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零課外伝 零伝 ~惨~

 このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。

根賀専用のステージには、電気網や水の張った床が用意されている。会場は未だに沈黙である。

 「おい司会、盛り上げろ」

 根賀がそう言うと、司会は恐る恐るマイクを手に取った。

 「さ、さあ、今回は特別な試合です。今大会の主催者である根賀さんと相対するのは、本大会の新優勝者である鬼丸選手……。い、一体どんな試合が見られるんでしょうか。それでは……、スタートォォォ」

 銅鑼が鳴ると、根賀は懐から謎の注射器を取り出した。

 「これを使えるいい機会だ。存分に楽しませて貰うぞ?」

 根賀がそう呟くと、首筋にその注射器を刺した。液体が注入されると、根賀の体が蠢き始めた。根賀が雄叫びを上げる。根賀の両手から激しい(いかずち)が発生している。その雷は根賀を包んだ。

 「まさか……!」

 私は根賀を見ると、液状化している。

 「“異災”の二つ所持……?」

 私がそう呟くと、私は吹き飛ばされた。油断した訳ではない。先ほどよりも格段に速くなっていた。私が電気網まで吹き飛ばされると、感電した。私は床に叩きつけられるように倒れた。

 「よっわいなァ。手応えも無いわ」

 根賀は私に歩み寄ってくる。床も濡れているので、根賀が歩くたびに微かに電流が流れる。私は手の力だけで起き上がると、“宙に浮く力”で浮いた。

 「お前も契約者と契約を交わしたのか?」

 根賀はそう言うが、私には何のことだか分からなかった。私の無言を見て根賀は話を続けた。

 「どうやら俺の見当違いの様だな。……クスリの効果もそろそろ切れそうだから。決着を着けようか」

 根賀は更に激しく電気を纏うと、巨大化した。既に観客は退散している。辺り一面が電気が弾ける音のみが聞こえている。

 私の“千里眼”は触れた相手の数秒後の未来を視ることができる。私は電気に触れたことがあったので、根賀の未来を視ることができる。“千里眼”を使えば、根賀の攻撃など余裕で避けられるはずだった。

 「避けて良いのか?」

 根賀がそう言うと、不気味に微笑んだ。私は背後に気配を感じ取った。赤黒たちの気配だった。私は“宙に浮く力”を解除し、深く腰を落とした。

 「避けろ!政!!」

 嬰児の声が微かに聞こえる。私は右手を前に差し出した。途轍もない轟雷が私を襲った。私の眼前に黒焦げの右腕が転がっていた。私は跪いた。耳鳴りがする。根賀の声が聞こえるはずだが、聞き取れない。そのとき、一気に記憶が駆け巡った。これはまさしく、走馬灯だった。


 私の耳に、父の声が聞こえる。

 「良いか政宗、我々大道寺家は代々数多の伝説を残してきている。始祖ともいえる鎌倉時代の大道寺の人間は、素手で火砕流を止めた逸話を持っている。代々“大道寺影武術”は水のように流れる動きを基本としているが、時には猛き炎のように爆発的な力も持ち合わせている。政宗も私に倣わなくていいからな?」

 私はその言葉と同時に瞼を開けた。私の気配に気づいたのか背中を見せていた根賀は振り返った。

 「はっ!死んだと思ったぜ。隻腕でもまだやるか?何度でも付き合うぜ!?」

 根賀は余裕そうな表情を見せている。

 「大丈夫だ。後一回で全て終わる」

 私は左手を構えた。私の左手に赤黒い稲妻が纏った。根賀は先ほどの轟雷を放った。私が拳を振り上げると、その轟雷は天高く駆け上がった。

 「拳で電気を跳ね除けたのか?」

 根賀は何が起きたのか分からなかった。私は再び拳を構えた。拳に再び赤黒い稲妻が纏った。私の拳に触れた根賀は液状化していたのに関わらず、胴部に風穴を開けた。根賀は吹き飛び倒れ込んだ。同時に私も跪いた。アドレナリンが出ていたので、平気だったかもしれないが、今思えば片腕がなかった。しかし、私は倒れるわけにはいかなかった。

どうやら既に嬰児が赤黒たちを解放していた。赤黒が私の元へ駆け寄っている。そのときだった。乾いた破裂音が私の耳に鳴り響いた。私の視界に映っていたはずの赤黒が見えなくなった。いや、私の視界に赤黒い何かが広がった。今まで散々嗅いでいた鉄のような香りが濃く感じた。赤黒は既に床に倒れていたのだった。

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