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第十二話 ⑨ 世界で一番の勲章だ!


「それは…」

ユーネとしてはソロリズに影響されて、自分もルウとお父さんに何かプレゼントしたいと思ったとは、あまり言いたくない。


「どうした?言えないような事なのか?」

「う~ん。言ってもいいんだけどぉ。人の真似とか思われるのってなんかイヤだなぁって」

「ああ、なるほど。嬢ちゃんも両親にプレゼントをしたわけだな」


「いや、まぁ、その、そうなんだけど。でもこう言うのって、自分の気持ちから出てくるものでしょ?なのに、人の真似してからやるって偽物みたいでカッコ悪いというかさぁ。ホントにそう思ってるなら、なんで自分で気がつかなかったんだよって思うんだよね」

さっきまで、あんなに強気だったのに今は別人のようにモジモジする少女につい孫でも観るかのように、ビゼンの顔がほころぶ。


「…嬢ちゃんは、とても真っすぐなんだな」

ポンとユーネの頭に大きな手が置かれる。

「いいんだよ。最初はそれで。それは「気付き」っていってな、普段見えていなかった自分の心に気が付く瞬間なんだよ。そんでそこからみんな学んでいくんだ。オレなんてこの年になっても他の鍛冶師の仕事を見てハッとする事ばっかりだぞ。ハハハハ!」


「う~そうなのかな~」

ユーネはなおも納得のいかない顔で、腕を組み首をかしげる。

「まぁすぐにわからなくても、今日みたいな小さな事を繰り返していく中で、いつの間にかわかるもんさ。だから、真似とかそんな事気にせずに、自分の気持ちに胸をはんな!」

「わかった!そうする!…という事でチョコちょうだい!」

「ダメだ!だいたい、嬢ちゃんの親はそんなにチョコやお酒が好きなのか?」


「まぁ二人とも甘い物もお酒も好きだよ。一番好きかとどうかはわからないけど」

「じゃあ、なおさらダメだ。こういうのは、高価なものを送れば良いって訳じゃないからな」

「え~じゃあ、何がいいの?」

「ん~そうだな~。こんなのは人それぞれだからなぁ。そうだ!親御さんはどんな時に一番笑っているか思い出すのがいいんじゃないか?」


「…一番笑っているとき」



     ◇



両手を後に隠して何かモジモジしているユーネがちょっと照れた感じで口を開く。


「え~とね。最初は、お父さんから!はい、こっち向いて!」

アキラとしては突然の事になんのことか分からないが、取り敢えず言われるままに食事を中断して、椅子の上で向き直る。

「ユーネ?これから何するんだ?」

「ちょっとお父さん!今からユーネが喋るの!黙ってて!」

怒られたアキラがシュンとなって押し黙る。


「はい!ではこれからじゅしょーしきをします!」

後でに持っていた紙を前に出し読み出す。

「お父さんはいつも、ユーネのお薬や、街の皆の病気を治してあげて偉いです。そしてドラゴンまで倒してきてとっても偉かったで賞を上げます!」

言い終わると折り紙で折ったメダルを、アキラの首に掛けるように掲げる。


アキラはもう涙でまともに見えないメダルに向け頭を下げる。

首に掛る微かな重みに耐えきれず、床に泣き崩れてしまう。

それを見下ろす二人からするとアキラの奇行はいつもの事なので、特に気にはならない。


「じゃあ、次はルウね」

「あら、私にもあるの?」

もちろん!と再び目の前に紙を突き出し読み上げる。

「ルウにはいつも一緒に居てくれてありがとう。おかげでユーネは寂しくないで賞を上げます!」

もう一つ持っていた小さめの折り紙のメダルをルウの首にかけてあげる。


ルウは頭を少し下げながら、鼻の奥につーんとした痛みが走る。

アキラの程ではないが、涙が溢れそうになる。

だが、見られたくはないのでユーネの顔に向かって飛びつくことにする。


「ちょ、ちょっと、ルウ?」

ユーネは二人とも一番の笑顔になると思っていたのに、何か湿っぽくなってしまった事に失敗したのかと、少し焦ってしまう。

アキラが狼狽えるユーネに気が付き、ルウを自分の方へと抱きかかえる。

「ごめんごめん、つい嬉しくて泣いちゃったよ。ほら、ユーネも知ってるだろ?泣いちゃうのは悲しいときばっかりじゃないって」


そう言われて、そうだったと納得して頷く。

いつも大事な事を教えてくれる大好きなお父さん。

同時にフィーピーちゃんとお父さんモグラを見てて不思議な気持ちだったけど、それが今わかった。


「お父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さん!!」

「な、なんだ?」

精一杯手を伸ばしバンザイのポーズをとるユーネ。


「ん!」

「え?何?」

「んん!」

「あー。だっこだな。わかった、わかった。もう甘えん坊さんだなぁ」

ルウを片手に抱え直すと、もう片方の腕でユーネを抱えあげる。

アキラの目線まで上がると、嬉しそうに今日あった事を口にする。


「あのね、今日ね!モグラさんと友達になったんだよ!」

アキラはそうかそうかと自分の胸に顔を埋めながら嬉しそうに話すユーネとルウをギュッと力強く抱きしめる。

人生の中で最高の賞を戴けた。という感謝を二人に伝えるために。



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