよ」

隣の太った男がユーネを見ながらいやらしく笑うと、ほかの数人も一斉に笑いだす。


三人の遊び半分の尾行などとっくに看破されており、こいつらも何だかんだで場数を踏んだ立派?な犯罪者たちだったのだ。

ユーネが声を荒げ、睨みつけるが網に絡まって足掻く子供の姿にまたも笑いが起こる。

場が盛り上がったと思われたその時、小さな竜巻が目の前で回り始めた。


「伏せて!」

不意に背中から掛けられた声に合わせて、竜巻が破裂し男達を呑みこみ巻き上げていく。

建物より高く上がったところで急に風が消え、地面に叩き付けられることになった。


「や~っぱり!他のことして遊んでた!」

被さった網を抜け、後から聞こえてきた声に振り向くと、そこには大きな三つ編みを揺らした見知った女の子が立っていた。

「ミトラちゃ~ん!」

「もう二人とも約束忘れてたでしょ!」

「「あ…」」


思わず二人とも目を合わせしまったという表情を浮かべる。

「違うんだよ!リーヴルが嫌がるユーネを無理矢理に!」

シュチュエーション次第では、全く違った意味に捉えかねないセリフを吐くユーネに、へんに狼狽えるリーヴルが更に場の空気をおかしくしてしまう。


「もう昼ドラみたいなことはいいから、何してたの?」

「それが聞いてよ!リーヴルが、なんとあの栞を失くしたとか言い出してさ~」

「え~~!!あんなに大事にしてたのに失くしたの!?ホントに!?」

あまりのことに、先程までの不機嫌は一瞬で霧散してしまう。


「だよね。驚くよね。まったくこの子は世話がやけるのよね~」

「うっせ~よ!言われなくてもわかってるつ~の!」

「で、栞を失くした事とこのいかにも犯罪者って人たちと何の関係があるの?」


もっともな疑問に泥棒に盗られたんじゃないかって話になった経緯をリーヴルが説明する。

「なるほど。確かに古いけど綺麗で高価そうだったもんね。あれ」

「でも、持ってなさそうだよ。この人たち」

二人が話している間に、ユーネが気を失っている男たちをパンツ一丁にして服を漁っている。


リーヴルはどっちが泥棒かわかんねぇなと口にだそうとするも、寸前のところで思い留まる。

だって、せっかく自分から矛先がそれたのだから。


「うん。入ってたのは小銭ばっかで、栞はないや」

「じゃあ、そこの網で縛ってから衛兵さんに引き取ってもらおうよ」

「だったらオレが父さんを呼んで来るから、見張っててくれよ」


それから暫くして駆けつけたおじさん達と一緒に衛兵さんの詰め所まで同行する事になった。

ジジョウーチャーシューをしなきゃいけないらしいからだ。

ますます事件モノぽくなってさらにユーネの心を盛り上がっていく。


「あ…でも、イカ焼きが…まっ明日でもいいっか!」




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