史上最強晴れ男、雪山に遭難す
小説家になろうラジオ大賞5 参加作品。
テーマは「雪山」です。
超絶晴れ男である俺、松竹 梅造は、子どもの時から周りから重宝がられていた。
昔から俺は自他認める晴れ男。行く先々では必ず晴れて温暖になるのだ。運動会、遠足から修学旅行。記念式典や競技大会、等々……スタッフとして参加することで、必ず晴天にしてきたイベントには必要不可欠な人間だった。
以前、台風ですら俺を避けて通った時にはさすがに驚いた。
まぁ、逆に水不足や雨が必要な時には追い出されたのだが……
そんな俺が最近はまっている趣味は登山。
どんな悪天候でも俺が登れば晴れるのだ。
登山家からは神様のように崇められた。
それで調子にのった俺は、真冬に一人で雪山に登頂する計画を立てた。
周りからはさすがに止められた。
素人同然のお前が雪山?
無理だ!死ににいくもんだ!
晴れたとしても、険しい山肌をどうやって乗り越えるんだ!
だが俺は登った。
その日ももちろん晴れていた。
俺の人生楽勝だな、と正直思った。
だが冬の雪山が晴れて気温が上がるということは何を意味するか?
な、雪崩だー!!
そう、解けだした雪によって雪崩が発生。
俺はなんとか洞窟の中に逃げ込んで、命だけは助かった。
しかし……
洞窟の中では晴れ男も意味がない。
穴の入り口は雪で塞がれ、俺一人の力では脱出出来そうもなかった。
もはやこれまでか。
水も食料もつきかけた。
死を覚悟し、静かに目を閉じた……
……その時だった。
顔に冷たい風があたる?
俺はうっすらと目を開けると、
そこには美しい女性がいた!?
救助か!?と思い飛び起きるが、様子が違う。
透き通るような青白い肌の女性は、白い着物を身に付け、長い黒髪を垂らし、驚いた表情で俺を見る。
「あなた、不思議な人ね。私の息を受けても凍らないなんて」
「お前は誰だ?」
「いわゆる私は雪女よ」
「まさか!」
「助けてあげる」
「本当か?」
「そのかわり手を……
繋いでもいい?」
「は?」
「私が触ると皆、凍傷になるのよ」
「そうなのか?」
雪女の手が触れると、アイスを素手で触ったような感覚。
「ああ、ふれられる!
温かい!
これなら次は……」
「次?」
「その……接吻を……」
「キス!?」
こうして俺は山に残って彼女と暮らすことに。
史上最強の晴れ男の俺と雪女。
普段一緒でラブラブな時は、山の天気は曇りに。
彼女が出掛けている時は山は晴れ、俺が山を降り街に向かうと雨や雪に。
そして、時々喧嘩したりすると嵐や吹雪に……
山の天気は変わりやすい。
それは俺たち2人が影響しているのかもしれない。