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第十二話 ⑥ 自身のプライドだ!



それは先日街を貫いたブレスとは比較にならないほど細く小さなものだが、人を一人殺すには十分すぎる威力を持っている。

更には連続して放つことが可能らしく、針の様な細かなブレスが次々と襲いかかってくる。


「危ないおじちゃん!」

全く反応できていない父モグラに、ユーネが手加減も何も無い体当たりをぶちかます。

結構マジな当りだが、死ぬよりましだと判断した結果だ。

しかし、そのせいで自身がバランスを崩してしまい、ブレスがユーネの頬に赤いスジを掘っていく。


「おじちゃん!フィーピーちゃんをお願い!」

横殴りの雨のようなブレスの隙間を抜いて、フィーピーちゃんをおじさんに向けて放る。

父さんモグラは慌てて立ち上がりながらも、娘を受け取ると一瞬悩み頷くと必ず戻ってくるから!と叫びながら背中をむけて走しっていく。


ユーネの方は無事にフィーピーちゃんを逃がせはしたものの、ここでも一手増えてしまったことで遂にブレスの直撃を許してしまう。

一つ舌打ちをする事で痛みを無視し、後に下がりながら止まらないブレスを拳で叩き落としていく。

そんな中、背中に何かが当たる感触があり、壁まで追い詰められたと理解する。


「どうした?さっきまでの余裕はどこにいった?」

「ここから逆転した方がカッコいいかなって思ってたの!」

「クク。その減らず口、これをくらっても叩いていられるか!?」

更に増えるブレスの雨の中、ドラゴンの口の中に大きな魔力が溜まりユーネに向け放たれる。

「死ねぇぇい!!!!」

怒声と共に光と轟音と衝撃の嵐が吹き荒れ、水をも蒸発させて辺りを白く染めていく。


数秒後、光が収まりチョロチョロと水の流れる音以外消え去った空間でドラゴンが口を開く。


「…やっと死んだか。速く逃げた土竜を追わなければ…」

体の核も奪われ、水を吸って思い通りに再生しない重い体に苛立ちを感じながら、フィーピーたちが立ち去った方へと向き直る。


「おい。どこ行くんだよ」

千切れた尻尾と背中越しに聞こえる声に、思わず空耳だと逃避しそうになる。

戦闘で高ぶった心が、流れる水音を人の声にして拾ってしまったのだと。


「あ~もしかしてビビッてんのぉ?」

空耳ではない。人間ごときが真正面からのブレスを受けて生きていたのだ。

しかも、減らず口を叩けるほどの状態で。

ないはずの体温が数度下がったような不思議な感情が心を占め、手足に過剰に力が入り、上手く振り向けない。


それでもとドラゴン種のプライドを支えに、無理矢理体を捻る。

そこで目に入ったのは先程の小さな子供ではなく、深い青の騎士が立っている姿だった。


「…だれだ貴様は?先ほどのガキは何処へやった?」

「そっか、昨日会ったけど自己紹介はしてなかったもんね!いいよ!教えてあげる!世界をその手にするために、ニチヤイッショウケンメイ頑張っている、【秘密結社ユーネちゃんはいつもくぁわいい会】かいちょーのユーエル様だ!」

いつもカッコいいポーズ(自称)を決めて満足な声に、違う謎の声が即座に突っ込みを入れる。


「前から思ってたけど、それ語呂も悪いし長過ぎじゃない?」

「え~そうかな~?だってミトラちゃん達もなんにも言わないんだけどな~。まぁいいやじゃあ今度また新しいの考えよっと!」

完全に目の前の敵を軽んじる態度に業を煮やしたのか、ドラゴンの口から先ほどと同程度の太いブレスが飛んでくる。

ユーエルがそれに視線を送ると体の周囲を舞っている蝶から赤い光が放たれ、ブレスを貫きかき消してしまう。


「ほらぁルウが来るのが遅いから、砂のドラゴンも巻きでって言ってんじゃん」

「何言ってるのよ。勝手にいなくなったと思えば、地面の下から変な魔力が溢れ出てくるし、庭に出てみれば怪しい穴に水と一緒に吸い込まれてビショビショになるし、コッチも大変だったのよ!あ~早く帰ってシャワー浴びなきゃ風邪ひいちゃうわ!」


なおも続く舐めた会話についにデザートドラゴンの堪忍袋の緒が切れる。

しかし、どれだけ怒りの炎に心を焦がしていても、何百年も生きてきた老練さが目の前の不思議な存在を冷静に分析しようとする。

いとも簡単に渾身のブレスをかき消された事といい、強大な化け物と向かい合ってるかのような異様な存在感といい。認めたくはないが、目の前のコイツは我よりも確実に強い。本来の体と魔力があったとしても、きっと勝てはしないだろう。

なぜなら、アレはきっと遣わされたものだから…。


そもそも、なんでそんなモノがここにいるのだ…いや、それは我にも言えるのか。

我は何故ここにいる?

我は本当に生きているのか?

だとしても意識だけで存在出来る話なんてこの長い生でも聞いた事がない。

今の我は…なんなのだ?

…いや、思考がブレているな。何であろうと今考えるべきことは、目の前のコイツが何者であろうと勝利を掴みとる。それだけだ!

なぜなら、我は砂漠の王たるデザートドラゴンなのだから!


「もう我の復活など小さなことはどうでもよい。この命と引き換えにお前ら、いやこの地域の風も水も生き物も全てを砂へと還えしてくれようぞ」

デザートドラゴンは急速に周囲の魔力を集めて始める。

その量はあまりに膨大過ぎて自分の体を構築している砂ですら、赤熱化しながらテラテラ輝き地面へ垂れていく。




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