零課外伝 零伝 ~合~
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
大学に進学した私は、幼馴染だった國崎敏正と再会した。私たちは、“異災”研究の第一人者である霊木愚知教授の元で研究を行った。
私は“千里眼”で、敏正の増幅している負の感情に気づいていたが、私は目を背けていた。
私が大学へ進学した一九五八年から、一九六〇年。この年にある噂が私の耳へ流れた。禰宜が革命軍として暗躍していると。この禰宜は勿論、私の最愛の人である夏芽の命を奪った男たちの一人である。
私は正直、奴らのことを忘れかけていた。というか忙し過ぎて記憶をそちらに向けている暇がなかった。
彼らは『デストロイナル』と自称し、“異災”を解放すべく活動している。エターナル(永遠)をデストロイ(破壊)するからデストロイナルという安直な英語の造語であることは容易に想像できた。彼らの活動が意外にも影響があるらしく、かなりの人数の活動者がいるらしい。と教授は言っていた。
そして、翌年の七月。彼らは人権運動と称して、政府との全面戦争が起きた。三日三晩にも及んだこの戦いは、数的有利により、警察と連携した政府側が勝利した。そこで功績をあげた警官何名かが、政府から表彰された。彼らが後にいう“零課”だったことは、当時の私にとって知る由もなかった。
更にその翌年、一連の出来事から民衆の“異災”に対する認識が変わり、それを受けた政府が異例の憲法第零条を改訂した。本来、“異災”を持つ者と持たぬ者を分けていたが、今回の改訂でどちらも同じとした。そもそも、当時少数派だった“異災”を持つ人たちがこの数年で急激に増えたことも要因の一つであった。“異災”の名称も変わり、神様よりいただいた賜物という意味である“恩寵”へと変化した。
私はデストロイナルもとい、禰宜自体にいい印象を持っていなかったので、心酔していなかったが、私の周りでは教授に敏正が彼らの思想に心酔することになった。
その後、敏正は何を思ったのか、議員になると言い出した。どうやら彼は権力が欲しいと言っていた。彼は有言実行の男だった。一九六七年、彼は本当に議員になったのだ。更にその翌年、教授は変なことを研究しだした。彼は本来、恩寵の性質を調べていたのだが、恩寵の複製や付与にまで手を付けようとしていた。当時(現在も一応タブー)は“神の領域”と呼ばれていて、禁忌に近いものだった。実験にはどうしても人を使わないといけないため、非人道的行為であったり、下手したら人が死んだりとあまりにも危険だった。そんな中、教授は恩寵の複製に成功し、論文に纏め上げた。
一九七〇年、教授は論文を発表したが、多くの人間は批判し、誰も効く耳を持たなかった。更にその後、教授は暗殺された。遺体はなかった。そして、教授の論文をなくなっていた。この一連の事件は『神の誤ち』と一部の関係者から呼ばれるが、今も覚えている者は少ないだろう。
私も身の危険を感じ、十年近く引き籠った。
一九七九年、私が七十歳になったときだった。
私の元に嬰児が現れた。彼は私を教員に誘った。十年近く引き籠っていた私を覚えている人間は限られていたのは明白だった。私は毎年一年の担任であることを条件に嬰児の教員になることを誓った。
『夫丈高校』。名前の由来は、特にないらしい。強いて言えば、大丈夫、丈夫を逆にしただけらしい。こういう名付けか適当なところがとても嬰児らしかった。
嬰児は大学在学時に知り合った豪炎寺鬣と、卒業後に知り合った臥龍岡菊吾、鳴上疾士(後から炎司に聞いたが彼の息子が教員として頑張っているらしい)、操園・ケン・龍一の計六人で立ち上げた。
一九九七年までの間、私は沢山の生徒の面倒を見てきた。その中でも記憶に深く刻まれている生徒は七人。五十嵐衂漉と土木溶大、心田操太朗に神楽大輝、煉獄太陽、三上芯、真田真、まあ、堀田恵子くんもか。彼らはいずれこの日本を変えてくれる、そう思える期待を十分に背負える才能を感じた。
一九八九年に、出雲の方で人災者による大災害が起きた。どうやら五十嵐くんと同期の子が活躍したらしく、大変嬉しかった。
一九九七年、敏正が異例の内閣総理大臣へとなった。私は敏正に招待され、国会議事堂へ赴いた。そこで彼の復習計画を知り、私はそれを止めるべく『徒陰』を創設した。
最初に入ったのは、緋月陽一(旧姓:日照)だった。彼は恩寵のせいで忌み子として村で軟禁されていた。そんなところを私は三億四千万円を支払い、解放した。その次が緋月神夜(旧姓:月見)、堅魚、遊華が私の志に賛同し、かつての同級生であった忍も加わり、『徒陰』は本格的に始動したのだった。私は『デストロイナル』に倣い、敏正を止めるべく政府に挑んだ。その年は大地震も重なり、政府に敗けることとなった。私は教え子だった心田によって助けられ、捕まることはなかった。
我々はもっと力を付けなければならないようだった。しかし、正直私の物語はこれ以上ないだろう。後は構成に語り継がれよう。
政宗は日記を閉じると、目頭を押さえた。人生を少しだけ書くつもりだったが、長くなってしまった。
「オヤジ」
部屋に炎司が入ってきた。
「どうした?炎司」
「そろそろ決行の時刻です。柱全員準備完了しています」
炎司がそう言うと、政宗は一瞥すると立ち上がったのだった。