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プロローグ

よろしくお願いします。

薄暗い部屋。

床は冷たい。


うっすら目を開けて、周りを見回す。


床が冷たく感じたのは、石畳だったからか。


目が薄暗闇になれてきたとき、一人の少女が同じ部屋にいることに気がついた。

冷たそうな石壁を触り、厚さを確認しているようだった。


なんというか、彼女は諦めてないのだなとおもう。

どんな状況であっても、彼女は諦めない。

その姿勢が美しいと思った。

見た目が麗しいだけではなく、彼女の魂が美しいと。


身体のあちこちが痛むが、身体を起こし、床に座る体制をとった。


こちらが動いたことに気づいたのか、少女が駆け寄ってきた。


「シルエーヌ様、ごめんなさい。私のせいで」

彼女はいたたまれないといった表情を浮かべて、頭の下げた。

「臣下に無闇に謝るもんじゃありませんよ、王女」

そんな彼女の翡翠の瞳を見つめて、言う。


ああ、僕の負けだな。


この美しい少女からはきっと逃れられない。

僕の心を掴んではなさいから。


でも、僕は貴族の中でも身分が低い公爵家の三男だ。

普通に考えて王家の後継者たる彼女とは釣り合いが取れない。


それに彼女に惹かれてるのは事実だけど、まだ彼女のことをよく知らない。

知らない事は知りたいと思う欲求。


こうやって、共に攫われたところをみると、世間では彼女のお気に入りとして、僕は認識されていることになる。


きっと彼女とのことがダメになれば、縁談なんて来やしないだろう。

それに彼女以上に心惹かれる人が出てくるのは難しいだろうとも思った。


それなら、普段は積極的に人と関わることはしないけど、1歩踏み込んでみようと思った。


身分の低い僕の生涯1度だけの恋なら許されるのではないかとも。


初めから諦めないといけない感情だから。


「・・・僕は王女のこと、何も知りません。きっと僕のことも深く知らないでしょう。だからこうしましょう。ここから生きて帰れたら、交換日記しませんか。お互いのことよく知ろうにも、僕は身分が低くすぎる。会う機会なんて早々ないでしょうから」


「・・・セリエーヌ様・・・」

翡翠の瞳が揺れているのがわかる。


こんなことに巻き込んでしまったのに、関わりを断つわけではなく、むしろ関わりたいとはっきり伝えたから。


「さあ、早くこんなところから出ましょうーーー先程壁を触っていらっしゃったのは、薄い箇所を探されていたからですね」

「あ!はい!ーーーあの、不躾なお願いを聞いてもらえないでしょうか」

「?」


改まった様子で、僕を見つめる。

「あの、サラと呼んではもらえないでしょうか」


「!」

突然の名前呼びで、僕の心は一気に早鐘を打つ。

僕には少しハードルが高いけど・・・。

ここを出るためには・・・。


「コホン、ではサラ様、壁の薄い箇所を教えてもらえませんか?僕の魔法で砕けるかやってみますので」

「はい!」


満面の笑みを浮かべて、彼女は返事をした・・・。




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