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第十二話 ⑦ おかえり!


「ユーネ!あいつ自爆するつもりよ!」

「こんな所で爆発なんてさせない!来い!銀盤上の預言者(オブセストラバー)!!」


ついに命すらも保持できないのかデザートドラゴンの体がひび割れ、隙間から光が溢れ出してくる。

そのあまりの熱量に、空気を揺らめかせ、大地はマグマのように赤銅色へと変わる。


「…これで…我の、勝ちだ…フッハハハハ!!」

「勝ちぃ?勝負ってのはなぁ!靴下の先まで足を入れるまでわかんねぇんだぞって!中に何か入っていたら、すっげー痛いんだからな!」


揺れる大地の上に片膝を落とし、銀盤上の預言者(オブセストラバー)をがっしりと掴むとデザートドラゴンに向け狙いを定める。

「その魂、世界の終わりまで貫いてやんよ!いっけぇぇワールドエンドぉ!オオバァァ!ショッォォォ!」


七つの黒い光が一つに纏まり一本の大きな光になり、歪んだ空間ごと赤く溶けるドラゴンを呑み込んでいく。


「グギギギッ!」

自身の死を対価にした限界を超える魔力でもってなんとか耐えているようだが、光はくの字に曲がりドラゴンごと天井を突き抜けていく。

そのまま地表へと出ると、空高く舞い上がり雲を横目に更に高度を上げ、星の海へと達したところで、デザートドラゴンが限界を迎える。


「フフ…そうか…命を賭しても歯牙にもかからないか…流石は神が作りたもうたモノよ」


街の遥か上空で、とても大きく綺麗な赤い花火が上がり荒廃した街の人の心を少しだけ軽くしてくれる。


「らっくちゃくだ!」一欠 

穴から微かに見えた爆発に満足気に胸をそらし、腰に手をやる。

「さてと、変な魔力も消えたことだし、帰りましょうか」

「ちょっと待って。フィーピーちゃんたちの無事を確認しなきゃ!」

「フィーピーちゃん?」


二人に戻って、モグラさん達の事をルウに説明すると、おじさんのモグラが走っていった方へと歩きだす。

ユーネの背丈ほどの穴が開いていたのでそこに入り十分ほど進むと、小さな横穴からコチラを覗いているモグラたちを見つける。

一人抱えて、しかもあの短い時間でこんなに長い穴を掘ったのかと思うと、本当にドラゴンの眷属なのだと変な所で納得させられてしまった。


「フィーピーちゃん!大丈夫だった!?」

「うん!お姉ちゃんは?」

「全然!このくぁわいいユーネちゃんの美貌にかかればドラゴンなんてワンパンよ!」

「さっすがぁ!ユーネ姉ちゃんありがとう!」

「オレからも、礼を言わせてくれ。本当に君のおかげで娘も仲間達も助かる事ができた。ありがとう!」


親子で頭を下げられる。

なんかむずがゆくて視線をルウを移すと、悪戯ぽっく笑っている。

「ま、まぁいいってことよ!ぬははは!」

取り敢えず笑ってごまかしておくことにする。


それから、水が引くのと合わせて他のモグラたちも恐る恐る戻って来る。

ユーネの姿を見つけると、皆駆け寄って来て感謝の言葉と共に揉みくちゃにされてしまう。


集落のヒーローになったユーネは、大人達が瓦礫の撤去だったりと忙しい中で、他の子供達に折り紙を配り、一緒に遊び始めるとあっという間に夕暮れ時となっていた。

なんで夕暮れか分かるかと言うと、お腹が減ってきたからだ。


フィーピーちゃん達が晩御飯をご馳走してくれると言ってくれたが、もしかしたらお父さんが帰ってくるかもしれないという事で、お断りさせて貰った。

帰ってきて誰もいなかったら、きっと泣いちゃうからね。


そんなこんなで盛大にお見送りされながら、水が流れてきた穴をルウを肩に乗せて駆け登っていき、空が見えてきた所で一気に加速して橙色を映す芝生へと降り立つ。


「たっだいま~!」

「はい、おかえりなさい。ゆっくりしたい所だけど、シャワーを浴びてすぐ晩御飯の準備をしなきゃね」

「お父さんの分どうする?」

「作っておきましょ。なんか今日には帰ってきそうな予感がするわ」

とは言っても、ユーネが作るわけだから大したものは出来ないので、パスタを茹でて、オイルに適当に刻んだスパイスやハーブをぶっこんで、ゆで上がったパスタを投入しただけの簡単ペペロンチーノのだ。

ついでに半分に切った茹でた卵やウインナーを添えてあげると見た目も一気に華やかになって大満足だ。


お風呂から上がり、テキパキとエプロンを身に着け、手際よく作っていくユーネの姿は不思議な寂しさを覚える。

いつも何でも知っているような雰囲気のルウだが、この時は自身の気持ちを上手く理解できずに、ボソリと独り言が漏れる。


「最近本当に上手くなったわ。もう見て無くても一人で出来るかもね」

「でっしょ!お父さんが帰ってきたら、教えてあげなきゃ!」

そんな小さな声も聞き逃さずに、胸を張るユーネの手が止まる。


「ふふ、そうね。じゃあ、お皿に分けてアキラの分は冷蔵庫に入れておいて。もし帰ってこなかったら、明日朝から食べればいいから」

ユーネがわかったと元気に返事をして三つに分けていると、突然ドアが吹き飛んだように開き、その勢いでドアベルが千切れ部屋の奥の柱へと突き刺さる。


「ただいまぁ~!!カッコいいお父さんのお帰りですよ~!」

ボロボロの服とは対照的にとても明るく元気なアキラが飛び込んできたのだ。



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