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第十三話 ➁ ズルいだ!


「はぁ~~~?あれだけ大切にしてたのに失くしたの?バッカじゃないの?…バッカじゃないの?」

「二回言わなくてもわかってる!!わかってるよ…」


あからさまに落ち込む様子に、流石にこれ以上言うのは可哀想な感じがして、取り敢えずその辺に転がる本を拾ってパラパラとめくってみる。


「わかったわよ!ほら、早く探そ!そんで、最後に見たのはどこでなの?」

「ん~それも記憶にないんだよ。いつも本に挟んであるって思い込んでたからさ。でも昨日は絶対あったんだって!」

「昨日は、世界征服会議の日だったでしょ…そう言えば、会議終わった後でミトラちゃんに勉強教えて貰ってたじゃない。そん時じゃないの?」

あ!と何か思いだしたようにリーヴルが顔を上げてこちらを見る。


「ほら~。じゃあ早速公園に行ってみよ!」

「ああ!そうだな!」

二人は散らかる部屋をそのままに一気に階段を駆け下りていく。



     ◇



ほどなく公園に着いた一行は、テーブル周りや植え込みの中などぐるっと見てまわる。

栞なんかは小さくて軽いので簡単に風に乗って飛んで行ってしまうが、意外とその辺に引っかかっていたりするかもしれないと、細かい所まで念入りに探してみる。


小さな隙間なんかは嫌な顔をするルウに頼んで、中に入って貰ったり、細かく見ていったのだが、見当たらない。

「ここじゃなかったみただね。じゃあ次は帰った道を探してみようよ」

ガッカリするリーヴルを元気づけるように、すぐに手を取って走り出す。

しかし、いつも以上に人がひしめき合う通りを見て三人とも無言で固まってしまう。


公園に向かうときは時間も早かったし、すいている裏道を通ってきたので特に気にしていなかったのだが、実際にここから何かを探そうと意識するとゾッとしてしまう。

こんな中からちまちま探していては、見つかるものも絶対に見つからない。

そこで、ルウの提案で毎日ここでお店を出している人達に聞いてまわることにする。

もしかすると朝から店の前を掃除する際に見つけてくれている人もいるかもしれないからね。


「よし、じゃあ端のお店から順番に聞いていこうか!」

ユーネはなりきり探偵セットを持ってこなかったことを後悔しつつも、そうそうと走りだす。

すると数件まわったとこで八百屋のおじさんから気になる情報を入手することが出来た。


「綺麗な栞?ん~見てないな~。もしかすると、盗まれたんじゃないのか?」

「「盗まれた!?」」

考えている事が全く異なる二人が同時に声を発し目を合わせる。


ユ:コレはかわいいユーネちゃんの会の名声を高めるチャンスでは!?フヒッ!

リ:そんな犯罪は見過ごせない!すぐに犯人を見つけなきゃ!


「いや、多分だぞ、多分。先週ドラゴンが暴れただろ?こんな災害があった後は色んな奴が街に入って来くるんだよ。火事場泥棒なんかも多発してるらしくてよ。もしかするとって思ったんだよ」

「あーだから父さん、ここ最近朝早く出て行って、遅く帰ってきてるのか。祭りの準備じゃなかったんだな」

街の治安に頑張っている父親の姿を想像して誇らしく微笑むリーブルの後でユーネがコソコソ何か聞いている。


「ねぇねぇルウ、火事場泥棒ってなに?」

「火事とか災害があったらみんな家の外に避難するでしょ。そうやってみんなが居なくなった隙に、泥棒に入る事よ」

「うわ!最悪じゃん!ねぇリーブル。このユーネちゃんが火事場泥棒って何か教えてあげよっか?」

「オレも聞いてたよ!」


「もうっ!こんな時は、そうなんだ!凄いね!君は悪くないよ!っていうのがモテる男の条件って前から何度も言ってるよね!?」

「なんの話をしてんだよ!」

度重なるツッコミにユーネが頬を膨らませる。

まったくリーヴルにはがっかりさせられるわ~。なんてマウントが取れなかったことを根に持ちながら自分勝手なことを考えているとユーネの脳裏にピコン!っといいアイデアが浮かぶ。


「あ!ちょっと待って!リーヴルの話はどうでもいいけどユーネ、わかちゃったかも!もしかして、ドラゴンが暴れた辺りにいけば、その泥棒に会えるってことじゃないの?」

「オレの話はって…まぁいいや。そうだな。あの辺の人達はまだ皆避難してて、人も少ないだろうから、犯罪はやりやすいだろうな」


「どうする?行ってみる?あんなキラキラして綺麗な栞が落ちてたら絶対に拾ってるって!」

「ん~今はどっちの可能性もあるからな~でも、泥棒を放っておけないし、そっちに行ってみるか」

子供達の物騒な話を聞き引き止めるおじさんに手を振り、人混みを避けながら街の南にある住宅街へ向かう。



     ◇



ユーネ達が住宅街へ向かってから暫くったころ教会の前の広場では、明日行われる催し物の最終準備に大人たちが慌ただしく動いていた。


そこから少し離れた所に一人の少女が退屈そうに大きな三つ編みを弄りながら街灯にもたれ掛かっている。


「もう。二人ともおそい~!」

声に出して、周りをビックリさせながらミトラが大きく愚痴をこぼす。

ここに集合って昨日約束したのに、ユーネちゃんもリーヴル君も一向にくる気配がない。

因みにソロリズ君達はお父さんの手伝いで今日は朝から大忙しだから、お土産を買って帰る事になっている。


ユーネちゃんが遅れるのは…まぁ…わかる。

だが、常識人風のリーヴル君が遅れるのは何かあったのではと思ってしまう。

顎に手を当てふと顔を上げたタイミングで大通りの方へ衛兵さんが走っていくのが目に入ると、合わせたように「どうせ新しい神父さんなんて、その辺の胡散臭そうなオッサンでしょ!」とか言っている誰かさんの声をした幻聴が耳に滑り込んでくる。


ミトラの足は自然に衛兵たちの後を追って動き出す。

来ないのはきっと二人で楽しいことをしているに違いないと確信したからだ。


「私だけ仲間外れになんてズルい!」




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