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第十二話 ➁ 新しい友達


「え、えーと、あなたは誰?ユーネはユーネだよ」

「わ、わたしはフィーピー…」

「フィーピーね!よろしく!それで、フィーピーは今泣いてなかった?なんかあった?」

「う、うん。…お父さん、いなくなっちゃったの」

きっととても心細かったのだろう、初対面で相手が人間にもかかわらず素直に答えてくれる。


「何処でいなくなったの?」

「分かんない…」

考え込むユーネにフィーピーは現状を思い出して再び泣き始めてしまった。


「ああっ!待って!待って!」

泣き出されて困ってしまったユーネは慌てて、スカートのポケットから大事にしまわれた折り紙の束を取り出すと、キョトンしたフィーピーの前で、折り紙を折っていく。


「ちょっと見てて!ここをこうやってこうすると。ほら!お花ができるんだよ!かわいくない?」

はいっとピンク色のチューリップを手渡すと、モグラの子からうわぁ~と感嘆の声がもれる。


「うん。かわいい!!!」

「それじゃ、それあげる!」

「えぇ!いいの!?」

フィーピーは宝物を貰えるかのようなキラキラした目で見上げてくる。


「もちろん!ユーネはお姉ちゃんだからね!あとで折り方も教えてあげるね」

「ありがとう!お姉ちゃん!」

くぅ~と嬉しさを噛みしめながらピースを突き出すユーネに合わせて、フィーピーも真似してピースサインをする。

ニッシシシと笑い合う二人のどちらからともなくお腹がなる。

これは緊張が解けた証拠なのだろう。いや、友達になれたと言ったほうが正しいかもしれない。


「もー仕方ないんだから!これもあげる!特別だからね!」

と、反対側のポッケからきな粉棒を取り出す。

そこには自分のお腹もなったくせに、シレっと他人のせいにしつつ恩を着せようとクソムーブをかますユーネに、コロッと騙されて尊敬の目を向けるフィーピーの図が出来上がった。


ワイワイと楽しくお喋りしながらきな粉棒を食べると、すっかり元気になった二人は話を戻す。

「それで、なんでお父さんとはぐれちゃったの?」

「えーと、村の皆で料理に使う木の根を集めに行ったら化け物に襲われたの」

モグラが料理をする事に驚き声あげかけたが、スルーすることにした。大体スカートを履いて言葉が通じている時点で今更だからだ。


「化け物?何かの魔物の事?」

「う~ん。あんまり憶えていないんだけど、いきなり大きな影が襲い掛かってきて…それで、皆パニックなって一斉に逃げてたらいつの間にかはぐれちゃって」

俯くフィーピーに、ユーネのお姉さんぶりたい心が燃え上がる。

一緒にきな粉棒も食べたし、ここはお姉ちゃんとして妹の力になってあげなきゃいけない!!

「それじゃあ、お姉ちゃんが一緒に探してあげる!魔物が来てぶっ飛ばしてやるから、安心して!」


自信満々に言い放つユーネだが、フィーピーからすると自分達の何倍もあったモンスターに対して同じ子供がぶっ飛ばせるとはとても思わない。けど、その自信にあふれる笑顔をみていると不思議と何とかなりそうな気がしてくる。

うんっ!と元気よく答えてユーネの手を握って洞窟の奥へと進んで行く。



     ◇



まずはお父さんとはぐれたという場所に行ってみようとなり、手を引かれながら上下左右曲がりくねった道を楽しみながら進んで行く。

壁の様な縦穴をぬけた所で、大きな爪跡が幾つも残っている場所が現れる。


「ここ?」

時間は経っているのだろうが、辺りには騒ぎがあった後の独特の空気が漂っている。

「うん…いきなりとっても大きな影が現れたと思ったら、覆いかぶさってきて。それから、皆パニックなって一生懸命逃げて、気が付いたら私一人になってたの…」


「大丈夫!きっとお父さんは無事だから、ユーネが会わせてあげるよ!」

壁や地面などを見ても血痕があるわけではないので、フィーピーのお父さんは無事だと思われる。その事を伝え励ますと、笑顔が戻ってくる。

「じゃあ、お父さんが逃げるとしたら、どこに行くと思う?」

「う~ん、私を探しにここに戻ってきて、居なかったら家に一回戻るかな」

「よし!じゃあ次はお家に行ってみよう!」


案内されているはずのユーネがお姉さん風を吹かせながら暫く歩いていると、大きな葉っぱで作られた建物が立ち並んでいる開けた場所にでる。

どうやら、ここがモグラさんたちの集落のようだ。

辺りを見回しているとユーネよりも少し大きいモグラがコチラに気が付き駆け寄ってくる。


「フィーピー!!」

「お母さん!」名前を呼ばれたフィーピーも、誰の声か分かったようですぐに駆け出していく。

抱き合い喜ぶ二人に近寄ると、気が付いていなかったのか母モグラにひどく驚かれた。


「え?人間!?」

「大丈夫!お姉ちゃんは、泣いていた私を助けてくれたの!」

抱きしめる腕から抜け出し、庇うように小さな体を両手いっぱい広げてユーネの前に立ちふさがる。


「そ、そう…ウチの子が世話になったわね。ありがとう。先に帰って来たお父さん達から魔物が出たって聞いたから無事に帰って来てくれて本当に安心したわ」

「お父さんは?」

「一度帰ってきたけど、すぐにあなたを探しに行ったわ。ほら、それより二人とも疲れてるでしょ。ハチミツたっぷりのレモネード作ってあげるから、家でゆっくり休みなさい。そうしていればお父さんもそのうち帰ってくるわ」


フィーピーが遠慮がちにこちら見上げてくるが、既にユーネの口の中に広がっている甘酸っぱさは、断るとか遠慮するとかいう選択肢を溶かしきっており、そのまま誘われがままにお家にお邪魔する事になった。




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