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第十二話 ➂ お前は誰だ!



三人で畦のような土の道を進みながら、不思議そうに集落を見渡すユーネにフィーピーが教えてくれる。

「人間のお姉ちゃんには、葉っぱの家は珍しいでしょ?」

「うん。緑が水でキラキラしてて凄い綺麗だね!」

周りには大きな楕円の葉っぱを何枚も重ねて、上で結んだだけの三角の建物が立ち並んでいる。なんか庭で良く見かける葉っぱで、風で飛んでいきそうと思ったが、地面の中だから関係ないかと思い直す。


「昔は家なんてなかったらしいんだけど、いつからか朝になると水が勢いよく流れてくる事があるから、水を弾く葉っぱで家を作ったのが始まりなんだって」

「へぇ雨なんて降るんだ~!」

「今は大人の人達で穴を塞いで、他の所に流れていくようにしてるからたま~にね」

不思議な事があるもんだなと思いながらも、家も簡単な造りだし、地面の中に降る雨だからそんな大したことはないのかもしれない。


そんなこんなで集落の端までくると、フィーピーがここが私の家だよと教えてくれる。

中は意外と広く、三人で暮らすには充分なほどだ。なんとキッチンまで完備されていて、すぐに母さんモグラが約束のレモネードを作ってくれた。

とっても美味しかったから、帰ったらお父さんに作って貰おう!

それから、折り紙の折り方を教えてくれと言われるので、折り紙で遊びながら父さんモグラを待つ事にした。


「でね、これがツル!ほら頭に何もないでしょ?だから、ツルって名前なんだよ」

「へ~!お姉ちゃん物知りなんだね!凄ぉい!」

レモネードを飲みながら二人で折り紙を折っていると、父さんモグラが帰ってきて再び人間がいる事に驚くが、フィーピーの無事な姿が目に入ると大袈裟なほどに泣きながら喜び始める。

ユーネはその様子にどこのお父さんも同じ様なものだなと、アキラの顔が浮かんでちょっと可笑しくなってしまう。


泣き喚く父さんモグラが、急に何か思いだしたように真面目な顔をして母さんモグラを振り返る。

「そうだ。魔物の被害が出る前に、一時的にでもここから引っ越そうと思うんだが」

「え!?そんな急に…何処か行く当てがあるの?」

いくら魔物が出たからといって、いきなり引っ越しなんて言われても困ってしまう。

食糧に衣類、必要なものは言い出せばキリがない。しかし、全部持っていけるわけでもない。

それに、まだ幼い娘がいるのだ。決して魔物を甘くみているわけではないが、つい困った顔を浮かべてしまう。


「すまない。ただアレを直接目にしたオレの感想を言わせて貰うと、アレはモグラを狙っていた。必ず近い内にここにも来る」

「…わかったわ。あなたがそこまで言うなら、きっとそうなのね。じゃあ急いで準備しましょ!」


「おいおい、一体どこに行こうというのだ?」

突如フィーピーの口から低く聞き覚えのない声が漏れてくる。





「我は…ワレは…ま…だ」

不思議と痛みはない。しかし、首が千切れあり得ない方向へと曲がり砂の上に落ちる。

視界がぼやけていく。音も遠くなってよく聞こえない。


ああ、意識が再び闇に沈んでいく。

何故だ?どうしてこんなことになった?

どこからおかしくなった?

全てがわからぬ。そして、そんな疑問もまとめて沈んでいく。


終わるのか?


否。否否否!

我は創造神より最強たれと作られた種ぞ!誰とも知れぬものにいいようにされ、人間ごときに地に伏せさせられ、このまま終わってよいものか!

それは、神と同族に対する裏切り以外にほかならぬ。


「我は…我はまだ…死ねぬ。こんな所で!まだ!我は生物の頂点に位置するものだ!!」


決意と共に精神がなんとも言えぬ浮遊感に包まれる。

気が付くと視界には、眷属の群れが映っていた。




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